戦友
英治と別れオハチスエを引き受ける京助。
京助の呼びかけに反応をみせるオハチスエだが…
英治と別れひたすら森の中を走り回る京助。
後ろからはドスンドスンと木々をなぎ倒しながらこちらを追いかけてくるオハチスエ。
「ハァハァ!っ…くそっ、あんなでかい武器持ってるのになんで着いてこれるんだよ!」
身体能力が上がっているとはいえもう何十分も全力で山道を走ってると流石に疲れてくる。
すると急に足音が止む。
「ハァハァ……なんだ?急に足音が止んだぞ」
立ち止まり木の陰に隠れる京助。
だが次の瞬間上からバキバキと何かが落ちてくる音がする。
バゴォォォォン!と京助の前方にオハチスエが落ちてきた。
「ヴゥゥゥゥ!」
唸り声を上げこちらを睨みつけるオハチスエ。
「なっ!まさかジャンプしてきたのか!?結構距離あったぞ!?」
こちらに歩みを寄せるオハチスエ。
「やるしかないのか!?」
バッとこちらに間合いを詰めると横に一閃、太刀を振りきるオハチスエ。
ブリッジして躱す京助。
躱した先の木々が爪楊枝のように切り倒されていた。
「あっぶ……!?」
躱した瞬間続けざま真上から太刀を振り下ろすオハチスエ。
横に飛び退きなんとか躱す京助。
「今回でかい武器持ってるせいか前回と違って動きが遅い……けどこの破壊力、一発でも貰ったらアウトだ!」
間合いを取る京助。
だがただ逃げてるだけじゃ埒があかないしいこのままじゃいずれやられてしまう。
駄目もとでオハチスエに話しかける京助。
「おい!オハチスエ!あんたほんとは悪い奴じゃないんだろ!?源之助さんがあんたのこといろいろ言ってたぞ!」
オハチスエに語りかける京助。
すると源之助の名前を出した途端動きが止まるオハチスエ。
「ゲ……ンノ……スケ…」
「!?そうだ!源之助さんからあんたのこといろいろ教えてもらったんだ!あんたは無闇に戦いをするような奴じゃない、戦友だったって!何か理由があるんじゃないのか!?」
すると源之助の名前を何回も連呼するオハチスエ。
「ゲ……ンノ……スケ、ゲン……ノ……スケ、ゲンノス……ケ」
段々と言葉を取り戻しているように見えるオハチスエ。
これもしかしたらなんとかなるんじゃないかと京助は語りかけ続ける。
「……そうだ、源之助さんだ!」
「ゲンノ……スケ、ゲン……ノスケ、ゲンッ……ヴゥ!」
だが急に苦しみだし頭を抑え膝をつき前かがみになるオハチスエ。
「どうしたんだ!?……ん?なんだあれ?」
前かがみになったオハチスエの頭の後ろ、うなじら辺に何やらモゾモゾと動く物体が。
オハチスエのうなじから頭にかけて触手のようなものが埋め込まれとおりまるで意識を持っているかのように動いている。
「まさかあれが何か関係しているのか?」
すると触手がピタッと止まりオハチスエの動きも止まる。
そして地面に置いた太刀を握りしめると前方の地面めがけて太刀を振るう。
地面が抉れこちらにつぶてが大量に飛んでくる。
「うぁ!?くっ、前が!?」
つぶてをガードしながら前方を見ると目の前にはすでに太刀を構えるオハチスエの姿が。
「まずい!」
太刀を振るオハチスエに対し刀タイプの武器で応戦する京助。
ガギィィィィン!
刃と刃がぶつかる音が響く。
武器で受ける京助だったが力負けし後ろへ吹き飛ぶ。
なんとか体制を立て直し倒れるのは逃れたが腕がピリピリする。
「っ…あぶねぇ、ほんと馬鹿力だな!くそっ、貴重な武器が…」
追撃してくるオハチスエ。
京助の頭上目がけ太刀を振り下ろす。
すぐさま刀タイプで防ぐ京助。
ドスゥゥゥン!!
「ぐ、ぎぎぎぎ!」
足が地面にめり込むほどの強力な一撃、そのまま地面に片膝をつき今にも押し負けそうな状況である。
すると刀から不穏な音が……
バチッ……バチッ……
「まさか……」
刀から火花と煙が上がり柄から出ている刃も不安定で今にも消えそうだ。
「おい、ちょっ……」
ブゥン………
嫌な予感が的中し刃が消え競り合っていたオハチスエの太刀が京助の頭目がけ振り落とされる。
バァァン!!
凄まじい音が響きやられたと思われた京助だったが何故かよろめき後退りしていくのはオハチスエの方だった。
腹に大きな穴をあけ血を吐きながら膝をつくオハチスエ。
京助の手には拳銃タイプの武器が握られており服の内側に複数の武器のストックが。
「間一髪……会社出る前に武器いっぱいパクっといてよかった~!、、、一心さん怒ってるだろうな…」
技術開発局の人にペコペコ頭を下げる一心。
「まともに喰らったな、でもこのくらいじゃすぐ再生するんだろ?」
オハチスエの傷を見ると確かにもう傷口の再生にかかっている。
「再生が間に合わないくらい攻撃を与えてくしかない!」
出し惜しみしている暇はない、すぐに拳銃タイプを取り出し狙いを定める。
「当たれ!」
バァン!
放たれた光弾がオハチスエに向かって飛んでいく。
だが当たる直前に太刀を盾にし光弾を防ぐオハチスエ。
「!!」
武器が壊れ新しい武器を取り出すがオハチスエは太刀を盾にし身を隠すようにしている。
「なんて頑丈な…これじゃ銃は使えない、かと言って近づくのも……そうだ!」
ヌンチャクタイプの武器を取り出す京助。
武器を起動すると拳銃タイプとまでは行かないが中近距離からの攻撃が可能だ。
「おりゃ!!」
太刀が届かない間合いから一心不乱に打ち込む京助。
ヌンチャクと言うよりも鞭に近い形状になっており通常よりも武器がでかくなっている分狙いが付けづらいが威力がありまた止まっている的は格好の餌食だ。
問題があるとすれば…
バチッ!
「くっ!やっぱりこいつもすぐ壊れちまう、すぐに次の武器に切り替えないと…」
だがオハチスエには確実に攻撃が響いているようで時々ガードが緩みその隙間から少しづつ攻撃を与えられている。
「よし、いいぞ!このまま…」
次の武器に切り替えようとした京助だがここでヌンチャクタイプのストックが切れてしまう。
「やばい!もう武器が!」
攻撃が緩んだ瞬間、オハチスエはガードをやめ太刀をこちらにぶん投げてきた。
慌ててよける京助だったが避けた方向にオハチスエが回り込んでいた。
「はやっ…」
思いっきり右の拳を左側面で受ける京助。
バゴォ!
ビキビキ…
「ぐっ……はっ!」
もろに喰らってしまった京助、ガードも出来ずそのまま吹き飛ばされる。
木を何本か薙ぎ倒しようやく地面に転がる京助。
「はっ……はっ……はっ…」
なんとか意識を保っている京助だが左側の腕や足が変な方に曲がっており息をするのもつらい…肋骨も折れているようだ。
「ヴォォォォ!!」
雄叫びを上げるオハチスエ。
投げた太刀を回収し京助の方に近づいていく。
必死に体を動かそうとするが力が入らない。
「だめだ……体が動かない……」
かろうじて動く右手で拳銃を取り出しオハチスエに撃ち込む。
だが防ごうともせずそのまま躱すオハチスエ。
「く、くそ……くるな…」
だがオハチスエは歩みを止めずこちらに向かってくる。
もうだめかと思った瞬間茂みの奥から何かが飛び出してきた。
「ワゥ!!」
2匹の狛犬がオハチスエめがけ飛びかかっていく!
「こ、これは…!」
「やれやれ、なんとか間に合ったかの」
茂みの奥から白髪を束ねる老人の姿が。
「源之助さん!」
こちらに歩みより京助に肩を貸す源之助。
「こっぴどくやられたのぅ、まぁあとは任せておけ」
だが京助は源之助が足止めしていた2体のCTのことを思い出す。
「あ、あの…CTは?」
「おぉ、あのCT共か。
ほれ」
ゴソゴソと懐から2つの水晶体を取り出す源之助。
CTの核だ!
「えっ!だっ…えっ?あれAランクじゃ…」
近くの岩陰に京助を避難させる源之助。
「わしを誰だと思っとるんじゃ、これでも現役の頃は本部で主力張っとったんじゃぞ!わしの相手するならSランク連れてこいっちゅう話じゃ」
呆気にとられる京助。
「キャン!」
犬の鳴き声と共にオハチスエの方を振り向く京助と源之助。
首を絞められ地面に叩きつけられる狛犬。
そのまま煙をあげ狛犬が消えていく。
「やはり狛犬では相手にならんか。どれ、久々に手合わせといこうかの、オハチ?」
狛犬……源之助が従える式神の一つ。
攻守共にバランスがよくBランクまでなら
問題なく相手が出来る。