第3話 またまた精霊さん
退院してから1週間、今日は久しぶりの登校だ。
「はぁ、行くの気まずい…」
皆さんはなぜ気まずいのかお分かりだろうか?
そう、俺はついこないだまで死ぬはずだったのだ。
そんな男が数週間足らずで元気になって帰ってきたのだ、皆はどう思うだろうか。
「気まずい…」
「なーに言ってんの!そんな責められるわけじゃないんだから!」
「でも気まずくない?」
「気まずいわね、私だったらしばらく引きこもるわ」
「やっぱり!?」
そんなやり取りをしている間に気付けば時計が8時を示している、つまりもう時間が無い、うだうだ悩んでいる時間などない。
「やばっ!急がないと遅刻だ!行ってきます!」
行ってらっしゃい〜と言いながら母さんは手を振っていた。
どんなに思い悩んでいようとも時間は残酷なもので、もはや細かいことを考える余裕なんてこれっぽっちもない
校門に近づくと。
時間もギリギリで既に予鈴もなっていた、当然ながらそんなギリギリの時間に登校する生徒はほとんどおらず、いたとしても俺と同じ全力疾走だった。
「ふぅ〜」
教室の扉の前に立つと、既にホームルームが始まっていた、やはり色々な不安がよぎる、だがそんなことを考えていても埒が明かないので、思い切ってドアを勢いよく、とはいかずともそっと開けた。
「お…おはようございま〜す」
当然ながら、ホームルームの真っ最中に扉が開けば、一瞬であろうとも静寂が訪れる。
「悠人!?お前体大丈夫なのか?」
早速1番仲の良かった男友達の真也が駆け寄ってくる。
教室もざわついている、今日来ることは先生に伝えているのだが………。
「ああ、もうすっかり大丈夫だ、えっと……凪原先生?今日来ること言ってましたよね?」
「ああ、聞いてたな」
「なんで皆こんな驚いてるんです?」
「伝えてないからな?」
「なんで伝えてないんです?」
「こういうのはサプライズが1番だろう!」
(ダメだこの教師、早く何とかしないと…)
「あー、まぁその、なんだ?皆よく理解出来てないようだから改めて説明しよう、見ての通りここにいる霧也悠人は病気が治って今日からまた授業に参加する!詳しいことは本人に聞け!じゃっ!」
そう言って先生はどっかに行ってしまった。
「…じゃあ聞かせてもらおうか?今までのこと全部」
「ア、ハイ」
教室中の生徒が全員詰め寄ってくるので若干気圧されつつ、突然病気が治り、検査を繰り返した後退院したことを説明した。
「奇跡ってあるもんなんだな〜」
そんな感じにクラス全員がしんみりしていると、教室のドアが開き、凪原先生が戻ってきた。
「えー、霧也のことで忘れていたが、今日は転校生がいる、仲良くするように、如月雫だ」
雫、その名に心当たりはあるが、さすがに違うだろう。
そう思って視線を向けた先には゛あの雫゛がいた。
「久しぶり、悠人!」
「え?……は?……」
こうして、俺の波乱万丈な学園生活が幕を開けようとしていた。