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雲南伝説胡蝶泉  作者: きりもんじ  百万遍とおる
13/14

稲妻

仙人と男の子女の子が中央に。

(男の子)「ほんとだ、同じことの繰り返しだ」

(女の子)「どうしても、あのふたりは

救えないのかしら?」


ふたりじっと仙人の方を見る。

(仙人)「救えないことはないさ。すごく時間が

かかるかもしれないが、意外とそうでもないかもしれない」


(女の子)「どういうこと?」

(男の子)「可能性はあるんだ」

(仙人)「そうとも。可能性は十分にある。さっきも言い

かけたが、人間そのものを良い方向へと変えていく運動を

根気よく続けていくしかあるまいて」


(男の子)「なあんだ」

(女の子)「信じるのね!」

(仙人)「そうだ、信じるのだ。これからは蝶を見たら

あの二人だと思い、必ずふたりが死なないでいい時代が

来るように祈ることだ」


(二人)「祈ることだ!」

(仙人)「戦うことだ!」

(二人)「戦うことだ!」


(仙人)「この運動を広げることだ!」

(二人)「広げることだ!」

(仙人)「諦めずに持続することだ!」

(二人)「持続することだ!」


(仙人)「仲間を励まし、人間を革命する戦いを

根気よく全世界で繰り広げることだ!」

(二人)「繰り広げることだ!」


(仙人)「そうすれば、人類の宿命の転換は必ずできる!」

(二人)「必ず達成できる!」


|暗転|


大きな蝶、無数の蝶が舞い続ける中を

若者と姫が上手から下手へ。

エリート二人が下手から上手へ。

稲妻が光り、雷鳴が轟き渡って、


/////////////////////////////////


「起きてください!起きてください!」

「むむむ」

「40元払ってください」

「柵を乗り越えて入ってはいけませんよ」

何人かの人声が聞こえます。


「あ、すみません。私は日本人の旅行者です。

40元。はい、今払います」


皆の笑い声。膝に抱えていたリュックから必死になって財布を探します。そうだ財布はポケットの中でした。みんなの視線を感じながら40元を手渡すと

また大きな笑い声が響きます。

「リーベン、ハオハオ」

「ユイシアチライラ」(雨が来るよ)


今は一応冬場なので蝶の季節ではありませんがどこからともなく蝶が一匹

また一匹と集まり始めました。

天空はにわかに掻き曇り。人っ気はどこにもありません。


稲妻が光り!雷電、閃光。ものすごい雷の轟き。

ぽつりと大粒の雨しずく。

『これはやばい。あの建物に逃げ込もう』

その間にも雨は大降りになってきました。

篠突く雨です。濡れた服を拭きながら胡蝶泉を見やると、


水面は雨しぶきで霞のようにも見えます。

『あの蝶たちはどこに行ったのか?』

するとおぼろげながら二匹の蝶の大きな幻が見えました。

あ、その後ろにもまた二匹。


手をかざすとやがて幻は遠くかすんで消えてしまいました。

後にはただ天空との境目のない胡蝶泉の水面だけがすべておぼろげに。

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