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何でもない男の話  作者: 雲太
1章 何でもない男の誕生した話
6/20

6話 日本のアニメーション等かつてはヲタク文化と呼ばれたモノが、現在はcool Japanと呼ばれて賞賛されている。なるほど。確かに偉大だ。身に染みて理解した。

前回から時間が少し跳びます。

なお、食料については季節感はなしの設定に変更。野草の旬までは把握しきれない・・・

「ふむ。今日も、大漁、だな」

小ぶりな笊いっぱいの野草と50㎝くらいの枝に5尾もぶら下がった魚を手に、雲雀は機嫌良く来た道を引き返す。

「肉は、一昨日の、ウサギが、残って、いるので、まだ、大丈夫、と」

ここのウサギは大きいので、一羽狩ると数日は持つ。肉ばかり食べるならばすぐに無くなるだろうが、バランスの良い食生活を心掛けているおかげでその心配も少ない。

「とはいえ、いい加減、さすがに、穀類が、食べたい、ものだ・・・」

『麦の収穫にはもうしばらく掛かるからな』

10日前に蒔いた麦は――先住者が色々な種を保存していたのを発見した――成長を促進してはいるものの、収穫まではどう見ても1週間はかかるだろう。

こちらに来てもう1ヶ月・・・そろそろ穀物が恋しい。

「よし、決めました。今日の、午後は、山芋を、探しましょう」

予定表を頭の中で若干修正しつつ、本日の行動を決める。

『今日の午後は剣の稽古ではなかったのか?』

前日の夜に立てていた予定を思い、やや呆れたように尋ねるセヴィ。ひと月とは言え雲雀の衣食住に対する考え方を見てきたからこその反応だ。

「そうですよ?『剣』の、稽古も、兼ねて、です」

元々古武術は習っていたが、当然実践は皆無と言っていい。

ましてやこちらに来てからは組手相手もおらず型稽古のみ。

更にこちらの世界の剣は、文字通り『剣』であって『刀』ではない。習っていたこととは勝手が違い過ぎる。

「狩りは、しても、戦闘は、したこと、ないですから。まずは、動物、相手に、実践、します」

魔物除け結界の範囲ギリギリのところで山芋を探しつつ、手ごろな獣相手―-魔獣を含む-―に実践訓練を行うつもりだ。

「草食系の、魔獣が、居れば、いいですね。魔獣でも、たしか、食べられる、のですよね?」

『毒が無ければな。しかし魔獣は草食であっても魔力がある分きついぞ?』

「承知、しています。あくまで、最善が、草食魔獣と、言っている、だけです。いくら、なんでも、いきなり、使い慣れない、『剣』で、肉食魔獣と、戦うつもりは、ないですよ」

『ならば良いだろう。・・・しかし、やはり『剣』を使うのか。あの『刀』は使わないのか?』

雲雀の持参品の中にあった居合刀を思いだして尋ねるが、

「刃挽きの、刀で、どうやれと?」

居合剣術は習っていたが、未成年がマンションで簡単に真剣を所持できる訳がない。当然、持っているのは刃挽きである。

「あれでは、いいとこ、撲殺しか、できません」

まあ獲物側からすれば、撲殺も斬殺もどちらも変わらないのかもしれないが、これはもう気分の問題である。撲り殺されるよりは斬られた方が、上手くいけば一瞬だし、まだましだろう、と。

「大体、『剣』の、稽古だと、言っているじゃ、ないですか。刀を、使って、どうするんです」

もちろん、刀が使えるものなら使いたい。使い慣れているし、正直言って『剣』というものはあまり性に合わないのだ。

しかし、ない以上は仕方がないのである。

「いずれ、鍛冶場の、使い方が、分かったら、居合刀を、直します。でも、今は、剣に、慣れないと」

自分に活を入れつつ、住居洞窟の中へと入っていった。



ザンッという音と共に、突進してきた角のある大型兎は倒れた。ちらりと下草に流れる血を見やり、さらに手に握られた細身の剣を複雑な表情で見る。

「なんというか・・・こういう、感じ、なんだな。命を、斬ると、いうのは」

これまでにも狩りで獲物を取ってきたし、捌いてもきた。しかし、罠や弓矢といった飛び道具を使ってだった為、動き回って向かってくる獲物を直接手で倒すというのは初めての経験である。

「ナイフでの、解体は、していたが、これは、なんというか、複雑だ・・・」

命を奪うことについては今さらなので落ち込みはしないのだが、手ごたえが何とも言えない複雑さを感じさせる。

「まあ、生きる為、な訳だし、直に、慣れる、だろうが」

一つ大きく溜め息を吐くと、気分を切り替えるように首を振った。

「さて。感傷は、ここまでにして、血抜きして、しまいましょう」

『大丈夫だろうが、一応結界内でしろよ。肉食魔獣は通常の肉食獣よりも血の臭いに敏感だ』

セヴィの忠告に頷くと、中型犬大の兎魔獣を掴み上げ、急ぎ結界内に引き返す。

高々15mだが樹々の生い茂る森の中ではそれなりの距離だ。特に初めて結界の外に出たのだから、注意してしすぎることはあるまい。

色はないものの、蜃気楼のように淡く揺らめいて見える結界を潜り抜ける。魔獣除けの結界だが、すでに死亡している場合は問題ないらしく、兎魔獣も問題なく持ち込めた。

すれ違いざま振り抜いた剣がちょうど頸動脈を切り裂いていた為、近くの木に蔓で吊り下げるだけで血抜きはできる。

血が抜けるまでの間は、山芋堀だ。近くでいくつかムカゴがあるのを見かけていたので、ある場所は把握済みだ。

「時期は、ズレて、いるのですがねぇ・・・何というか、季節感が、ないですね」

『こちらでは山菜や野草の類は、基本一年中採れるからな。まあ、収穫量に差はあるが』

「採れる、だけで、十分に、不思議です。ワラビと、クルミを、同時に、食べるとは、思いません、でしたから」

まあそのおかげで植物油がすぐに手に入ったので、助かってはいるのだが。それでも何となく寂しい気持ちがするのは拭えない。

「旬が、あるのは、変わらないので、まあ、いいのですが・・・」

ムカゴの生る蔓を発見し、その根元の土を確かめる。しばし確かめた後、軽く目を細め頭の中にイメージすると。

ズズズズズッ・・・・とまるで水がわき出るかのように土が盛り返され、タケノコが生えるかのように山芋が顔を出した。

『大したものだな。ひと月かそこらでここまで、詠唱魔法を使いこなすとは・・・』

しかも無詠唱で、とセヴィの呆れを含んだ感心声。

「イメージ力の、勝利、ですね」

アニメに漫画、小説と、こと日本のヲタク文化は群を抜いている。

昔ながらのファンタジックな物から、作者独自の魔法理論を有するものまで様々あり、さらにそれらが発達した映像技術によって、想像である分よりリアルに目にすることができる世界だったのだ。

周囲にヲタク人種が多かった雲雀は必然的にそれを見る機会も多く、イメージなど無理にしようとせずとも容易くできてしまう。


VIVA、ヲタク文化。VIVA、地球の映像技術!!


1mはある大きな自然薯を片手に、生まれ故郷を褒め称える雲雀。

そんな相棒を見て、さらに呆れたようにため息を吐くセヴィ。

『それもあるが、俺が言っているのは魔法の効率と応用についてだ』

普通、詠唱魔法で芋掘りなどしない。

『攻撃や治癒といった戦闘に使うものだぞ』


確かに刻印魔法で作るマジックアイテムなどは存在するが、それなりに値が張るし中々一般的ではない。何より刻印魔法とて、元は戦闘の際の防衛や罠として開発されたものである。

それを刻印魔法よりはるかに魔力を喰う詠唱魔法を、狩りならばまだしも、芋掘りのために使うなど、常識的に見てありえない。


「私としては、その方が、理解、し難い、ですが・・・これだけ、便利、なのですから、普通、使うでしょう」

1mもある自然薯を手作業で掘るなど、どれだけの労力が掛かるというのか。他に手がないならばいざ知らず、少々魔力を使うだけで済むのに、手掘りなんて絶対にご免である。

『普通、少々ではすまないんだ・・・』

一見簡単そうに雲雀はやって見せたが、実は埋まっている物を取り出すという魔法は、かなり高度な魔法とされている。普通の魔法より魔力消費が激しく、並みの魔法使いではすぐに魔力切れになるだろう。

そう説明するセヴィだが、雲雀は首をかしげる。

「何故、魔力切れに?少し、土を、循環させる、だけでしょうに」


自然薯の周辺10㎝程の土を、自然薯に付着しているごく薄い土を除いて上下に循環させただけである。

その際に循環しやすいように水分を飛ばしはしたが、あくまでその程度だ。魔力切れを起こすような要素はないはずなのだが。


理解できない、と首をひねる雲雀。


『・・・・・・・・』


通常、物を取り出す時は空間魔法と防御魔法の魔力消費の大きい魔法の重ね掛けであり。


土を乾燥させ循環させるなどという発想が、そもそも普通は出てこないのだと。




言ったところでこの相棒には無意味なのだろうと、あるはずのない(想像上の)首を振りつつ溜め息を吐くセヴィだった。


中世知識からの発想と現代知識からの発想では、やはり歴然とした差異が出ますよね。

高卒程度の知識でも学者レベルだと思います、きっと。

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