【×月×日】
【×月×日】
明るい光すらない。ただ一つの蛍光灯が病室全体を照らしてくれていた。窓は無い。空を見ることすら出来なくなっているこの部屋で、彼女はニコニコと笑っていた。
「恋霞さんって面白いですよね。」
「え?どこがッスか?」
彼女は俺の間抜け面を見てクスクスと笑いながら「そこが面白いんです」と震える声で言ってきた。
そう言われても・・・と心の中で困り顔をするが生憎自分は百面相では無いので実際の顔には出なかった。けれど彼女はそれを手に取るように分かる。将来何になりたいのかすら分からない。
俺と彼女との遊びは大抵カードゲームだ。とは言っても最近の子供たちが好んで遊ぶものではなく、普通のトランプゲームだ。
ちなみに今日はババ抜きをしている。昨日のメランコリーは大変立派に惨敗したので今日こそ、意気込んでやっているところだ。
彼女はポーカーフェイスといえるほど表情を隠すのが上手いわけではない。二人きりなので、誰がジョーカーを持っているなどと疑心暗鬼にならないので彼女はいつもジョーカーを引いたときに肩を大げさに落とす。
その姿を見てるのは楽しいし、何より彼女の笑顔を見れることが一番楽しかったと思う。終わったあとの反省会もどきも、明日のゲームを考えることだって俺の幸せの一つとして掲げられている。
ちなみに二人きりということは最初のうちは引けば必ず何かが当たるのだ。それはつまらないと彼女は頬を膨らませて言ってきたので、最初からもうゲーム終了間際まで行ってしまおうということで、毎回ババ抜きはどちらかがジョーカーともう一枚相手が持っているカードを持ち、相手は一枚でどちらかがジョーカーだと当てるようになっている。
要するに初めからスリルを味わって楽しめる、というわけだ。
現在、俺が二枚所有し彼女がジョーカーを当てないようにと頑張っているところ。唸る彼女を早くと急かすと、ますます困った顔になりあたふたと慌ててくる。
俺はこの瞬間が大好きだ。まぁ、それを彼女に言ってしまえば「悪党!」などと罵られるので言わないことにしといてはいるが。
「う〜ん。これだっ!」
潔く引いたカードは。
「・・・えぇーーーーーー!」
ジョーカーだった。二枚になったカードを彼女は背中で俺に見せないようにとランダムに回して俺の目の前に出してくる。
「ち、近いです。」
「いいから取ってください!さぁ!早く!」
もうヤケクソになっているのかカードをブンブンと振りながら俺に早く引けと急かす。いや、そんなことしたらカードの裏見えるよ。
「はいはい、じゃあこっち。」
適当に引いたのはジョーカーではないほう。特に嬉しくもないので「勝ち。」と一言いい、取った二枚を彼女に見せた。
「・・・・昨日は勝ったのに。」
完全に拗ねている彼女のご機嫌を直すことなど容易いのだが、もう少し拗ねた表情が見たくてジッと彼女の顔を見ていた。
「もう終わりにする?」
「・・・分かりましたです。」
「拗ねないでよ。後でおはぎ持ってくるから。」
彼女の大好物であろう和菓子を話題に持たせると途端に目は輝きだし、機嫌が良くなっていく。流石和菓子。日本の古い歴史が蘇っている・・・。
「恋霞さんも一緒に食べましょう!」
「うん、一緒に食べる。」
彼女の笑顔に癒されながら、今日も俺は幸せな一日を過ごした。