未確認生物
今まで何の目的も目標もなくダラダラ生きてきた男
岡本京助30歳。
会社の帰り道化け物に遭遇、襲われそうになった所
謎の少女に助けてもらいクリプティッドという組織を知ることになる。
このまま普通の生活に戻るか未知の世界へ足を踏み入れるのか考える京助だが………
「やった…俺達生きてる…」
「生き残った人たちの手当ても忘れるな!だがこれでもうこの戦いも終わる」
「私たち生きて帰れるんだ…ありがとう…!」
涙を流しながら生きて帰れることを喜ぶ人たち、戦いが終わり安堵する人たち、仲間のもとへ向かう人たち…
こんな俺でも自分以外の人たちの役に立ち希望を与えられることが出来るなんて思ってもいなかった…
変えることが出来ないと思っていた自分の生き方を少しでも変えることが出来たのかもしれない。
第一章
~出会い~
仕事帰り今日もコンビニにより酒とつまみを買いアパートへ帰る。
毎日同じようなことの繰り返し、夜街灯の下を歩きながらつぶやく
「俺生きてる意味あるのかな…」
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「京助!お前企画書の一つもうまく出来ないのか!
いつもミスばかりしやがって!」
「岡本さんまた課長に怒鳴られてるよ…この仕事向いてないんじゃない?笑」
怒鳴り散らす上司の声、ひそひそ聞こえてくる笑い声
頭を下げる俺、いつもの見慣れた光景だ
今年で29歳…平社員で特に成果も出せず会社に出勤し帰る日々、なにか取り柄があるわけでもなくただ細々と生きていく。
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また今日も一日を思い返して憂鬱になりながら帰りを急ぐ。
同級生や周りの人は役職についたり自分で事業を起こしたり家庭をもったり……それに比べ俺は社会にでてから今まで何も変わらず同じような日々をくり返す毎日…
「俺が必要とされる何か…俺にしか出来ないような事ってこの先あるのかなぁ」
例えばこの帰り道の角を曲がった先に可愛い子がいて襲われている所を助けてそんでもってそこからいい具合に発展してそんでもっt……………………………えっ?
そんなことを考えながら角を曲がると20mほど先、街灯の近くで小学生くらいの男の子か泣きながらうずくまっていた。だかそれよりも視線を奪われてしまう存在がその後ろに立っていた。
人のような型はしているが暗闇でもわかるような全身が真っ黒な手足の細長い化け物が2匹?見て取れた。
「なっ…に、こ…れ、えっ、はっ?」
頭の中が一瞬真っ白になり体から脂汗が流れだし膝が震え顔が青ざめる、立っているだけでやっとだった。
そんな中でもひとつだけ考えられだこと……逃げないと!
そう思った瞬間目の前に人が降ってきた、というか舞い降りたといったほうがいいだろう。
黒い服を着て後ろ姿だったが髪型や体格から察するに女性のようだった。
「逃げて…!」
そういうと一瞬にして黒い化け物に間合いを詰めて腰から槍のようなものを取り出し殴りかかっていく。
見た目からは想像も出来ないような動きでアクション映画でもみているようだった。
ナニが起きているのか思考が追いつかず固まっていると先ほどの女性がこちらに向かって叫んだ。
「あなた!……もし見えているならその子を連れてここから離れて………はやくっ!」
そういうと俺の足元に何か投げつけてきた。
「こいつらが見えているなら使えるかもしれない!
それを持ってはやくっ!」
最初彼女が化け物を押していたように見えたが徐々にこちらに押され始めている……しゃべり方などどこか苦しそうに見える。
投げつけてきたものを見るとどこからどう見ても拳銃のようにしか見えない、いや使ったことないですけど……
それを恐る恐る拾い上げると、次の行動は決まっていた。
「そのままこの子を連れてっ……!?ってちょっとどこいくのよっ!?」
全力で逃げた、いやいや普通逃げるでしょ。
よくこんな状況妄想することあったけど現実は違った。恐すぎる、そんな勇気全然ない。
取りあえず警察に連絡して近くにいる大人の人呼ぼう。それが一番いい。
携帯を手に取り110番しようとするがなぜか圏外になっていて使いものにならない。
普段人通りも少ないせいか人も見当たらない。そんななかあの子共のことが頭をよぎる。
「ハァハァ…俺まじで格好悪いなぁ、これじゃ今までと何にも変わらないじゃないか…」
今も震えが止まらない足を止め振り返る。
「まだそこまで離れていない、今ならまだ間に合うんじゃないか」
そんなことを考えているとあの時の子供が泣きながらこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「まじか…!?ハァ……………ここで逃げたら本当のクズだな俺…………」
そういいながら子供の元へ駆けていく。
とにかくこの子を保護してくれる所まで連れてってそれで事情を説明して人を集めてあの女性の助けに入ろう。そう思いながら子供の目の前に行き手を掴んだ。
「もう大丈夫だよ、お兄さんと一緒にここから離れ……………………」
安心させようと声を掛けた瞬間、子供の顔がなんかおかしいことに気付く。おかしいというかどう見ても人間の顔ではない。目や鼻、口の位置がずれており顔が歪んでいる。
「も、ももう…だだダイジョウぶだょ、オにいさんとここヵらいづしょに………ぶっ!」
擦れたラジオ音声のように俺の言葉を繰り返し始めた途端、少年の頭が破裂した。
返り血を浴び呆然とする。
「おえぇ…!
目の前の光景に訳もわからず気持ち悪くなり吐いてしまった。
「なんなんだよ…いったいなにがどうなってるんだよ!…」
うつ伏せに座り込んでいると何かが近づいて来るのがわかった。顔を上げるとあの化け物が目の前に立っていた。その手にはさっき化け物と戦っていた女性が握りしめられていた。
「逃げ……て……」
血まみれになりながらもこちらに声をやる女性…
よく見ればまだ20代前半もしくは10代であろう女の子だった。
自分の不甲斐なさから少年が死に自分より年下であろう女の子に守られたこと、自分の人生が糞みたいな形で終わりを告げようとしていることに恐怖より己へのイライラが勝っていた。
もうどうにでもなれ…………
女の子から渡された銃を取り出し化け物へ向ける。
「なめんじゃねーぞ!!コノヤロー!」
怒鳴り声とともに引き金を引く。
バァァン!
爆発音と衝撃が響く。
目を開けると女の子が握られていた手と両足以外の部分が消し飛んでいた。
「何…今の……」
化け物の手をほどきながら女の子が呟く。
「俺が…やったのか…?」
震える手を確認すると銃が粉々になっている。
「動くな!」
不意に怒鳴り声が聞こえ声のほうに目をやるといつのまにか女の子と同じような格好をした人物が3人フードを被っていて顔が見えないが俺の後ろに立っていた。
すると女の子が割って入るように
「大丈夫……この人は未確認じゃないわ…多分、襲われているところを私が助けたの」
後ろの壁にもたれながら説明する女の子。
「美紀……!」
「美紀ちゃん!」
3人の内二人が女の子もとい美紀と呼ばれる女の子の元へ駆け寄る。
「安静にしてろと言われてたじゃないか!
傷口が開いてる、早く手当てしないと!」
そういいながら美紀を抱き抱える二人。
俺の後ろにいるもう一人が二人に指示を出す。
「二人は美紀ちゃんを連れて病院へ、こちらは私が対応しておく」
「よろしくお願いします」
そう言うと2人はいつの間にか居なくなっていた。
「いやぁ君も災難だったねぇ、怪我とかしてない?大丈夫?」
フードを外すと眼鏡を掛けた白髪混じりの中年男性だった。
「いや、俺は特になにも……これいったいなんなんですか!?あの化け物は?あんた達は……!?」
訳が分からず頭ごなしに質問していくと
「ここで説明するにはちょっと時間もかかるしもう少し落ち着いた場所で説明するよ、君名前は?」
「きょ…岡本京助です」
すると眼鏡の男は紙になにやら書き込み渡してきた。
「明日の17:00頃この住所まで来てくれるかな?もし都合が悪ければ電話番号も書いといたから連絡ちょう
だい、ちなみにこのことは他言無用でお願いするよ」
渡された紙を見ると住所に電話番号それと名前が書いてあった、中丸一心と書いてある。
眼鏡の男へ視線を戻すともうそこにはいなかった。
わけわからん、なんなんだ今日は一体……
「帰ろう…」
考えることをやめ取りあえずアパートに帰ることにした。
最後まで読んでいただき有難う御座います。
つぎの話で今回謎になっていた部分が明らかになっていくので次回も読んで頂けると幸いです。
それでは!