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放送室は異世界への扉  作者: 雷華
第一部 初めての異世界召喚
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第五十話 〜解放と拘束〜

グラディズとフリースラントは何が起きているのか理解できずに居た。


デュラッツォがアルヴェラの遺体に近付いたかと思ったら、強い光が視界を奪った。

その後、アルヴェラの遺体の前に青年が現れ、デュラッツォと戦い始めた。

そして、今も魔術の攻防が続いている。


突然現れた青年の方は、背後のアルヴェラの遺体を気に掛けているようだが、何者か解らない。

何故デュラッツォと敵対しているのかもはっきりしない。


「な……何なんだよ!これ!」


完全に蚊帳の外だったので、グラディズは思わず叫んでいた。

すると、青年がデュラッツォを弾き飛ばし、距離を取った。

デュラッツォが押し負けるところなど初めて見たグラディズは驚く。

相手は何者か解らないが、魔術の腕はデュラッツォと互角かそれ以上に思えた。

「そろそろ、本当の事を話したらどうだ」

「黙れ、死体泥棒め」

「てめぇにだけは言われたくねぇよ!」

「え、死体愛好家?やだ、さみさん守らないと!」

「お前も鵜呑みにすんなよ!」

流れが面白そうだったので、グラディズは思わず乗ってしまう。

「そいつはアルが死んだのを嗅ぎつけて、死体を持ち去ったんだよ」

「アル?」

初めて聞く名だが、この状況からすると該当者はそこの遺体の人に他ならない。

「アルヴェラ。お前らもここじゃ別の呼び名だろ?」

「ほうほう。さみさんはアル、か……」

「か、カッシー?さっきから随分と落ち着いているけど……」

まだ付いて行けていないフリースラントに、グラディズは申し訳なさそうに苦笑する。

「ああ、ごめんよ、フリース。

 かなり面白い展開になってきたからさ」

仲間─友人の死を前に何を言い出すのかと、フリースラントは嫌悪に顔を歪めた。

「さみさん……アルは、死んでないんだってさ」

「え⁉︎」

「体を活用しようとしてるのを、あの人は止めた。

 死体泥棒を否定した上に、デュラッツォの邪魔をしてる。

 なら、あの人は何をしようとしてるのか」

自分の立てた仮説を、グラディズはひとつずつ声に出していく。

正解ではないかもしれない。

だが、正解であってほしい。

青白い顔で横たわる友を見詰めながら、グラディズは続けた。

「守ろうと、してるんじゃないかな。

 まだ死んでないから、異物を混ぜられるのを止めてるんだ」

「あ!そっか……」

それならば辻褄は合う。

そうでなければ、本当に死体泥棒かと疑うところだ。

友人の死を受け入れたくない、現実逃避の安っぽい気休めかもしれない。


それでもいい。


諦めたくは、なかった。

「この、何でもアリな異世界だ。

 さみさんなら突飛な事もやってのけるさ」

「だからって、自分の死を偽装するなんてこと……」

「いーや、さみさんならやるね」

今まで事態が動かなさすぎた。

それを動かす為の一石となる。

かの友人であれば、自分の死すらも利用するだろう。


「さすが、さみさんだぜ」


どこかで聞いた台詞を耳にした青年は、少し驚いた表情でグラディズを見詰める。

その時、デュラッツォが再び魔術を繰り出した。

細い氷柱が何本も放たれるも、青年は片手で振り払う動作だけでそれらを防ぐ。

「お喋りはそこまでだ」

「デュラッツォ!こっちの話はむしろこれからだぜ?」

「……部屋に戻れ。()()()()()()()()

グラディズとフリースラントは本名で呼ばれ、高圧的な命令に体を強張らせた。

この世界に来て──正確にはデュラッツォに名乗って以降、本名で命令されると逆らう事が出来なくなっていた。

何かの術を掛けられた記憶はない。

どういう仕組みかは解らないが、とにかく抗おうにも体が動かなくなってしまうのだ。

「っ……く、そ……」

「チッ……真名による縛りか……」

青年が不快に顔を歪めていると、その背後でアルヴェラの肉体が動き始めた。

「こ……こは……?……わたくしは、いったい……」

体を起こしながら呟かれた言葉を、その場にいる全員が耳にする。

アルヴェラを知るものならば、これだけで理解するだろう。

「さみさんじゃ……ない?」

「くそ!間に合わなかったのか⁉︎」

青年とグラディズの言葉に、デュラッツォは笑みを浮かべる。

邪魔は入ったが、計画通りになったと。

「…………仕方ねぇな」

少し考え込んでいた青年は溜め息混じりにそう吐き捨てる。

それからグラディズとフリースラントへ視線を向けた。

「“正しき名の元に、かの呪縛を打ち消さん”」

「解呪か。面白い」

「“理に倣え。其は金子唯李、笠井実星”」

青年が詠唱で二人の真名を口にする。

同時にグラディズとフリースラントは、デュラッツォから与えられた腕輪が熱を持ち始めたのを感じていた。

「“時の精霊の名の下に、意思を曲げるものよ、消え去れ”」

時の精霊というあり得ない存在に、デュラッツォは珍しく驚愕している。

その隙に、青年の解呪は成り、2人の腕輪が砕け散った。

「わっ……いきなり、腕輪が……」

「なるほどね……。

 こいつは魔力を補うアイテムじゃなかったわけだ」

「多少はそういった効果もあるが、呪いの代償の方が大きい」

「呪いのアイテムなのかよ!」

青年の説明にグラディズはゾッとする。

「真名による束縛は立派な呪術……つまり、呪いだよ」

「異世界って怖っ」

デュラッツォを間に挟んだ状態で、青年とグラディズは会話を続けていた。

「時の精霊……そんな存在が本当に居たとはな」

「最近よく言われるよ」

本来であれば表舞台に姿を表すことがない時の精霊が、ここまで活発に動き回るのは、事態の深刻さに比例するものだった。

「シュレスヴィヒの術をこうも容易く解呪するとはな。

 まあいい。代わりは手に入れた」

満足そうに笑みを浮かべ、デュラッツォはアルヴェラへ視線を移す。

「さあ、ティフリス、シャイレンドラ様がお待ちだ」

「シャイ……レンドラ?」

「そうだ。

 精神体を保存する為、高濃度の魔力で魂を覆った。

 その副作用で自我は無いに等しいが、問題ない」

デュラッツォの言葉を証明するように、アルヴェラの肉体はぎこちない動きをしており、まともに歩くことも出来ていない。

時折、焦点の合っていない瞳がグラディズとフリースラントに向けられるが、何の反応も見せなかった。

「さあ、どうする?時の精霊」

「……こうだな……!」

アルヴェラの肉体を抱き寄せ、すぐにグラディズとフリースラントの背後に転移し、二人と自分を囲むように結界を張る。

そして、そのままゼーランディアからおさらば。

という計画のようだったが、グラディズとフリースラントの背後に回った時点で、アルヴェラの肉体は青年の手にはなかった。

「これは、駄目だ」

デュラッツォの立ち位置は変わっていないが、その腕にはアルヴェラの肉体が抱かれている。

魔術による空間転移の軌道上から、デュラッツォはアルヴェラの肉体を奪うという荒業をやってのけた。

だが、それは一歩間違えば肉体が消滅する、危険な行為でもあった。

「てめぇ!アルの体に何かあったらどうするつもりだ!」

「そこにも代わりはある」

「人間は……使い捨ての材料じゃねぇよ!」

青年の怒声も聞こえていない様子で、デュラッツォはアルヴェラの肉体を観察する。

その様子は先程までと変わりない。

「ちょっと、どうすんの?

 さみさんだけ置いてくとか無理だぜ?」

「……いや、置いていくさ」

「はあ⁉︎人の話聞けよ!」

「そいつは出来ねぇ相談なんだよ」

憎々しげにデュラッツォを睨み付けると、アモイは喚き散らすグラディズも気にせず、張った結界ごと転移の術でその場から消えた。

「ふん、逃げたか」

「ちょっと!デュラ!僕の術が消えたんだけど!」

「ああ。時の精霊とやらが解呪したからな」

「時の精霊⁉︎何だよ、それ!」

文句が続くかと思いきや、その場に乱入してきた青年──シュレスヴィヒは目を輝かせていた。

「面白そうな奴が現れたじゃん!

 次は僕にも遊ばせてよ!」

文句が別のものに差し変わっているが、解呪されたことに怒りなどはないようだ。

「どのみち、戦うことになるだろう」

「やったね!楽しみが増えたよ」

「私はシャイレンドラ様の元へ行く」

「解った。いってらっしゃい」

陽気に手を振りながら、シュレスヴィヒはデュラッツォを見送る。

この場にグラディズ達がいないことも、アルヴェラを連れていることも、気にかける様子はない。

シュレスヴィヒは興味のない事には全く反応しないのだ。

自分の楽しみや計画を邪魔されると激しい怒りを見せるが、どうでもいい事柄は目にも入らない。

グラディズとフリースラントについても、デュラッツォが勝手に動いている事で、命令がない限りは関与していなかった。

今の彼の頭には、時の精霊というイレギュラーな存在のことしかない。

次の機会を楽しみにする様は、幼い子供のようである。

「楽しみだなぁ」

だが、そう呟いたシュレスヴィヒの表情は、凶悪と言えるほど歪んでいた。


まともに歩けないアルヴェラの肉体を支えながら、デュラッツォは玉座の間へと辿り着いた。

玉座に深く腰を落としているシャイレンドラは、デュラッツォが入って来ても反応を見せない。

デュラッツォが目の前まで来ても、それは同じだった。

「シャイレンドラ様、ティフリスを連れて参りました」

「何⁉︎」

打って変わって強い反応を返し、シャイレンドラはデュラッツォと向き合う。

それから、側にいるアルヴェラへと視線を移した。

「まだ覚醒したばかり故、反応は薄いですが……」

「ああ……この魔力、気配……。

 確かにティフリスだ……。

 デュラッツォ、よくやったぞ」

興奮気味にデュラッツォへと讃辞を向け、シャイレンドラは立ち上がる。

「久し振りだね、ティフリス。

 また、あの時のように語らおう」

頬を撫でるように触れ、シャイレンドラは「ティフリス」を抱き締める。

それを、デュラッツォはほくそ笑みながら見詰めていた。


だが、彼は知らない。

抱き締められたアルヴェラの体に起きた、密かな変化を。

シャイレンドラも、デュラッツォからも見えないその体勢で、アルヴェラの口元に笑みが浮かんでいたことを。

グラ「おい!戻れよ!さみさんが!」

アモ「うわ、暴れんな、バカ!はぐれるぞ!」

フリ「カッシー、ここは大人しくしてた方が……」

グラ「解ってるけど、納得いかねーよ!」

アモ「だから暴れんなって!」

フリ「カッシー!この先に新たな冒険が待ってるかもよ?」

グラ「冒険⁉︎くっ……さみさん……。今は冒険が先だ!」

アモ「それもどうなんだよ、お前!」


フリースはカッシーの制御ならお手の物。

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