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放送室は異世界への扉  作者: 雷華
第一部 初めての異世界召喚
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第二十二話 ~過去・交錯~

拝啓 宮内様


本来なら、きちんと面と向かって話さなければいけないことですが、何分舌足らずなもので、手紙での無礼をお許しください。

まずは、涼子さんの無事を心からお喜び申し上げます。

力のない私でも、ささやかながらお力添えできたこと、嬉しく思います。


本日は、昨日お伝えした、涼子さんとの今後について、改めて説明したく、筆を執らせて頂きました。

私は弱い人間です。

涼子さんを護る力もなく、側に居続けることはできません。

また、涼子さんが危険を省みず、安全の保障されていない場所へ向かうことを止められません。

私といることで、危険な場所へ向かいたいと思うようになってしまったのであれば、それは私の責任です。

同時に、私が離れれば、そういったこともなくなるでしょう。

涼子さんには酷なことかもしれませんし、知見を広める機会を奪うことにもなりますが、今の私に出来ることはこれしか思い付きませんでした。

彼女には、この手紙のこと、離れる理由などは伝えないよう、お願い致します。

ふり、では意味がないのです。


学校で心ない生徒達が一時騒ぐかもしれませんが、それに関しては対処したいと思います。

また、良からぬ事を企む生徒がいれば、全力で阻止します。

ただ、涼子さんとは、今までのような付き合いは致しません。

涼子さんを悲しませる結果となり、誠に申し訳ございません。

皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。


斎木 未由斗


追伸

今回の件で、両親が私に携帯電話を持たせてくれました。

連絡することはないと思いますが、連絡先を記させていただきます。


**********


手紙の最後には携帯電話の番号とメールアドレスが書いてあった。

おおよそ、中学生が書いたとは思えない内容ではあったが、彼女らしいと、涼子の両親は苦笑した。

同時に、未由斗が涼子を嫌っていないと。

今回のようなことがまた起こることを怖がって離れたわけではないと。

涼子の親友の心情を知り、安堵もしていた。

この二人を守ってあげられる環境を作れないことが、もどかしい。

金などあっても、肝心なときに役に立たない。

両親は手紙を封筒に戻し、鍵の付いた引き出しにしまった。


その後は、未由斗の望み通り、二人は一切の関わりを持たなくなった。

涼子は見舞いに行きたかったが、未由斗の両親から拒絶され、涼子の両親も行かない方がよいと窘めるので、あれ以降は行けなかった。

夏休みが終わる頃、未由斗は無事に退院したが、図書館で会うことは出来なかった。

夏休みが明けてからは、元々クラスも違い、放課後に図書室で会うくらいだったので接点はなくなる。

合同の体育の授業で姿を見ることは出来るが、話すことはなかった。

心に穴が開いたようで、涼子は悲しみに暮れる。

しばらく付いて回った噂話も無表情で受け流し、中学一年は夏休み以降、暗黒時代のように過ごした。


転機が訪れたのは二年に上がったときである。

涼子と未由斗が同じクラスになったのだ。

これに関しては涼子の両親も特に根回しなどしておらず、学校側も意図して組んだわけではなかった。

再び巡る縁に、未由斗は複雑な心境だった。

しかも、幸か不幸か、二人とも接点のなかった生徒が二人をグループに誘ってきたのだ。

宮木 郁恵、この後、長い付き合いになる少女である。

郁恵は当然、二人の事件について知っていた。

校内ではあまりにも有名なので、知らない方が不自然ではあるのだが。

「噂じゃ色々言われてるけど、ほんとのところどうなの?」

真顔でそう尋ねてきた時は、未由斗が鬼の形相で無言の威圧を掛けたのだが、郁恵は動じなかった。

「え……と、あまり……その話は……」

涼子が困ったように応えると、未由斗は何も言わず教室を出ていってしまった。

「……そんなに触れられたくないの?」

涼子と郁恵は出席番号も近い為、未由斗と違って離れることは出来ない。

「さみは……大怪我しちゃったし、警察沙汰にもなったから」

「さみ?」

「あ、み……斎木さんのこと」

「何で『さみ』?」

「斎木のさ、に未由斗のみ、で『さみ』なんだって」

「へえ!面白い!いいね!あたしもそう呼ぼうっと」

郁恵は空気を読まず無遠慮に話し掛けて来ると思っていたのだが、後日、それは改められた。

郁恵も、未由斗と同じく、出自や過去に拘らず、納得できるかどうかだけで判断する人種だったのだ。

彼女が何度も執拗に話し掛け、事件のことを聞くのは、彼女が納得していないからだった。

事件以降、二人は仲違いしたという話だが、今、一緒にいても互いに不快感などは示していない。

涼子は気まずい雰囲気だが、未由斗は迷惑そうにはしていても、視線は涼子を気遣っているように見えた。

噂は宛にならない。

だから、自分で真実を確かめる。

この手合いは厄介である。

未由斗はどうしたものかと考えた結果、放置することにした。

自分からは何も話さないし、質問にも答えない。

涼子がどう接しようが我関せずを貫く。

それしかなかった。

「案外しぶといのね……」

早々に陥落した涼子と違い、未由斗は己を曲げなかった。

「ね、ねえ、郁さん。もういいんじゃない?」

「ダメよ!こういうのはちゃんとしないと」

何がどうなるのがちゃんと、なのかは解らないが、郁恵は諦めないようだ。

次は何をするのかと思っていたら、放送局に誘われた。

委員会の扱いではあるが、部活と変わらず入りたい者で構成されるそれは、他の部に所属していても掛け持ち可能だった。

郁恵が引き摺る形で未由斗は強引に放送局に入ることとなった。

「……やられた」

「ふふーん。これで逃げ場はないわよ!」

「プライベートなことに踏み込むのはどうかと」

「確かめたいだけ」

「何を」

「涼ちゃんは、友達?」

未由斗は溜め息をつく。

「違う」

「違うの?」

「そんな安っぽい関係じゃない」

根負けした未由斗は、そう答えた。

「何よりも……それこそ、命を掛けられるくらい、大切な人だよ」

これで満足するだろうと、未由斗は答えるだけ答えると郁恵から離れた。

だが、それを聞いてじっとしてる郁恵ではないから大変だった。

「──だからさ、もういいじゃん?」

「……郁さん……」

「涼ちゃんが可哀想じゃない」

「一緒にいても、どうせよそよそしくなる。

 元には戻れないんだよ」

前と同じように話すことはできても、未由斗に迷惑を掛けまいと涼子は遠慮するだろう。

それでは、何の意味もないのだ。

郁恵の登場で、未由斗と涼子は同じグループにはなったものの、あくまでクラスメートとしての付き合いしかしなかった。

それでも、涼子はまた未由斗と話す機会ができたと喜んでいた。

未由斗の近況も、郁恵のおかげで聞けるようになった。

二年と三年はクラス替えがない為、卒業までは一緒にいられる。

それだけで、十分だと、涼子は悲しげに笑う。

郁恵が気を揉ませたまま、三人は昇級した。

また夏が来たことで、少しだけ未由斗と涼子がギクシャクする。

夏休みになると、どうしてもあの事件のことが思い出されてしまうのだ。

そんな夏休みのある日、未由斗が家で宿題を片付けていると、携帯電話が鳴った。

シャープペンを置いて携帯を手に取る。

どうやらメールだったようで、差出人を見た未由斗は苦笑する。


こんにちは。

またメールしちゃいました。

あ、でも、今日は大事なお話があるの。


そんな書き出しに未由斗は溜め息を付いた。

差出人には「涼子のおばさん」と表示されている。

そう、未由斗は涼子の母親とメールで何度もやり取りしていたのだ。

初めて受けたのは、手紙が宮内家に届いたその日だった。

咎めるでもなく、説得するでもなく、涼子の母親は文通気分でメールを出していた。

未由斗の性格上、受けたメールには必ず返信するのが当たり前だったので、メールが来る度に、律儀に返事を出していた。

いつの間にか、メル友と言えるくらいやりとりをするようになってしまったが。

何故こうなった、と思うこともあるが、涼子の様子を教えてくれるので、正直なところ助かっている。


もうすぐ修学旅行でしょう?

最後くらい、学校行事に参加させてあげたくて。


とんでもないお願いが書かれていた。

野外学習など、学校外の行事は涼子の願いもあり、全て不参加だった。

それを、最後の最後に行かせてあげたいと。

その気持ちは解るし、出来ることなら参加させてあげたい。

だが、あまりにも危険だった。

そして、参加したらしたで、涼子はずっと遠慮して楽しめないだろう。

どちらにせよ、自然体で思い出作りなど出来るわけがない。


無理を言ってるのは解ってるけれど、未由斗ちゃんにしか頼めないの。

お願い!あの子と一緒に修学旅行に行ってあげて!


子を思う親の願いは痛いほど伝わってくるのだが、安易に聞くことはできない。


『少し、考えさせてください』


未由斗はそう返信して、新規でメール作成画面を開く。

宛先に郁恵を選び、手を止めた。

実のところ、郁恵にメールを送ったことがない。

しかも、内容を思うとおおごとになりそうで、少し気が重い。

だが、涼子の為だと、覚悟を決める。

その後、危惧した通り、郁恵は騒ぎ立てたが、それを諫めつつ、涼子を修学旅行に参加させる為の相談をした。

問題点や回避策を出し合い、どうにか遠慮させずに参加させられないかと議論する。

その結果、何とかなりそうな作戦を立てることが出来た。

それを涼子の母親にメールし、涼子の両親から学校側に働きかけ、涼子は他の生徒と共に修学旅行に参加することとなった。

条件付きではあったが、大したことではない。

郁恵と同じグループで、郁恵の指示に従うこと。

自由行動時も同様であること。

修学旅行に行くとしたら、グループは自然と郁恵のグループになるし、班長は彼女なので指示には従う。

別段、特別なことでもないので、涼子は素直に頷いた。

郁恵と未由斗はこのグループ分けにも手回ししていた。

男女混合でなければならないため、男子を選抜したのだ。

涼子の事を特別視しない、荒事に巻き込まれても切り抜けてくれそうな、いわば「味方」を増やしたことになる。

その男子の一人は郁恵達と同じ放送局の人間だった。

話を聞き、二つ返事で承諾してくれた、少し変わり者である。

何はともあれ、涼子は他の生徒と一緒に修学旅行に参加、満喫することが出来た。

やはり襲われることになった未由斗と涼子、そして郁恵の修学旅行の話は、またいつか──。


とにかくこれをきっかけとして、未由斗と涼子の関係は元に戻ることになる。

受験する高校が二人とも同じだったのは言うまでもなく。

そして、郁恵も同じ高校に合格し、三人は放送局に入ることとなった。

それも、郁恵の強引な誘いによるものだったが。

そんな経緯があって、三人は異世界の争いに巻き込まれた。


過去を掘り返すのは、ここまでだ。

現実を、見なくては。

アルヴェラ(未由斗)は、過去に沈んだ意識を、引き戻す。

前へと進む為に──。

涼「一番肝心なところ、はしょられたぁ!」

未「そろそろ過去編から戻らないとね、さすがにね」

涼「さみがカッコイイ、いい場面なのにぃ!」

未「ハードル上げないで?そんな場面ないから」

涼「さみが王子さまばりの活躍見せるんだよ⁉︎」

未「郁さん、助けて」

郁「はっはっは。仲良きことは素晴らしきかな」


涼ちゃんの中ではかなり美化された思い出のようです。

※本編が進んでまた落ちたいた頃に入れたいなと

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