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放送室は異世界への扉  作者: 雷華
第一部 初めての異世界召喚
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第二十六話 ~精霊との対話~

アモイは溜め息をついた。

完全に気配も姿も消しているはずなのだが、今日は既に何度も看破されている。

自分のような特殊な精霊の存在を、そう易々と看破されるのは好ましくない。

そういう意味で、アモイは自信を喪失していた。

だが、今はこの状況をどうにかすることが先決だった。


「斎木……未由斗って、先輩?さみ先輩のことよね⁉︎」


落ち着かせるために身の上を話したが逆効果のようで、セラヴィーンは先程よりも興奮状態である。

『俺、泣きたくなってきたわ……』

「ちょっと!先輩をどうしたのよ!」

『一回で理解しねぇのかよ!』

セラヴィーンの左右で存在を忘れられているコウセイとコウライは、見えない存在と彼女が話しているのを見て、さすがに不安になっていた。

「おい、セラ、しっかりしろよ!」

「な、何かの呪術か幻術をかけられたんじゃ……」

自分達には見えない存在を認められず、二人はただセラヴィーンの心配をしている。

ここは一度諦めて出直すべきかとアモイが頭を抱えていると、彼女の悲鳴を聞き付けて人が集まってきてしまった。

「さっきの悲鳴、セラだよね⁉︎大丈夫⁉︎」

「セラ!無事⁉︎」

それぞれの鍛練を中止し、仲間達が駆け付ける。

面倒な事態になってきたが、三人とも無事を確認できた。

もうこれで任務完了でいいかとアモイは遠くを見詰める。

「先……ロンシャン、この人がさみ先輩の名前を……!」

「えっ⁉︎って、ええと……どこの誰の話?」

セラヴィーンが指差す方向を見ても、何もいない。

まさか、セラヴィーンが遂に精神に異常を来したのではと、ロンシャンは慌てて彼女に駆け寄る。

「セラ、落ち着いて。そこには何もいないよ?

 さみのこと心配してくれるのは嬉しいけど……」

何だか、自分のせいでセラヴィーンが精神異常者にされそうなので、アモイは困り果てた。

そして、これだけは避けたかったが、主に指示を仰ぐことにした。


──マスター、助けてくれ……。


情けないが、これ以上は勝手なことは出来ない。

フェルガナでもラオスでも、ここ──アイユーヴでも、アモイはかなり勝手な行動をした自覚はある。

だが、影響があるのは少数に留めていた。

もう一度周りを見て、アモイはまたひとつ溜め息を付く。

ロンシャンとマーシアに付いて、それぞれの師と、城の兵士までもが集まってきていた。

姿を見せれば、アイユーヴ全体に事情が知れ渡ってしまう。

程なくしてから、アモイに声が返ってきた。


──いや、たぶん、私じゃ助けにはなれないと思う。


何とも気弱な応答である。

確かに、アルヴェラへ助けを求めたところで、リヴォニアから動けない彼女には大したことは出来ない。

別段、何かをしてもらうつもりはなかったが、アルヴェラの声を聞いて、アモイは少しだけ落ち着いた。


──ああ、悪い。相談したいってことだ。

──相談……ですか?

──今、最後の仲間のとこに来てるんだが……ちょっとやばい状況なんだ。


軽く現状を説明すると、アルヴェラの声が少しの間だが途切れる。

何かを考えていたのかもしれない。


──解りました。姿を見せて事情を説明してください。

──いいのか?マスター。

──構いません。ただ、誤解するような言い方はしないように。


間違えても、カシュガルに捕まっている、などという伝え方はするな、ということだ。


──誤解されたら…?

──後でアモイをシメる。

──ちょ。

──冗談です。誤解はされないと思うから。


くすくすと笑っているのが声でも解る。

アモイはアルヴェラが確証を持って言っているようなので、余計に疑問だった。

だが、説明しろと言うのであれば、そうするまでである。


──了解、マスター!

──マスターって呼ばれるの、慣れない……。

──俺は好きだぜ?このマスターっての。

──何をどう気に入ったのか……。まあ、よろしくね。

──おう!ありがとな。もうすぐ戻れる。

──こちらは何事もないので大丈夫です。


何事もなくて良かったが、主の傍を長い間離れることには抵抗を感じる。

アルヴェラとの会話を終え、アモイは再び辺りの状況を確認した。

ロンシャンに宥められ、落ち着きを取り戻したセラヴィーンが、ちらちらとアモイの方を気にしている。

周りもセラヴィーンがおかしいのではと不安げに見守っていた。


『悪かった。あんただけおかしいみたいなことになって。

 今から姿見せるから、騒がないよう伝えてくれ』


さすがに責任を感じているのか、アモイはそうセラヴィーンに向けて喋る。

「え?姿、見せるって……え?」

「セラ?」

「何か、今から姿見せるから、騒ぐなって、言ってるの」

また幻聴かといよいよ慌て始める一行の前に、アモイは姿を現した。

淡い緑色の光が出現したかと思うと、人型のそれは誰の目にも見える形で青年の姿に変わる。

さすがにアイユーヴの兵士や、ロンシャン達を守る立場にあるリューベックは警戒して武器を向けた。

「ほら!この人だよ!さみ先輩の名前、口にしてた!

 ちゃんといるでしょ⁉︎」

自分はおかしいわけではないと主張するセラヴィーンに、アモイは苦笑する。

「悪かったって。俺の姿は人間には見えねぇんだよ、普通は」

「お前は何者だ?いきなり城の中に侵入してくるとは……」

リューベックが剣を構えると、アモイは顔だけそちらに向けた。

「説明するから、武器を下ろせ。

 これ以上、変な騒ぎにしたくねぇんだ」

「お前の正体が解らない以上、無理な相談だ」

まあそうだよな、とアモイは何度目になるか解らない溜め息を漏らす。

「俺は時の精霊、主から戴いた名はアモイ。

 主の命により、異世界の人間達の様子を見て回っている」

そう告げたものの、リューベックは余計に警戒を強めた。

ロンシャン達が異世界の人間だと知っていて様子を見に来たのであれば、敵であってもおかしくはない。

「俺の主も、そいつらと同じ異世界の人間だ」

「その……主が、さみ先輩ってこと……?」

今度は理解してくれたかと、アモイは疲れた様子で頷いた。

「うそ⁉︎さみが主って……本気で言ってるの?」

「本当だ。俺が主に選んだんだからな」

信じられないとロンシャンが再度尋ねるも、アモイは平然と返す。

「ち、ちょっと待って!と……時の精霊⁉︎」

「理の大精霊なんて、存在したのかよ⁉︎」

術師の双子が驚愕の眼差しで アモイを見詰めた。

「おとぎ話くらいにしか伝わってねぇのに、随分と知られてるな……」

ヴィアハスは長年の知識の賜物と言えなくもないが、この双子はまだ若い。

余程、書物を読むのが好きか、知識を得るのに貪欲か、といったところなのだろう。

「異世界の人間が主……?

 ならば、何故そいつは一緒にいない?」

「他の奴らが安全な場所にいないかもしれねぇからな。

 そんな場所に主殿を連れて行けねぇよ」

そもそも、アルヴェラは動くつもりが全くなさそうだったので連れ出せなかったのだが。

「お前の主は今どこにいる?」

「……リヴォニア城だ」

少しだけ間を開けてアモイが答えると、その場の空気が凍りついた。

「リヴォニアって、邪王が治めてるっていう……」

「え?じゃあ、さみは今……邪王に捕まってるってこと⁉︎」

「違う」

騒ぎが大きくなる前に、アモイは否定する。

「主殿が、自分の意思で、そこにいるんだ」

「だ、だって、邪王って……」

「現状、主殿に危害を加える奴はあそこにはいねぇよ」

カシュガルを擁護するのが嫌で、アモイは思わず苦い顔を浮かべた。

「ど、どういうこと⁉︎だって、邪王は……」

「人間界に侵攻してきてるのは誰だ?」

「確か……シャイレンドラ……」

「そうだ。他の奴らは動いてない」

「でも!邪王同士は結束も固いって……」

すっかりロンシャンとアモイだけでやり取りしている状態になってしまっている。

だが、聞きたいことを的確に打ち返しているので、リューベックですら口を挟めずにいた。

「そうだ。だから、召喚も妨害された」

「な、なら、何で……?」

「シャイレンドラ以外の邪王は、人間界との全面戦争を避けたいらしい」

「え……?」

どういうことだとロンシャンは目を細める。

「異世界の人間の力を得れば、人間が邪界に攻めてくる。

 シャイレンドラを失うわけにはいかない他の邪王も、当然迎え撃つ体制だ。

 つまりは全面戦争が勃発する」

「でも!あたし達はシャイレンドラだけを──」

「仮にそれが達成できたとして、その後は?」

ロンシャンの言葉を遮り、アモイが尋ねると、彼女は口篭った。

「残りの邪王が報復しないとでも?」

それはリューベックも考えていた。

シャイレンドラだけを狙って成し遂げられたところで、結局は他の邪王の怒りを買うだけだ。

「一人ずつ相手をして、邪王全てを葬るか?」

同じ手が二度も通じはしないだろうなとアモイは嘲笑する。

場の空気はどんどん悪くなる一方だ。

「なら、お前は……お前の主はどうすれば良いと思ってるんだ?」

「……さあな。俺は主殿の命令に従うだけだ。

 主殿に至ってはまだ状況も把握できてねぇし」

「は?」

聞き間違いであって欲しかった。

リューベックは怪訝そうな表情で返す。

「主殿はこの世界に来てから、情報を制限されてる。

 俺からも説明を受けようとしてねぇんだ」

「どういうことだ」

「当人が話してくれるまで、自分からは情報を得ない。

 それが、主殿の誠意だそうだ」

「誠意、だと?」

何を言っているのかと、リューベックは眉間の皺を深くする。

「カシュガルとグラーツは奪った異世界の人間に対して何もしていない。

 自分達が何者かも、状況がどうなっているのかも、な。

 情報を与えず、事が済むまで大人しくしていろということだ」

「横からかっさらっておいて酷いな」

理の精霊(おれ)から見れば、お前らも大概だぜ?」

才能ある人間を誘拐して戦わせようとする。

本人達に了承を得たとはいえ、無関係の人間を死地に向かわせる所業なのだ。

「それだと、問題は何も解決しないんじゃ……」

「そうだよね……。結局、何もしてないんだし」

セラヴィーンとマーシアも気付いた。

二人の邪王がやっていることの虚しさを。

「ああ。ただの時間稼ぎだな。

 その間に、問題を何とかするってのが方針だったみたいだぜ」

「何とかって……」

突然の曖昧な表現にロンシャンは呆れた様子である。

「シャイレンドラを説得するとか、その辺だろ」

「出来てないから今の状況なのに?」

「邪王を一人も失いたくない、人間との全面戦争もしたくない。

 それが、三人の邪王の願いらしい」

子供の我儘かと、言っているアモイ本人も苦笑する。

「理想論としてはそれが一番かもだけど……」

「で、そんな理想を抱いてる邪王の考えを変えたいのが主殿だ」

「何も知らないのに、変えたいって……どうして思えるの?」

「横から奪ったのに何もしないでいいなんておかしいだろ?

 つまりは奪うだけで何らかの妨害をしているってことだ。

 その上で動かないのなら、それは膠着状態にある。

 打開策がないのであれば、動いてもらうしかない」

何が起きているのかは解らない。

邪王達がどうしたいのかも解らない。

だが、このままでは恐らく何も解決しない。

信頼を得て、共に動いても良いと思える存在になれば、状況を話してくれる。

そこから、解決に向けて動いていけば良い。

その為の、邪王に対する誠意だった。

「得られる情報は少ない。

 が、主殿はおおよその状況を予測している。

 しかも、それが間違ってねぇからすげぇよな」

さすが自分の主だとアモイは嬉しそうに笑う。

「いや、何の情報も与えられてないのに状況把握できるとかおかしいから」

ロンシャンは頭を抱えながらそう返した。

が、すぐに顔を上げる。

その表情は、勝利を確信しているような、不敵な笑みを浮かべていた。


「でも、さすが、さみだわ」


アモイもロンシャンの言葉にどこか安堵したような笑みを浮かべた。

少しだけ呆れを含んだそれは、友に向けての最大の賛辞に他ならなかった。

セ「ところで、みんなして私の事おかしい人扱いしましたよね?」

ロ「あ、そうだ!さみのこともっと聞いておこうよ」

セ「せ・ん・ぱ・い?」

ロ「いや、ほら、それは、ね?」

マ「誰にも見えないものが見えてたんだからしょうがないよ」

セ「そんな言葉には絆されませんからね?」

ロ・マ「ごめんなさい」

ア(その才能を褒めてやろうと思ったが、今はやめとこう…)


三人娘は今日もマイペース。

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