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探偵白書  作者: キンシタマゴ
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1.依頼者

依頼者の名前は早川愛莉はやかわあいり岩奈市いわなしの東側の中心にある私立岩奈女子高等学校しりついわなじょしこうとうがっこうの2年生だ。依頼内容は同じクラスの森久保花(もりくぼはな)を探して欲しいという事だった。


「花ちゃんは真面目で成績も学年1位だったのに。2週間も学校にきてないんです。心配なんです。」

と声を震わせながら話してくれた。それを聞いていた小林カナはつい先程片付けた湯呑みにコーヒーを入れて、その湯呑みを机に置きながら

「警察には連絡したの。」

と優しく話しかけた。

「花ちゃんは特待生なんです。」

この一言で2人は意味を察した。


森久保花は貧困街出身だ。警察は日常的に犯罪が行われている貧困街で起こる事件は取り扱ってくれない。そして貧困街から人が消える事も珍しくはない。だから最初から貧困街での失踪事件を警察に相談しない人も多い。


「だから探して欲しいんです。花ちゃんは悪い事してるはずないんです。悪い事に巻き込まれてしまってると思うんです。」

とボロボロと涙を流しながら2人に訴えてきた。女の子が泣いている姿を見ると胸が痛くなる。私はどのような事をしてあげられるのかがわからなく涙が出そうだった。椅子に座っていた雷門良太(らいもんりょうた)は立ち上がり、泣いている早川の前に行き、目の前にあるコーヒーを一気に飲み干して

「わかった。探す事を約束しよう。」

と言い、湯呑みを早川の目の前に置いた。その言葉を聞いた早川は安心したのか泣いている目を拭きながら

「ありがとうございます。」

と小さな声で感謝を述べた。

「でも今日はもう遅いから帰ろうか。」

と暗くなってきた外を見ながら雷門は早川に言った。コクっと頷き、立ち上がり泣いている顔を伏せながらペコっと会釈した。

「どうやって帰るつもり。1人で帰れるの。」

と泣きそうだった私が尋ねると

「歩いて帰るつもりです。」

と早川は答えた。暗くなってきた街に泣いている女の子を1人で帰すとなると早川までいなくなってしまうかもしれない。雷門は

「車で送ろう。ついでにカナも送ってやるよ。」

「いえ、大丈夫です。そこまでお世話になってしまっては。」

と早川は遠慮がちに首を横に振った。しかし引き下がってしまっては早川が危ない。

「大丈夫よ。甘えれば良いのよ。」

とカナが援護してくれた。もう断っても意味がないと考えた早川は送ってもらう事にした。


雷門の車に3人が乗り、早川の家に向かう。豪華な家が立ち並ぶ通りを走り、早川の案内で家にたどり着いた。周りの家に負けず劣らない豪華な家だった。早川を送り終えた2人は今まで来た道に向いて車を走らせた。そして車の中で2人は今後の捜査について話を始めた。

「明日、学校に行くぞ。」

「そんな急に言って大丈夫なんですか。」

「大丈夫。知り合いがいるんだよ。そいつに頼めばいけるだろ。」

「えらく楽観的ですね。ていうか友達いたんですね。」

「まぁ友達とはちょっと違うかな。」

私は知り合いと友達の区別をつけたがる意味がわからず適当な相槌を打った。


大きな家々を背に2人は自分達の家に向かって車を走らせていた。


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