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渡り蝶
帰りの黄海はとても穏やかでした。暖かい日差しに甲板に出てみました。
雲南はもう遠くになりましたが胡蝶泉の森は太古の昔から豊かな水と
うっそうとした木々に今もおおわれて不思議な物語は潜んだままです。
デッキに固定された椅子に座り遠くを見やると蝶が、
２匹の蝶が絡まりながらこちらにゆらりひらりと飛んできます。
半透明な水色をしたアゲハチョウです。
２匹は治を一回りすると向こうの椅子の背に止まりました。
よく見ると一匹は褐色の尾をしています。この海を渡るんでしょうか？
そんな話を聞いたことがあります。まさか？まじまじと２匹の蝶を
見つめると、蝶たちは飛び立ち船尾へと消えていきました。
日本のはるか西南、大陸の地に胡蝶泉という小さな泉があります。
今も蒸し暑い真夏の頃、突然の夕立に稲妻が走り雷が落ちます。
するとその時たくさんの蝶がこの泉から天空へと舞い上がるそうです。
－完－
