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何でもない男の話  作者: 雲太
1章 何でもない男の誕生した話
4/20

4話 あ~・・・、やることが山積みだな。いくらある程度慣れているとはいえ、いきなり環境が変わるのはやはりそれなりにきついんだが・・・これは片付け終わるのにどれくらいかかるんだ・・・?

一夜明けました。主人公、行動開始です。

翌日、日ごろの癖で早朝6時に起きた雲雀は、清水での洗顔を済ませると、昨夜の夕食の残りのスープで朝食を済ませた。

歯ブラシと岩塩で歯磨きを終えると、洞窟内のテーブルに向かい何かをメモに書き込んでいく。ちなみに、歯ブラシも、メモやボールペンも、時間を確認した懐中時計も、すべて元の世界から一緒にやって来たものである。

『何をやっているんだ?』

「これからの予定を書いているんですよ。まったくのゼロである私にとって、一年は決して長い時間ではありませんからね。無駄にしないように、やるべき事を書き出して予定表を組んでいるんです」

そう言いつつ、時計を見ながら予定を組んでいく雲雀。そして数分後、完成したものが、以下のとおりである。



予定表①

・AM6:00~8:00 家事(食事、洗濯、掃除等)

・AM8:00~12:00 食糧調達

・PM12:00~17:00 昼食及び環境整備(片づけ、探索等)

・PM17:00~19:00 休憩及び家事(食事、入浴等)

・PM19:00~22:00  座学(言語、一般常識、魔法等)


予定表②

・AM6:00~8:00 家事(食事、洗濯、掃除等)

・AM8:00~12:00 食糧調達

・PM12:00~17:00 昼食及び訓練(魔術、体術等)

・PM17:00~19:00 休憩及び家事(食事、入浴等)

・PM19:00~22:00  座学(言語、一般常識、魔法等)



『何故、二つもあるんだ?』

疑問に思った仮聖霊が尋ねると、

「一枚目は当面の、たぶん向こう一週間から長くて10日くらいの予定です。あくまでこの環境に慣れるまでの、準備期間用のものですから。環境が整ったら二枚目の予定表に従って行動します」

まあ、それも必要に応じてその都度変化するでしょうが。

「ちなみに、こっちにはこの先身に着ける必要があるだろう内容を書き出したのですが、何か不足はありますか?」



学習すべき事

・言語(文字、会話)・魔法、・歴史、・地理、・一般常識、・戦闘技術


「できれば、せっかく工房もあるわけですから鍛冶についても学べれば良いですけどね・・・」

まあ、時間的に無理のような気もしますが。

『お前の成長次第だが、たしかに鍛冶は難しいだろうな。一応、基本は教えられるだけの知識は持っているが。それから、取り敢えずそこに書いてある内容で問題ないだろう』

些か呆れたような口調で返す仮聖霊。さすがに欲張り過ぎた事を言っていると思ったのだ。

「そうですか。なら仕方ないでしょう。それでは、さっそく行動しますか」

そう言って立ち上がろうとした雲雀だが、途中でふと気づいたように動きを止めた。

『?どうした』

訝しそそうな仮聖霊の問いに、

「うっかりしてました。大事なことを忘れていた」

いけない、いけないと首を振る。

「あなたの名前を聞く事を忘れていましたね」

『・・は?俺の名前』

「ええ。仮にもこれから一年相棒になるわけですし、いつまでも仮聖霊と呼ぶのも大変なので。・・・あぁ、でももしかして、ファンタジーお約束の真名とか言霊云々が絡んでくるんでしょうか?」

『誓約をすればな。とは言え、俺は期間限定で作られた存在だから、もともと名はないのだが』

「ないのですか・・・困りましたね。仮聖霊って言いづらいんですよ。特に急ぐような場面だと不便ですし。・・・私が付けちゃってもいいですか?便宜上ということで」

『ふむ・・・まあ、仮の名ということであれば問題ないだろう。かのお方への誓約でなければ問題ない』

「“監督”に誓約することが本来の名付けになるんですか・・・この世界は深いですね。とにかく、仮の名ならば私が名付けて良いんですね?」

『ああ、構わん。・・・が、あまり奇妙なものはご免だ』

昨日雲雀が口にしていた知人らしき人物の呼び名――裸王だとかケンタ馬など――を思いだし、注文を付ける仮聖霊。

そんな仮聖霊の内心を知ってか知らずか、「分かってますよ」と返した雲雀は、数秒悩むようなそぶりを見せ、

「では、セヴィというのはどうでしょうか?本当はセヴォフタルタというのですけど」

大熾天使と言われている天使の名前なんですけどね。まあ、創作の中のですが。

「一応、正式な聖書の中に出てくるものではないので、万が一天使が存在しても被らないと思いますし」

『ふむ・・・創作とはいえ、天使の名前とは大層な名を付けられたな。まあ裸王などと呼ばれるよりは遥かにマシだから良いだろう』

あれはネタの上に自己申告によるものです、などと軽口を交わしつつ、仮聖霊改めセヴィと共に午前の予定そうと、今度こそ席を立った。



「川魚でうまく干物ができるのか・・・?」

見事前日の仕掛け――沈めた木の枝で木陰をつくり、魚を集めるだけのもの――で捕まえた魚で昼食を終えたあと、余った魚を塩水で洗ってから洞窟の外に天日干する。

海水魚では普通の行動だが、淡水魚でどうなるのか。以前やったのは無人島でのサバイバルキャンプでの事なので、川魚では初体験である。

「まあ同じ魚ではあるのだし、問題はないだろう。あとは魚だけではなく、肉も欲しいところだが・・・これはもう少し道具を探してからだな」

5枚の魚を干し終えると、少し離れた場所に干してある布団と毛布の所へと近寄る。

そばに置いておいた葉を落とした木の枝を持つと、バンバンと埃を払い叩き、その後裏返しに干しなおす。

「先住者が居なくなってどれくらい経つのか知りませんが、意外と状態が良いですよね。虫食いのひとつでもあるかと思っていたんですが」

『固定化の魔法がかかってるんだろう。それなりに腕の立つ魔術師なら簡単な魔法だしな』

「固定化、ですか?」

『簡単に言えば品質を保持する為の魔法だ。時空間魔法の一種だが、物体を時間の経過から切り離すことで品質を保持する。

まあ、衝撃による破損は防げんし、生きているものには使えんがな』

ちなみに、洞窟内の道具のほとんどが劣化していないのもその為だ。

「はあ・・・便利なものがあるんですね。というか、かなり便利そうですねそれ。もしかして、食料とかにも使えますか?それ」

『ああ。確か使えたはずだ』

「ああ!それはぜひ覚えなければ!!そうすればわざわざ干物を作る必要もないですし、山菜もその都度新鮮なものを取りに行く必要もないですね!!」

あ、でも味のバリエーションのために、覚えてもたぶん多少は作ると思いますけど。

『その前にまず魔法を覚えろ。腕の立つ魔術師には簡単でも、初心者魔法も使えない奴には十分高レヴェルだぞ』

「分かっています。何事も基礎が大事ですから」

基礎をおろそかにするほど馬鹿じゃありません。

そう言いつつ布団に続き毛布も裏返すと、

「さて。では掃除の続きをしますか!」

魚が使っていた桶の塩水を洞窟から流れ出る小川に捨てると、からの桶を片手に洞窟内へと戻っていった。



相棒の名前は一応某少女漫画ではなく、その元となった有名な偽書から取ってます。

まあ、それを知った過程は漫画なんですが・・・

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