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第15話

第14話を大幅に変更しています。変更前にすでに読んでしまったという方、本当に申し訳ありません…。

今後こんなにも投稿済みの話を変更することはないので、今回はご了承ください。

教室にたどり着くと、今日も彼はまだ来ていなかった。また屋上に行ってるんだろうか。

『へっあんなやつ、来なくていいんだよっ!』

義将がそうつぶやくのが聞こえた。昨日のことですっかり彼のことを嫌いになったらしい。

あたしは聞こえないフリをして麻海のところに行った。

あたしに気づくと麻海は駆け寄ってきた。

「ねえ万夜、ちょっと3組まで行きたいんだけど、いい?」

「いいけど、どしたの?」

「借りてたマンガね、返しに行きたいの」

麻海の手には黄色い袋が握られている。あたしは頷いて、一緒に教室を出た。


あたしたちはぶらぶらと廊下を歩いていった。途中で何人かにあいさつしたりもした。クラスが違うからほとんど話さない子たちだけど。

教室でも、あたしはほとんどいつも麻海といる。麻海は他の子みたいに、沈黙をおしゃべりで埋めたりしない。だからあたしは一番気楽で、落ち着いていられる。

はじめはブリッコなのかと思っていたけど、一緒にいるようになってぜんぜんそんなことないって気づいた。麻海のふんわりしたかわいさは天然ものだ。

それに、今どきの女の子にしてはすごくきれいな心を持ってる。素直で、純粋で。

まさに『天使』って感じだ。

こんな女の子になれたら、っていつも思う。


マンガを返し終わって、あたしたちはまた教室に向かった。その時、麻海のケータイの着信音が鳴り出した。

「麻海ー、鳴ってるよ?」

「あ…う、うん」

あわててポケットから取り出そうとした麻海は、ケータイを落としてしまった。

「あっ」

かがんで拾おうとした麻海の手より早く、誰かの手がケータイを拾い上げた。

「大丈夫?」

まるで歌うように滑らかな声に、あたしたちは同時に顔を上げた。

そこには、長身の男の子が立っていた。長めの髪は明るい茶色で、耳にはピアスがじゃらじゃら付いている。なんだか軽そうな人だ。

その男の子は自信に満ちた笑みを浮かべながら、ケータイを差し出している。

あたしの直感では、絶対ナルシスト。

「あの、ありがとうございます」

「ああ、お礼なんかいいって。こんなかわいい女の子にかしこまられたら、何だか悪いしね」

ぺこりと頭を下げた麻海に、彼は脱力しそうな殺し文句を平気で言ってのけた。

そして麻海の手に自分の手をそえてケータイを手渡した。(ゲーーッ!)

あたしの予想は大当たりだったみたい。

「じゃあね」

その人は軽く手を上げてあいさつすると、すたすたと歩いていった。



あたしはようやく顔の引きつりから解放された。

「なんか…すごい人だったね」

「うん…すごくかっこよかった…」

「――え!?」

あたしはぎょっとして麻海を見た。着信が切れてしまったのも気にせず、ほっぺたをポッと赤らめてうっとりしている。ま、まさか。冗談でしょ?

「麻海、もしかして今の人のこと――」

麻海は答える代わりに顔をさっきよりも真っ赤にした。

あたしは叫びだしたい気分だった。麻海の男の趣味にここまでツッこみたいと思ったことはない。

だけど、こんな性格の麻海だからこそ「えーっ!あんなののどこがいいの!?」なんて言えない。

「そ、そっかあ」

と笑顔で言うのが精一杯だった。


そのあとあたしは、放っておけばふわふわと飛んでいってしまいそうな麻海を教室までつれて帰らなければいけなかった。

やれやれ、なんだかおかしなことになりそう。



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