第4話「一行と共に」
子どもの頃から本やシャイルから話を聞いていた。歴史上最強英傑の一人、ベイル=ダルク。からは王国と誓約し交わした剣聖であり、その力は神に等しいと言われている。その候補と言われてる現親衛隊隊長レオン=ハースブルク。ハイルはてっきりゴツゴツしたお堅い人だと思っていたが、その真逆だった。すらっと伸びた身体に透き通った黒髪。凛々しい目と綺麗な曲線の輪郭と鼻。「剣も凄腕でイケメンとか…神は不平等だな。」そう苦笑しながら独り言を呟くと、レオンはこちらに気づき受付のボブに目をやった。「あぁ、この者は騎士団入団希望者です。しかしながら田舎者でございまして、州兵研修を終えていませんでした。挙句剣聖を名乗ろうとする輩共の一人でございます。」と馬鹿にしてくるモブではなくボブ。事実ハイルは騎士団に入る為に色々な特訓をしたつもりだが、現役の兵士たちには到底敵わないだろう、その程度で最強と謳われる剣聖になるなど寝言にしか思われないのは仕方のないことである。ましては剣聖候補の前で。しかしレオンは「剣聖か、僕も日々鍛錬を重ねて目指しているよ。剣聖候補なんてこの身に余る事だよ。」
この男は悪意もなくただ謙虚にそう言った。本当にこの謙虚な男が剣聖候補と呼ばれるくらいの実力があるのだろうか。ただそう思うだけだった。
「それにこれからは国を守る同僚となる訳だね。仲間が増えて嬉しいよ。えっと…」「ハイルだ」
「よろしくハイル。僕のことはレオンと呼んでくれ。」「ああよろしくレオン。」そう言ってお互いに握手をした。いい奴過ぎるだろと思った。ボブも同じような事を思ったのか少し困惑した様子で「ハースブルク殿…あなたは剣聖候補である上に親衛隊隊長、そしてハースブルク家の者なのですよ?敬意を払われるのは当然ことです。少し打ち解けにも程があるのでは?それにこの者はまだ州兵団すら入団していません。」とこっちを見て愚痴り混じりにいった。レオンはやれやれと言った顔で腕を組んで言った。「まあ確かにこの身分でこの様子じゃあ軽率と思われても仕方がないね。気をつけるよ。ところでハイル、これから州兵団本部に向かうつもりだろう?案内しよう。」
全然気をつけていないレオンにボブは呆れていた。ハイルは本部には向かわず一度村に戻って準備を整えてから行く予定だった。「いや、一旦ダン村に戻ってから行くつもりなんだ。」じいちゃんのシャイルにも一言声をかけていくつもりだった。何て言われるのだろう、それだけが不安だった。「ダン村…ブルーフォレストの近くの村かい?これから任務でそこに行く予定なんだ。もし良かったら僕らの班で送っていくよ。」「まじで!?助かるよ車代ちょっと危なかったし助かるよー!」
思いもよらない提案にハイルは驚いた。まさか騎士団の一行に送られるとは、それに王都で少し飲み食いがしたかったのだ。だがそれは車代をケチらなければ叶わないことだったのでこの提案には乗るしかない。「じゃあ決まりだね。一時間後に南門から出発するから、それまで王都でゆっくりしていってくれ」そう言って騎士団城を後にしたレオンだった。今日王都に買い出しに来てよかったとハイルひ心から思う。遠征前の騎士達と同じ車に乗って行くなどまだ州兵にもなっていない身としてはすこし心が踊る気分だ。
そうして有意義な王都での一時間を過ごして南門へ向かうとそこには金髪をすこし伸ばした騎士らしき男がいた。「よう!ハイル、レオンから話は聞いてるぜ。俺はレノ。魔術憲兵に所属してるぜ。よろしくな!」
やけにテンション高い奴がいたものだ。ハイルも挨拶をして後からレオンが合流したところで一行は王都を発った。