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旅の備えと守り刀

 「これは私、国木田圭一くにきだけいいちの奇妙な旅の物語である。」2017年2月5日明朝


「車で旅に出ようか。」

 ある一言から始まった怪しい車旅行。その言葉を発した須口真利すぐちまさとしは根っからのオカルトマニアで、今回の旅も千葉県の心霊スポットをぐるりと一周する旅だという。そんな旅路は、初っ端からつまづき、出鼻をくじかれる形となってしまった。


 1月も終わりに差し掛かる頃、須口は千葉県柏市にある我が家へと来ていた。明日からの旅行に供え、食料やら旅の用意やらを購入するためだ。

 もっとも、大抵のものは須口自身で用意しているし、これから購入するのは、やれ心霊スポットやら廃墟やらに侵入する時のための、いわばサバイバルグッズのような物である。

 お互いに金銭的余裕は少ない。登山用品店で売っているような本格的なサバイバルグッズは高くて買えないだろう。なので揃えられる物は100円均一で揃え、後はホームセンターで代用品を探す事にした。登山靴の代わりに安全靴、作業着は自前の物を使うことにする。

 そうして揃えたなんちゃってサバイバルグッズを車に積み込み、車中泊でも大丈夫なように災害用の電池式のランタンも買った。これで供えは万全である。後は明日を待ち、出発するだけだ。

 そう思っていたが、買い物が終わり、夜もだいぶ更けてきた頃合いに須口が煙草を吸いながら口を開いた。

「そろそろ、守り刀を作ろう。」

何の話だろうとおもったが、何の事はない、心霊スポットに赴くのであるから、お守りを作っておこうという話だった。

 須口が言うには、自前の刃物に日本酒をかけながら唱え言葉を言う。その後に水で清めればいいらしい。

夜闇で幾分先も見えない真っ暗な駐車場に出て、それをするらしい。せっかくなので先程購入したランタンを持っていくことにした。

須口が手本を見せるというのでそれを見ることにする。

「祓え給え、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え。」

そう言いながら日本酒を彼の自前のナイフにかけていく。LEDのランタンに照らされた日本酒の雫がキラキラと光って見えた。

 いわば儀式を終えた須口は、次はお前の番だと言わんばかりに日本酒を差し出してきた。別に俺もお守りを作るのは悪くないと思う。だが、

「唱え言葉が難しすぎる。」

これに尽きるのであった。

 しょうがなく須口はカンペを作り、それを読みながら行うことにする。刀につける名前を決め、その唱え言葉を言いながら日本酒をかけた。

「祓え給え、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え。」

暗闇のなかぼんやりと見える自分のサバイバルナイフを見つめ、これから先、この刀は名を持ち、自分を守る刀になるのだと思うと、よろしく、という言葉が心の中にふっと浮かんできた。ちゃんと俺のことを守ってくれよ。

 こうして守り刀作りも滞りなく終わり、午前1時を過ぎた頃、ようやく俺たちは眠りにつくことができたのであった。

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