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第1話:寺の少女の朝

はじめまして。この小説を開いてくださって、本当にありがとうございます。作者はまだ16歳で、大人の方の小説と比べると文章が荒削りで読んでいて未熟に感じるかもしれませんが…。日々常に作者の頭の中に描かれている物語をできるだけ忠実に綴っていこうと思ってます。少しでもおもしろいと感じてくださった方、どうか最後までお付き合いいただけたら幸いです。

ぱっと目を開いた。上に漬物石でも乗っかってるみたいに胸が苦しい。

パジャマも額も汗でぐっしょりだ。あたしは張り付いた前髪を指でそっと分けた。

またあの夢だ。

最後に見たのは一週間前だった。もうこないと思って安心したのがそもそも間違いだった。

かんべんしてよ、月曜日の朝から殺される夢なんて。

あたしはため息をつくと再び布団にもぐりこんだ。目覚めるならもうちょっとマシな夢で目覚めたい。


「まーーやーーー!起きろ爆睡女ーーー!!」


一階から弟の声がガンガン響いてくる。悪夢でうなされていた姉への気遣いはかけらもない。

「あーもーうっさい!起きてるってば!」

かなり刺々しい口調で叫び返すと、のろのろとベッドから降りた。


まるであいつがまだ頭を締め付けているみたいだ。

何度か壁に激突しそうになりながら、ふらふらとキッチンにたどり着くと、家族はすでに朝ご飯を終えていた。


弟の圭太(けいた)は口笛吹きながらお皿を片付けている。お世辞にもうまいとは言えない。


黒い学ランに、ワックスで髪をツンツン立てた弟は、あたしを見るとにやにや笑った。

「いつまでぐーぐー寝てんだよ。ほんっと、起こすのも一苦労だな」

ったく、中坊のぶんざいで生意気なやつだ。

「えーえー、ほんっと、あんたの馬鹿でかい声のおかげで快適な目覚めでしたわ、圭太様」

とびっきり美しい声でそう言うと、圭太はおえっと吐く真似をしながらキッチンから出ていった。


あたしは冷めたご飯と味噌汁を口にかきこんで、制服に着替えた。

制服を見るとさっきの夢がまたよみがえってくる。これが真っ赤な血にまみれて…

ぶんぶんと頭を振って振り払う。だめ、考えちゃだめだ。

かばんの紐を引っつかんでローファーをはき、家を出た。


自転車の止めてある庭まで歩いて来ると、おじいちゃんはよれよれのパジャマ姿で寺の庭を掃除していた。

ラクダ色の腹巻きまで装着している。おじいちゃんのセンスの良さなんて、すでによーく知っている。

「おじいちゃんっ」

坊主頭がぴくっと反応し、こっちを向いた。

「なんだ万夜、また寝坊か」

おじいちゃんはにんまりと笑った。

あたしの大好きなその笑顔はたくさんのしわのせいでより柔らかく見える。


ちょっとだらしないところもあるけど、お父さんが死んだあと、あたしたちを男手ひとつで育ててくれた頼もしいおじいちゃんだ。


――あとはお坊さんらしく正装してくれさえすれば完璧。せめてラクダ色以外で。


「あのさーおじいちゃん、その腹巻き…」

「これか?いいだろう。あったかくてな、すぐれものだぞ」

おじいちゃんは腹巻きをつまんであたしに見せてきた。


するとおじいちゃんは何か思い出した様な顔をした。

「そういえば、今朝女の人から電話があったぞ。夕方、よろしくお願いしますとか何とか――」


ぎくり。

「あ…ああ〜女の人ね?ええと、なんて言うか…」

おじいちゃんの目付きが鋭くなる。これはまずい。

「…お前まさかまた――」「いっ行ってきまーす!」


あたしは止めてあった自転車にまたがると、寺の門から飛び出していった。



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