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第1話 origin
風にのって木々の葉が擦れる音が聞こえてくる。
耳に届く音と違って、肌の感覚はそれほど強く風を感じてはいない。
”少し警戒しすぎてるか...”
意識的に息を吐き出し、肩の力を抜く。
この辺りはそれほど気を張るレベルでもない。
無駄にがちがちになるも良くないなと考え、視線を上に向ける。
ふいな木漏れ日に目をしかめると、木々の音ではない大きな音が耳を叩いていた──。
この世界の人間は15才になる日に神から与えられたスキルを身につける。
物心つく頃から鍛錬も積んできた。知識も蓄えた。
吸収できることはなんだって吸収した。
15になるまでの経験がスキルに強く反映されると聞いたからだ。
両親は神童と称えた。領民は時期領主に期待を寄せた。
まさに順風満帆という言葉がふさわしかった。
あの日から2年。俺は今故郷ではない、とある国のとある街で探索者として生きている。
俺の名はシン=トウノ。男爵家に生まれ、後の世にいろんな意味で名を残すことになる。