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放送室は異世界への扉  作者: 雷華
第一部 初めての異世界召喚
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第三十八話 ~求める答~

グラーツとヴィアハスの訪問は、アルヴェラが玉座の間に向かうよりも早かった。

その為、レオナとディリスティアはアルヴェラに先駆けて再会を果たす。

ヴィアハスは玉座の間にアルヴェラの姿がなかったので首を傾げていた。

「あれ?アルは?」

「呼びに行かせている。お前達が早すぎるんだ」

「えー?自分で行けば良いだけじゃん」

「こちらにも事情はある」

予定になかったことなので、そこは考慮しろとカシュガルは眉をひそめる。

アルヴェラの特別扱いが度を超えないよう、ラディスの進言により部屋を移動させたばかりだというのに。

邪王同士での話し合いによるものだと説明すれば良いだろうが、それはそれで他の邪王からも特別扱いされていると、要らぬ騒動を起こすことは避けたかった。

などと考えている間に、ラディスが玉座の間を訪れた。

「失礼します。カシュガル様、例の娘を連れて参りました」

「ああ」

ラディスが入るように促すと、ようやくアルヴェラは玉座の間へと入って来る。

事態を把握していないというのもあるが、あくまでも自分はこの城内では底辺であるという態度の表れだった。

「失礼致します」

一歩前へと進み出たアルヴェラは、玉座の間に揃っている役者を視界に捉えると、動揺することなく一礼する。

「さっき会った時も思ったけど、やけに畏まるようになったね?」

「それは……」

カシュガルも解ってはいた。

アルヴェラは城内を自由に歩くという目的のため、保護された人間として大きな態度ではいられない。

卑屈になりすぎるのも良くないが、自分の立場を弁えていると周りに見せるためには、ある意味で当然のことでもある。

「さみらしいね」

「うちには真似できないわぁ」

友人達がそこにいることも、アルヴェラから見えているが、姿を確認しただけで動くこともなく、発言もしなかった。

「わざわざ悪かったな。こっちに来てくれ」

ラグーザがさらに呼ぶと、ラディスから少し遅れてアルヴェラも歩いていく。

「……カシュ、弊害の方が大きいから、何とかしてよ」

「俺に言うのか……」

「だって、この城で一番偉いのはカシュでしょ?」

序列一位の存在から命令されれば、アルヴェラも文句は言うまい。

後で問題にならないよう、今だけだと限定しておけばアルヴェラも従うはずである。

三人の邪王の前でアルヴェラは立ち止まった。

「礼を欠く対応ご容赦ください。

 招致に応じました。私にどういった御用でしょうか?」

そう告げたアルヴェラは、カシュガルにではなく邪王三人に対して向かう形で立っている。

「カシュだけじゃなく、僕達三人に対して聞いてる、でいいのかな?」

「主にヴィアハス様にお尋ねした、と受け取って頂いて構いません」

「あは。僕ご指名なんだ」

「私がここに呼ばれたのは、ヴィアハス様の口添えがあったからかと」

「あ、やっぱ解っちゃった?」

「他に、私を呼ぶ方も理由も、思い当たりませんので」

淡々と応えるアルヴェラはどこか機械的な対応であった。

ディリスティアと引き離されそうになった時の様子とは大違いである。

少なくとも、グラーツはアルヴェラが無感情で話していることに違和感を覚えていた。

「じゃあ、早速だけど、用件に入ろうか」

ヴィアハスがグラーツとカシュガルに目配せをすると、二人は同時に目を反らす。

まだ納得はしていないが、反対もしない。

そんな中途半端な意思を感じた。

そして、どうやらここでの説明の役はヴィアハスに渡されたらしい。

「レオナもディリスもアルの側に来てくれるかな?

 一緒に聞いて欲しいんだ」

これまで頑なに近付けさせなかったというのに、どういう心境の変化なのか。

訝しがりながらも、二人は小走りでアルヴェラの側へと近付く。

アルヴェラはディリスティアの無事な姿を見て、安堵の笑みを浮かべた。

穏やかなそれに、カシュガル、ラグーザ、ラディスは複雑な心境である。

リヴォニアにいる間、アルヴェラがこのような表情をしたことはない。

笑うことはあっても、心の平穏を表したような微笑みは見せなかった。

改めて彼らは思う。

自分達は彼女に酷いことをしたのだと。

それは、グラーツも同様だった。

嬉しそうに笑うディリスティアに、心が痛む。

その様子を見ていたヴィアハスは、苦笑した。

素直になれない上に不器用な王達だと。

最初から彼女達と向き合えば良かっただけなのだ。

何の意味もない意地と拗らせた優しさのせいで、彼女達は余計な苦しみを味わった。

無駄な遠回りをしたものだと、ヴィアハスは溜め息を漏らす。

「それじゃあ、説明するね。

 僕達が何者で、ここがどういうところなのか。

 そして、何が起きているのか、全部」

アルヴェラは我に返り、笑みを消し去ると、頷いた。

ヴィアハスは、語り出す。

これが、希望の一歩だと信じて。


僕達がいるのはね、邪界っていう、人間界とは別の世界なんだ。

ディヴァースっていう大きな括りには入るけど、人間界とは別世界になる。

空がなく、朝昼夜の概念も曖昧な、ちょっとずれた空間にある世界、それが邪界なんだ。

この世界にすむ種族は邪族と呼ばれ、人間とは異なる性質、特徴を持っている。

基本的に人間よりずっと長く生きて、睡眠も食事も人間とは必要な回数が違う。

そして、僕達はこの邪界を治める四人の王、邪王と呼ばれてる。

ラオスは僕、ヴィアハスが。

リヴォニアはカシュガルが。

フェルガナはグラーツが。

そして、ゼーランディアはシャイレンドラが。

僕達邪王は、邪界を支える四つの柱でもあるんだよ。

あれ?あまり驚かないね?

人間と違うのは理解してたから、説明が聞けて納得した?

そっか。ちゃんと受け入れてくれるなら、良かった。

邪界や邪族の成り立ちとか歴史は一旦省くね。

長くなるし、必要なところもなさそうだし。

まあ、そんなわけで、僕達は四人で邪界を支えてきた。

今、人間界に侵攻してるのはシャーイ……シャイレンドラなんだ。

僕達に相談もなく、いきなり人間界の街を占領した。

それまでは邪王同士で、人間界不可侵の盟約を結んでたのに……。

僕達にもどうしてシャーイがそんなことをしてるのか解らない。

でも、シャーイがそんなことするなんて思えなくて。

僕達が何度も呼び掛けたりすれば話してくれると思ったけど……。

結局、シャーイは一度も応じないまま、人間界の国の城まで襲った。

これ以上は黙って見ているわけにはいかないんだ。

人間達ももう黙っていない。

ただ、僕達はまだ、シャーイを諦めたわけじゃない。

どうにかして、シャーイを止めて、元の状態に戻りたい。


最後の方はヴィアハスも悲痛な表情で、アルヴェラ達もその思いの強さを感じた。

そして、アルヴェラは新たに得られた情報を基に、立てていた推論を組み直す。

「この世界に囚われない、異世界の人間だからこそ出来ることもあるかなって」

過大評価、買いかぶり過ぎ、そんのことを思いながら、アルヴェラは苦笑する。

つまりは藁にもすがる思いで、出来ることは全てやっておきたいのだろうと。

大切な仲間、家族のような存在、邪王同士の絆も似たようなものなのかもしれない。

長く生きるということ、その間を共にする近しい存在は、代えがたいものなのだろう。

「元通りを望むのは、難しいかと」

「……やっぱり、そうかな」

「どんなに上手く繕っても、綻び自体をなかったことには出来ない。

 完全に元通りにはならないのが道理でしょう」

その上で、とアルヴェラは続けた。

「最上の結果を導き出すことは出来ると思います」

「うん、そう……だね」

「何が起きているのかは理解しました。

 なので、次へ進みましょう」

不敵な笑みを浮かべるアルヴェラに、ヴィアハスは少し驚き次の言葉を詰まらせる。

頼もしいはずなのに、どこか危うさを感じたのだ。

彼女を良く知らないからこそ来る不安の表れだと、ヴィアハスは迷いを払う。

「現時点で思い浮かぶ要因は……。

 シャイレンドラ殿を変えてしまう程の何かが起きた、か……。

 シャイレンドラ殿が何者かに操られている、か……。

 そのどちらかである可能性が高いように思えます」

そう告げたアルヴェラに、グラーツが首を振った。

「それはあり得ない」

「……何故です?」

「シャイレンドラを変える程の出来事を我々が感知できぬはずがない。

 ましてや、四天王を擁したシャイレンドラが操られるなど──」

邪王同士だからこそ解る事もあるが、それは時として固定観念を生んでしまう。

だからこそ、真相に辿り着けないのだとアルヴェラは溜息をついた。

「その……四天王、というのは?」

「歴代の邪王は、側近として竜王を据える。

 そこにいるラグーザ、我が腹心ラロシェル、そしてカディス。

 だが、シャイレンドラだけは竜王を持たない代わりに四天王を置いた。

 宰相デュラッツォ、翠風のサファヴィー、

 灼刀のダガーラ、氷冷のシュレスヴィヒ」

ラグーザがカシュガルにとっての右腕のような存在だと思っていたアルヴェラは、竜王という言葉に思わず彼の方へと視線を向けてしまう。

少し照れ臭そうにその視線を受け、ラグーザは苦笑した。

「その四天王の目を盗み、何者かに術を掛けられるなど──」

「四天王が裏切らないという確証は、ありますか?」

敢えて、アルヴェラはグラーツの言葉を遮った。

可能性の話である。

真実に辿り着きたいのなら、どのような疑惑であっても検証すべきだった。

「何を……!」

「あり得ない、と選択肢を潰すには、早すぎるかと。

 内側に敵がいるという前提で考えれば、辻褄は合います」

「馬鹿な!あの四天王はシャイレンドラに忠誠を誓った。

 それが、裏切ることなど……!」

シャイレンドラを見て来た邪王ならば、ある程度ではあるが四天王のことも知っているだろう。

だが、それは同じ邪王であるシャイレンドラと同等ではない。

「四天王に、何かが起きたかもしれない。

 それを、あなた方は知ることが出来ますか?」

グラーツは、遂に言葉を詰まらせた。

シャイレンドラに何かが起きたのであれば感知できると答えられるが、その四天王に何かがあったとしても、ゼーランディア内部のことを感知できるはずがない。

反論する材料もなく、グラーツはアルヴェラの仮説を一つの可能性として受け入れるほかなかった。

アルヴェラは申し訳なさそうにヴィアハスへと視線を向ける。

悔しそうに拳を作るグラーツとは対照的に、ヴィアハスは道が拓ける予感がして満面の笑みを浮かべた。

デ「さみがカッコイイ♪」

レ「うちら出番ほぼないけどね」

デ「さみの見せ場ならしょうがないよ」

ア「何がどうしょうがないのか……」

レ「でも、四天王とかって悪役が邪魔するために用意するものじゃない?」

ア「普通は違うと思うよ」


ラグ「あいつら自由だな」


シリアス展開だと思いきや、実はこんなやり取りが行われてたり(しない)

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