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放送室は異世界への扉  作者: 雷華
第一部 初めての異世界召喚
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第三十九話 ~出来る事と出来ない事~

アルヴェラはひとつの可能性の話をした。

邪王達だけの話し合いでは、腹心の裏切りなどあるはずがないと、その可能性すら挙がらなかった。

シャイレンドラ四天王の裏切りは、自分達に置き換えれば竜王の裏切りも同じ。

だからこそ、邪王達はそれを考えなかった。

「竜王と四天王の差は、ありませんか?」

「それは……」

「アル、竜王はね、邪王の血と魔力を分け与えられているんだ。

 だから、僕達邪王にとっては半身みたいなものだよ。

 でも、ね……。四天王は……血で繋がってない」

勿論、血の繋がり以上の絆がないわけではない。

だが、四天王は竜王よりも邪王との繋がりが弱いのは確かである。

四天王に対する信頼、四天王からの忠誠。

それらがなければ、他の邪王と比べるべくもない。

「……シャーイと四天王が何かしらの契りを立ててる話も、聞いたことない」

信じたくはない、認めたくはない。

だが、今の情勢を思えば、完全に否定することもまたできない。

「だが、四天王がそうする利点は何だ?」

「……恨みが、一番……可能性高いかと」

グラーツの問いに、アルヴェラは少しだけ答え難そうに告げる。

仕える主を操り、裏切ってまで事を起こしているのだ。

単純に考えるとそうなってしまう。

「人間への恨みか……邪王への恨みか」

その一言で場が凍り付く。

カシュガルは思わずアルヴェラを睨み付けた。

「邪王に対する恨み、だと……?」

「重ね重ね言いますが、可能性です。

 今回のことで何かしらの害を受けているのであれば──」

それは恨みの対象となっている可能性がある。

「どちらにせよ、かなり昔から計画されていたことでしょう。

 四天王として仕え、信頼を得るのは短期間では……」

「でもアルさん、途中から裏切った、って可能性は?」

「なくはないけど、限りなく低いか特殊な条件が必要かな」

レオナの問い掛けに、アルヴェラは肩を竦める。

邪族は長命で、人間とは恐らく感覚も考え方も違う。

信頼関係を築いた相手を裏切るなど、同等以上の存在が関与していない限りは考えられない。

「それに、隙がない。邪王の誰にも気取られていなかった。

 途中で切り替えた場合、綻びが見えてもおかしくないと思う」

それを隠せるほど、相手が狡猾で冷静沈着でなければ。

「……まだそうだと断定したわけではないが。

 仮にそうであったとして、ならばどうする?」

シャイレンドラ自身の意思ではなかったとしたら。

それでも、操られ、敵対している事実は変わらない。

「できるできないは一旦置いた上で、と前置きさせて下さい」

念のために、とアルヴェラは予防線を張る。

「シャイレンドラ殿を止めつつ、黒幕を排除する。

 術が解ければ、シャイレンドラ殿とは争わずに済むでしょう」

「フッ……なるほど。できるできないは別だな」

苦笑するグラーツに、アルヴェラは視線を落とす。

「どちらにせよ、シャイレンドラ殿と衝突するつもりならば……。

 その場に留め、黒幕とは引き離された状態を作る。

 黒幕を倒すまで、そこで抑えられれば……」

「シャーイは……元に戻って、解決?」

「……もちろん、多少の蟠りや罪悪感などは残りますが」

頷きながら、アルヴェラは続けた。

「完全ではないにしろ、元の状態には近くなるかと」

確かに、それが出来れば問題は解決する。

邪王も長年の仲間を失わず、シャイレンドラも元の状態へ戻すよう尽力するだろう。

そう、それが「出来れば」の話である。

「では、現実的な話をしよう。

 どうやってそれを実現する?」

結局はそこに行き着く。

これが、とにかく案だけ出す場ならここで終われたのだが、状況は待ってくれるはずもない。

少しの間、アルヴェラは目を伏せ、考える素振りを見せる。

ディリスティアは、その様子を見て悲しげな表情を浮かべた。

彼女は知っている。

アルヴェラがそうする時は、何か大きなことを成そうとしている時だと。

その覚悟と決意を、今一度自分の中で反芻している瞬間なのだ。

「さみ……」

たまらず声を掛けたディリスティアに、アルヴェラはゆっくりと顔を上げ、苦笑する。

「今の私は『アルヴェラ』だよ、ディリスティア」

「じゃあ、アル、だね。無理……しないでね?」

これまでの付き合いと経験から、じっくり考えたことを行動に移すと、彼女は必ず無理をする。

特にこの世界ではこれまでの常識が通用しない。

心配そうに自分を見詰めるディリスティアを安心させるように、アルヴェラは微笑んだ。

「大丈夫、上手くやるよ。()()()()ね」

ディリスティアは、その言葉に込められた想いに気付き、掛ける言葉を失う。

「ただ、今度はみんなを……ディリスティアを巻き込むことになる。

 それが……怖いかな」

「私達のことはいいの。私は…みんなはアルを信じてるもの」

「……この道は、辛く険しい、茨の道だよ?」

「私達は、独りじゃないもの」

そう言うと、ディリスティアはレオナに視線を向ける。

それに気付き、レオナは肩を竦めた。

「ここまで来たら、何でも来いだよ。もう。

 アルの言う通りにすれば、最悪だけは避けられるだろうしね」

「そこまでいくと、やっぱ責任重大だね……」

アルヴェラは困ったように笑う。

そういう意味ではないと取り繕おうとして、レオナはディリスティアに小突かれてしまった。

「でも……守るよ。今度こそ。

 ディリスティアだけじゃなく、みんなを、ね」

「うちらは出来ることでアルを支えるし」

「一緒に頑張ろうね」

ディリスティアとレオナは少し距離が出来ていたアルヴェラに近付く。

二人に後押ししてもらい、アルヴェラは改めてグラーツと向き合った。


「我々異世界の人間全員と、関係した方々に協力して頂きます」


そう言い放つアルヴェラに、グラーツは唖然とし、ヴィアハスは少し間を開けて笑い出し、カシュガルは不快そうに眉を潜めた。

それらの反応を見れば、アルヴェラの言葉を正しく受け取ったと解る。

つまり、邪王でさえも協力者として組み込んでいるのだ。

もちろん、人間界にいるロンシャン達の側にいる、リューベックやアイユーヴの人達も含まれる。

それは、邪王と人間が共闘することを示していた。

多少、考え込んでいたとは思うが、前代未聞な案を提示するには短すぎる時間だった。

「既に、出来ないことを話す時間は終わったのだが?」

「出来ないのですか?」

何故、とアルヴェラは首を傾げる。

「我々が人間と手を組むなど──」

「何が問題ですか?

 感情論では覆せない状況まで来ていると理解されているはず。

 それに、手を組む、までは必要ありません。

 それぞれが動くのを邪魔しない、それだけです」

取り戻したいものがあるのなら、手段を選んではいられない。

「僕は協力するよ。

 それでシャーイが戻ってくるなら、断る理由はないでしょ」

「誰がそれを保証する?

 それに、人間が関わるのなら、衝突は避けられない」

随分と否定的なグラーツに、アルヴェラは何か引っ掛かるものを感じた。

「何故そこまで人間を拒絶するのですか?」

「人間は自分と違う者を忌避するものだ」

「そうですね」

否定も罵倒もせず、アルヴェラは当然のように肯定を返す。

それも即答であったが為に、グラーツは面食らっていた。

「自分勝手で、他者を蹴落とし、相手より優位に立っては見下し。

 愚かだということに気付かず我が物顔で横行する。

 それが、人間という生き物の半数であることは事実でしょう」

そこまで言うアルヴェラに、三人の邪王は返す言葉がない。

レオナでさえ驚いているが、ディリスティアだけはクスクスと笑っている。

「さみ……じゃない、アルの人間考察、久し振りに聞いたな」

「えーと、うちら仲間……だよね?」

ディリスティアも聞いた事があるということは、ディヴァースに来る前からそういう考え方をしていたということになる。

だとすると、アルヴェラが言っている「人間」は当然ながら元の世界の住人も含まれるわけだ。

不安そうなレオナにアルヴェラは笑った。

「こんな考え方してるんだから、人を見る目はあるよ。

 それに、半数って言ったでしょう?」

「アルが信じる人はね、外れたことがないんだよ。

 だから私はアルと一緒にいられるの」

嬉しそうに話すディリスティアに、アルヴェラは苦笑する。

人を見る目が養われたのは、ディリスティアに邪な人間が近付かないようにしていた行いがあったからだ。

今こうしてディリスティアが笑顔でそれを認めてくれることは、アルヴェラにとっては嬉しいことではある。

だが、結局は善人ばかりではないという結論に行き着いてしまった、ある意味では悲しいことでもあった。

「さて、話を中断させてしまい申し訳ありません。

 この通り、私も全ての人間を信じているわけではないのです」

話を戻そうと、アルヴェラは再びグラーツと向き合う。

「どういうことだ」

「単純な話ですよ。

 人間界にいる私の仲間達も愚かではありません。

 皆がそう決めたのであれば、それは信じられるものです」

そこまで話すと、一回言葉を区切り、少しだけ間を置いて続けた。

「皆のいる……アイユーヴという国は信頼に値する。

 私はそう考えています。

 人間の全てを信じる事はありません。

 信じてほしいのは私と、私の仲間達です」

それを聞いて、ヴィアハスはアルヴェラの提案を思い出した。

「異世界の人間全員と、関係した方々」というのは、そういう意味が込められていたのだと理解する。

アルヴェラは最初から「信じるに値する者達」だけで進めようとしていた。

だからこそ、自分と自分が信じる仲間、そして、その仲間が信じた関係者達と指定したのだ。

そして、当然ながらこの先に待つ障害についても、アルヴェラは考慮済だろう。

どう反論しても、恐らくアルヴェラは的確な答を返すと思われる。

同じ結論に辿り着いたグラーツが言葉に詰まったのを見て、ヴィアハスはまたもや大笑いしたのだった。

ヴ「今日はグラーツの意外な顔がいっぱい見れて楽しいな」

グ「喧嘩を売っているのか」

カ「お前も人のことは言えないだろう」

ヴ「そうだけど、グラーツとカシュだから楽しいんだよ」

カ「……俺も含まれてたのか」

ヴ「当たり前でしょ♪」


邪王ズは今日も仲良しです

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