はじめまして
序盤は短いです。だんだん慣れてきたら長くなる、はず。
気がつくと、目の前が真っ暗だった。
というか、真っ暗なままだった。
これは、本当に目覚めているんだろうか?周りを見渡し--見渡せない!?
これはあれか。神様の空間的などこかで、俺は魂だけの状態パターンか。ふむ、こういう時は……
待ってみる!
しかし、ただ待つのも暇だ。寝て待つか。
閉じる目がないからか、意識すると湧いてくるような眠気に襲われる。そのまま流されるように眠りについた。
*
来ない…。
あれから随分経ったと思う。かなり寝ていたから、すでに8時間は経っているだろう。
ここは神様フィールドじゃないのだろうか?なら既に異世界?最悪のパターンとしては、異世界と地球との間にあるよくわからない次元の狭間的な所に囚われて漂流していたり…。
やばい、泣きそうです。
お父さんお母さん、入学金払ってもらったのに、大学行けなくてごめんなさい。友よ、実は俺、お前の部屋で百合百合しいエロマンガ見つけちゃったんだ…。
頭の中で無意味な懺悔が続く。しかし来ない。何故何も見えない!
取り敢えず何か見せてください、お願いします!
そう念じたからだろうか。表面に違和感を感じた。まるで目を閉じ続けていて、くっついてしまったかのような気持ち悪さ。
そう、表面だ。俺は霊体ではなく物体らしい。では、ここは異世界か!?
さっきまでの悲壮感は何処へやら。今はとにかく、異世界への好奇心がなによりも優っている。
開け開け開けひらけえええええええええ!!
それはパカっという効果音がしそうな感覚だった。
目の前に広がるのは、日に照らされた奇妙な形の木々。その影からこちらを見るツノの生えた栗鼠や宝石のような小鳥たち。鬱蒼としつつも、どこか神秘的な木漏れ日のさすそこは、見たこともない植物や動物で溢れていた。
いざ言おう。
異世界ktkr!
さあ新たな一歩を踏み出そう、と思ったが、足もないようで踏み出すことはできない。どうやら、本格的に人間じゃなくなってしまったらしい。
まずは検証だ。自分が何なのか確かめねば、進もうにも進めない。それどころか、そのうち野生の動物や魔物に喰われて死んでしまいそうだ。
まずは体。
感覚がないので目で確かめる。目の体操のようにぐるーっと視界を変えていく。が、空と地面と木しか見えない。なんだか自分自身が目になったような感じだ。
転生ものあるあるなご都合主義な水辺はここにはなさそうだし、動けたら探しにでも行ってみよう。
次は感覚。
今は無いが、先のように念じたら発現するんじゃないだろうか。
触覚、聴覚、嗅覚を欲するように念じる。
結果はあたり。視覚の時の気合はなんだったんだと言いたいくらい、あっさりと感じられるようになった。
風の音を聞き、緑豊かな香りを楽しみながら、感覚を研ぎ澄ませる。芝生がこしょこしょと体をくすぐって、風が俺の体にぶつかって上へ左右へと方向転換しているようだ。
まるで、球体のように滑らかで感じる範囲にムラがない。いや、上が少し長い気がする。球を上に伸ばした形といえば、そうあれだ。
卵。
わろたとしか言いようがない。口がないから言えないけど。わかっていたけど、人間じゃないのは確実だ。もはや人型ですらない確率が高い。
ちょっと不満だが、念願の異世界だ。文句や愚痴はよそう。
まあ取り敢えず。
はじめまして異世界。
転生なのか転移なのかわかりませんね。