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女性が出て行ったあと、私は恐る恐るベッドからでた。身にまとっているのは、ネグリジェだった。素材はシルクではないかと思う。下着はもちろん身に着けていなかった。上から足元までボタンの服だった。これのボタンを閉めていない状態で、あの男の人と向かい合ったのだと思うと、羞恥に顔が赤くなってきた。どこまで見えてしまったのかと気になるけど、あの様子ならば変なことはされていないだろうと、安心もした。


置いてあった服は、下着から靴下、ストッキング、ワンピース、カットソーとスカート、デニムシャツに、キュロット。他にも、いろいろ用意されていた。まるで私の好みがわからないから、いろいろ用意しましたという感じだった。それに靴も、パンプスとスニーカーが3足ずつ置いてあった。どれも私にぴったりのサイズだけど、何かがおかしい気がする。


着替える前にまとめて置いてくれた荷物を確認した。服が駄目になったからか、ポケットに入れていたハンカチはなかった。パスケースがあったことにホッとした。バッグの中身も無事だった。


それから、とりあえず無難にカットソーとスカート、靴下を身に着けて、スニーカーを履くと部屋を出た。


出てきた私を、先ほどの女性と奥村と初老のダンデイな男性が、迎えてくれた。


「おはようございます、棟高桔梗様。どうぞ、こちらにいらしてください」


ダンディな男性がダイニングテーブルを示して言った。私は素直にそばへと歩いて行った。椅子に座るようにと促されたけど、その前にと私は三人に向かってお礼を述べた。


「助けていただいてありがとうございます。服まで用意してくださりありがとうございました」

「いえ。どちらかというと、こちらの不手際で棟高様には、ご迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ございませんでした」


ダンディな男性に、逆に謝罪をされてしまった。理由がわからず、私は怪訝そうな顔をした。


「まずは食事をとってください」


席に座ることを再度勧められた。席に座ると、4枚切りのトーストが1枚と、バター、イチゴジャム、ブルーベリージャム、マーマレードが置かれた。それからベーコンエッグとレタスとミニトマトのプレート、ポタージュスープも置かれる。最後にコーヒーがマグカップで置かれた。見ると私の好きなカフェオレだった。


「えーと、いただきます」


手を合わせてから食べ始めた。それにしても、まるで私のいつもの朝食のようだ。私は気分でトーストに塗るものを変える。バターだけの時もあるし、プラスしてジャムを塗る事もある。もちろんジャムだけを塗る場合もあった。ジャムだって用意されたものと同じものを、日によって変えていた。今日はイチゴジャムの気分だったので、トーストにたっぷりと塗った。


私が食事を始めたら、ダンディな男性が言った。


「そのままお食事を進めてください。棟高様に何が起こっていたのか、ご説明させていただきます」


説明をしてくれたのはイチョウと呼ばれた女性だった。話をまとめるとこういうことらしい。


この世界とは違う世界との穴が、時々開くそうだ。そこから出てくるものは黒い闇。これはそのままだと大した害はないらしい。だけど、たまに人に寄生して変容することがあるそうなの。それが、金曜の夜に『鬼』に変わった彼がいい例だったそうだ。


黒い闇についてはあまりよく分かっていない、らしい。私はあの闇から悪意のようなものを感じたから、悪意の塊かと思っていた。だけど、そんなことはないそうだ。というよりも、人の悪意に吸い寄せられてくるものらしい。けど、それも波長が合わないと人に取り付くことはできないのだとか。


あと、あの闇で気をつけないといけないのは、新月の夜。月が完全に隠れた夜は、黒い闇が活性化するそうだ。だから黒い闇に憑かれた者は、変容しやすいとか。


それから、変容したモノは人を襲う。人の血や肉が何よりの好物なのだ。それも女性を狙うのだとか。……えー、よくある話だけど、処女の血が大好物……なんだとさ。


その言葉で奥村と、先ほど料理を運んできたもう一人の青年が私のことを見つめてきた。


(そんなに珍しいかよ。24歳にもなって処女だというのが)


私は心の中で毒づいたのだった。



「ここまでで何か聞きたいことはあるかしら」


イチョウが聞いてきた。私は少し考えた。そういえば、先ほど聞いた言葉が気になったと思いだす。


「えーと、先ほど瘴気と言っていましたけど、それって何ですか」


私の問いにイチョウは微笑んで答えてくれた。


「変容した者が傷つけられた時に、そこから煙のようなものが出てきたのを見たかしら?」

「はい」

「それがそうなのよ。黒い闇の時にはなんともないのだけど、変容した者から離れて行く時には、人に害をなすものになるのよ。だからあなたが捕まえられた状態で、ソウゲツが止めを刺したと聞いた時には、あなたにどんな実害がでるのかと、戦々恐々だったのよ」


そんな状態だったとは思わなかった。私は本当に危なかったのだと、知ったのだった。


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