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何でもない男の話  作者: 雲太
1章 何でもない男の誕生した話
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2話 まあ、確かにその通りだ。だから、別にそのことを言われても腹が立つわけではないんだが、やはりハッキリ断言されると色々と複雑なものがあるな。

今回は医学的な問題が出ていますが、決して誹謗中傷のつもりでは描いてはおりません。ご了承ください。

「つまり、この世界は私の認識の中にある一般的なファンタジー世界と同様と思って問題ないということですね?魔法があり、亜人があり、魔物があり、王族や貴族や冒険者がある、と」

『ああ。細かい修正個所はあるだろうが、お前が知るファンタジー小説やRPGと同じようなものだと考えて構わんだろう』

冷めてしまったお茶を飲みつつ――用意されていたティーセットに入っていた――基本事項を確認する雲雀。

「・・・さっきから疑問なのですが、あなたは何故こちらの知識を持っているのでしょうか?“監督”ですら怪しい様子なのですが」

“監督”――“神”自身からの希望により呼び方を変えた。存在の大きさ故に、直接的表現は避ける方が望ましいそうだ――は“世界の管理者”という立場を思えば、ある程度こちらの知識を持っているのは分かるのだが、その“監督”によって作られたこの存在が、何故“監督”以上に知識を持っているのだろうか?

(その者はお主の案内役だからのう。意思疎通を円滑にできるように、お主の知識の一部を用いて存在を形成した。それ故に、我以上にお主のいた世界の知識を持っておるのじゃ)


もっとも、用いたのは「知識」であって「記憶」ではないので、雲雀のプライベートについて理解しているという事ではないらしい。


「なるほど。ところで仮聖霊というのはどういうことなのでしょうか?何やら中途半端な印象を受けるのですが」

何故「聖霊」の前に「仮」が付く?「亜」が付くというのなら、まだ無駄なファンタジー知識から理解もできるのだが・・・。

(それはその者が、お主が力を付ける間だけの存在だからのう)

『お前に与えられたかのお方の加護は一年。俺はその間だけ存在するように創られた案内役だからな。言うなれば期間限定の聖霊だ。だから「仮」聖霊なのだ』

「・・それはつまり、寿命が一年ということですか?何故そんな期間が限定されるんです?」

(我の力により創り出した者だからじゃ。我が世界に与える影響は可能な限り少なくせねばならぬ)

『それに本来、聖霊というのは精霊が長い時を経ることで新たな存在として転生することで誕生する。俺のように初めから聖霊として特定の存在の為に創られるなんてことはあり得ないんだ』

世界のバランスを保つためと言われてしまえば、それ以上文句を言うことはできない。

「正直納得できない部分が多々あるのですが。取り敢えずは了解しましょう。それから、また一つ疑問が出ました。私に付けられた加護とは何でしょう?」

世界への影響を控えるというのなら、“監督”直々の力というのは考え難い。

『この洞窟を中心に半径1㎞に張られた魔物除けの結界の事だ。今のお前が魔物と遭遇して生き延びるのは難しいのでな』

「ふむ、確かにそうですね。イノシシくらいならともかく、熊レベルの猛獣となると今の私では対応できません」

現状の武器はサバイバルナイフと多機能ナイフだけ。まあ、少し覗いた小屋の中や工房空間には他にも武器になりそうなものはあったが、練習もなく使いこなせるはずもない。

「要するに、一年間だけセーフティーエリアがあるから、その間に力をつけろ、と」

(そういうことじゃ。そこには色々あるからのう。それを利用すればそれなりに力は得られよう。それが可能な身体にもしておいたからのう)

「・・・その言い方だと、単純に外見だけの事ではないようですね」

(うむ。可能性の限界を取り除いただけだがの。これはまあ、単純についでのようなものじゃ)

“監督”曰く、これまでの神隠し被害者たちの事もあったので、可能な限り万全の準備――魔術の一時附与とか、肉体強化とか――をしていたらしい。しかし跳ばされたのが雲雀だった為、準備していた力がかなり余ってしまったそうだ。


「まあ元の世界だったら、半年くらい山の中に放り出されても生きていく自信ありますからね、私」


それもこれも全て周りにいた人間の影響だが。今時、10代で文字通り一ヶ月間完全サバイバル生活を送ったことのある人間は、そうはいないと思う。

(せっかく用意した力。無駄にするのも問題故、お主の中から限界を取り払うことに使ったのじゃ)

『つまり、お前はこれから学べば学ぶだけ、あらゆることが身に付くということだ』

RPGで言うところの限界点破棄というやつらしい。

(まあさすがに、初めから「あらゆる魔術を使える」などという、ちーと仕様はできんがのう)

「いや。普通に十分チートだろう。それで」

思わず素の口調になるが、それは仕方がないだろう。元々一般人に比べ生存能力が高いのだ。鍛えれば鍛えるだけ成長するなど、どれだけである。

「正直、そこまでしてもらったとなると気が引けますね。私としては、外見だけで十分感謝しているのですが」

骨ばった指に、男らしく鍛えられた体、引き締まった下肢を見ながら雲雀は言う。

(また不可思議なことを言う。お主の姿に関しては、我は何一つしておらぬ。歪みが修正されるのは自然の事。そうでなければ、この世界に来れぬではないか)

外見についてはノータッチだと語る“監督”に雲雀は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐにどこか自嘲するように笑った。

「なるほど・・・歪みは修正される、ですか。たしかに、歪ではあったでしょうからね」

『何だ?何か不都合でもあったのか?』

不思議そうに尋ねる仮聖霊の声に、雲雀は被りを振る。

「いいえ。むしろ好都合ですよ。手術などという中途半端な治療を受けずに済みましたから」

そして吹っ切れたような表情を浮かべると、


「これでやっと、本来の“男の身体”に戻れました」


清々しく笑った。





性分化疾患という言葉を聞いたことがあるだろうか。


本来、男性か女性のどちらかの性別で生まれてくるはずが、どちらとも取れない曖昧な状態で生まれてくる疾患の事である。


近年では小説やアニメにおいて両性具有などと言う形で書かれることがあるが、実際にはそんなケースはほぼないと言って良い。

性分化疾患というのは様々な原因によって起きる疾患の総称であり、完全な両性具有などというのはその中のごく一部のレアケースでしかないのである。



ではどのようなケースがあるのかと言えば、大きく分ければ以下のパターンだろう。


まず、外見的に性別が判断不能なケース。

これは外性器が男性でも女性でもないという、あまりにも分かりやすい疾患である為、生まれてすぐそうだと判断できる。


次に、染色体数の異常によって生まれるケース。

XXYやXXXYなど、X染色体が通常より多い為、未熟ながら男性器と女性器の両方を持っていたり、外性器はどちらか一方だが未成熟だったり、ホルモンバランスの問題で身体に不調が出たりと様々な症状が出ることが多いという。

ちなみにアニメなどで言う両性具有とは、おそらくこのケースを指しているものと思われる。


最後に、外見と染色体が一致していないケース。

これは染色体の機能不全などにより、胎児の段階において本来分泌される男性or女性ホルモンが不足してしまい、染色体は男性だが肉体としては女性、もしくは染色体は女性だが肉体は男性として生まれるケースだ。

このケースの場合、外見的にはどちらか一方の性として産まれるので、遺伝子検査をしなければ判明しない。その為、稀にだがある段階までその事実に気づかず、育てられる場合がある。

なおこのケースの場合、幼いころは問題ないのだが、第二次成長期に入ると性ホルモンの分泌により遺伝子学上の性別方向に成長が現れるため、その段階でようやく気付くということがあるという。


ちなみにどのケースにおいても、自己認識する性別と身体的な性別は別の問題である。



さて。長々と書いて、それで結局何が言いたいのかと言えば。



鳥谷雲雀という人物は。


もとの世界において。


自己認識性が男性の。




最後のケースの性分化疾患患者だった、ということである。



一応、Wikiを参照して自分なりにまとめた内容を元にしております。が、もしかしたら誤っている部分もあるかもしれません。

また、作者は決して同じような症状の方を差別や誹謗中傷する意図はありませんので、お読みになった方も決してそのようなことが無いようにお願いいたします。

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