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検索結果0の答え 1話

 

  俺の周りにはすごく良く出来たヤツばかりで。

 凡人な俺は、いつもいつも置いてかれて。

 そのくせ、何をしようともしなかった俺は、ただただ時間が過ぎていき。

 何かしら、みんな、輝くものを持っていた。

 そういうものを、俺も欲しい。ただ、漠然とそう思っていた。

 その『何か』が果たしてなんなのか。まだ分からないけど。

 それひとつあれば生きてけるような何か、手に入れたいと思った。


 


  田舎の冬は寒い。

 かといって夏は夏で暑い。

 それはここ、日本という国に四季というものがあるからであって、我々日本人はその四季というものを楽しむ義務があると思う。それが風情ってやつだ。

 とまあ、長い前置きは置いておいて。

 季節は秋。

 ・・・じゃあなんで冬の話を冒頭に出したかって?そりゃ、単に田舎の冬は寒いんだよアピールしたかっただけですよ。ちなみに、都会だろうと、冬は寒いもんは寒い。

 朝、起きようとすると暖まった布団の中からなかなか出たくなくなる。

 かといって、もう既に完全に目は覚めてしまっているし、目覚まし時計も鳴っているので仕方なく起きるわけだ。よし、今日もいつもどおりの朝だ。

 とりあえず昨日、夜遅くまで健全な(ほんと健全な、いや本当に)サイト巡回をして、そのまま寝落ちしてしまったようで、PCの電源が入ったままになっていた。とりあえずシャットダウンする。

 「ふぁ~あ・・・」

 寝巻きのまま、居間へ行くとそこには母の姿しかなかった。

 「あれ・・・美羽みうの奴は部活か・・・」

 「アンタと違ってあの子は早起きして出て行ったよ・・・ったく、お兄ちゃんなんだからもっとシャキッとしたらどうなの?これじゃ遅刻ぎりぎりじゃない」

 ・・・ああ、朝早くからこんな小言ばっか聞いてたら、今日という素晴らしい一日のスタートに早くも暗雲だ。

 「遅刻ぎりぎりってこたぁ遅刻はしてないんだし、いいだろー。それに美羽のやつは確かによ~くできた自慢の妹だよ。だから俺は兄としてあの子の反面教師になってやってるっていう」

 「何が反面教師だよ、一端に難しい言葉使うようになって。いいから早く朝ごはん食べて着替えて学校行く。本当に遅刻しても知らないわよ・・・。アタシャこの後は店の準備しなくちゃいけないんだからね」

 「はいはい、わかってるっての・・・。あ、今日は朝いらねぇや。食ってたらたぶん間に合わない」

 「・・・だったらもっと早く起きればいいのにねぇ」

 「それができたら苦労せんわ。睡眠は人間の三大欲求やっちゅーに」

 俺はそう言いながらお茶を啜って着替えをしに部屋へ戻った。

 「しっかし寒いな・・・」

 カイロが役立つ季節になってきた。

 どんどん変化してく環境。俺も高校2年生だったりする。

 この間、高校入学したと思ったらコレだよ。

 ほんと、時の流れってのは残酷だぜ・・・。

 

  ふぅ・・・今日も間に合ったみたいだ。

 「よう、じゅん!今日もシケたつらしてんなぁ!人類は皆、進化してるんだ。そんなんじゃお前、サルになっちまうぞ?」

 教室に入るなり声をかけられた。

 「・・・お前は相変わらずで安心したぜ」

 コイツの名前は高城たかしろ甲次こうじ

 人間のクズみたいな奴だが俺の数少ない友達である。ついでに言えば俺自身もそんなに対してコイツと変わらないくらいにはクズだとも思う。クズ同士仲良くしよーぜ。

 突然だが俺は友達が少ないが、俺はそのこと自体は別にかまわないと思っている。

 友達がいっぱいいるってのはたしかにそのコミュニケーション能力の高さはすごいとは思うけども、それはお酒に強いとかそういうことと同じようなもんで自慢できるもんじゃあないと思うのだ。

 千人の友を持つものは一人の友もいないも同じ、なーんて言葉があるように、だ。

 友達の多さをステータスにしてるようなやつぁ、正直ろくでもないとさえ思う。

 それに友達、なんて聞こえはいいが、結局のところお互い気の遣い合いで、タダ疲れるだけの気もする。

 こうやって特定の奴らとほどほどに仲良く学校生活を送っていくのが俺には性に合っている。

 広く浅く、よりは狭く中間に、が俺の交友関係でのスタンスだ。

 なーんて、自分でも少し冷めてるなーとは思うけどよ。そういう性分なんです。

 「相変わらずって何だよ、相変わらずって。んな簡単に1日や2日で変わるほど人間簡単じゃありませんってばよ」

 「せやな」

 適当に相槌をうつ俺。

 「そういえばこの間言ってたエロゲあんじゃん?あれ、地雷だったわ」

 こんな往来で、こいつは結構な大声で言った。

 「・・・お前はソレさえなければモテるだろうになー」

 この甲次、顔はそこそこいいのに、モロなオタクなのですっかりモテなかったりする。

 オタクというものは得てして偏見で見られがちだ。最近じゃ、オタクでもモテるやつはいるー、とかよく聞きもするけれど、ここまでコアなヤツだとそうもいかないわけで。

 まったくもったいないことこのうえない。そういう趣味を持っていることは、スキなのだから仕方ないとしても、もう少し、こう表面上だけでも隠せばいいものを・・・。

 コイツはその趣味を前面に押し出しすぎ。カバンとかアニメキャラがプリントされた奴だったりするし。キーホルダーもジャラジャラついとる。ちなみに毎朝、痛チャリで登校してくるのも原因の一端だろう。というか盗まれたりとかしそうで俺だったら絶対に学校に乗ってこないと思う。ちなみにこいつの家には抱き枕カバーがたまに干してあったりする。ご近所の視線が怖くないのだろうか。いや、こいつには愚問か。

 良い意味でも悪い意味でも、こいつは他に流されない男だよ。

 「何いってんだよ。もしも二次元美少女達がいなくなったら俺はこの先、何を糧に生きていけばいいんだよ」

 「何か違う趣味でも見つければいいだろう」

 「・・・はぁ。お前、わかってないな。・・・それができたらとっくにやってるって。でもこればかりはどうしようもねえ。なんせ生きがいなんだからな。・・・それにこのご時世、辛い社会の中で生きていくにはこういう癒しの存在がだな」

 だ、そうだ。長くなりそうなので話を中断させるために話を振ってみる。

 「ところでお前、そういうゲームどこで買ってるんだ?」

 ここは田舎だし、取り扱っている店も、俺の知る限りでは、ない。

 もっとも、あまり興味のある分野でもないし、そこまで念入りに見てなかっただけで、近くの店とかにもあるのかもな。

 「ふふん、今はネットという文明の利器があるのだよ?キミィ・・・。店頭で買うだけがエロゲじゃないのだ!」ビシッ!と俺に指をつきつける。

 カッコつけて言ったところ悪いが、ぜんぜんカッコ良くなかった。

 「まあそのお店限定の予約特典~とか手に入らないのは多少痛いけどよ」

 知ったこっちゃねえよ。

 「にしても、それでよくモテたいだの言うよな・・・お前」

 「フフフ・・・今は主人公だってエロゲをする時代だぜ?」

 「エロゲの主人公だろ、それ」

 ところでライトノベルの主人公にも、そんな設定のやつがいた気もする。

 そいつもハーレムだのなんだの言っていたな・・・。

 でもまあ、そいつの場合はコイツと違って、いろいろなモンを抱えて生きているのだが・・・。コイツはそんな様子はこれっぽっちもないな。

 「お前って悩みとかあんの?」俺が聞くとやつはたいして悩んでるそぶりもなく即答した。

 「あるある~!!今月は豊作でどのゲーム買うか迷いまくりだぜ!!」

 「うん・・・まあ・・・いいんじゃないかな」

 悩みは人それぞれっていうしな。


  学校が終わり、俺は部活を励む。

 何を隠そう、俺は帰宅部なのである!!!

 というわけで早々と学校を立ち去ろう。

 「近藤こんどうっ!今日という今日は部活、出てもらいますからねっ!」

 「げっ・・・!見つからないようにコソコソ移動してたのになぜ・・・!」

 他のクラスのクラス委員長(何組かは覚えてないけど)の冬樹(ふゆき) (みかど)と、その幼馴染の近藤 涼太りょうたが何やら騒いでいた。

 あの二人は本当に仲が良いな・・・。ったく、うらやましいかぎりだね。

 委員長は外見は美人。長い髪に形の整った顔をしていて体系も出るところは出ている。

 それでいて勉強もできちゃうんだから本当に世界は不平等だと思う。

 なんでそんなこと知ってるのかと言われると、甲次が聞いてもいないのに教えてくれたからだ。あいつは某伝説的ギャルゲーにおける、やたらと女生徒に詳しい友人キャラのような男になりたいと、常日頃から女生徒の3サイズやら趣味・好きなものなどをリサーチしている。

 まあ、うらやましいってのは、別に冬樹に限った話じゃないけど。

 ・・・そんな子と仲の良い近藤も。

 「はぁ・・・」

 俺は溜息をつき、早々と教室から出ようとすると。

 「なあ準、今日オレんち寄ってかね?お前にぜひともやらせたいゲームがあんだよ」

 ・・・近藤にはあんな可愛い子で、俺にはコレとか。

 「それ、18禁か?」

 「いーや、ギャルゲーだから15禁。お前ゲームとかもってねぇからハードごと貸してやんよ」

 「いや、いいって別に。そこまでしてやりたくねぇよ」

 「そう言わずに!!ほんとコレ泣けるから!マジこれやった後オレなんて普通に空気吸えることに感謝しちゃったくらいだぜ!?ああ・・・生きてるって素晴らしい・・・って」

 コイツ、粘るな・・・。

 「今でも充分に生きてることに感謝してるからべつに」

 「もっと感謝できる」

 「いや、コレ以上にないくらいに生きることに感謝してっから、俺。朝、起きるたびに生んでくれたことに感謝して母に土下座してるから俺」

 「そうか・・・そこまで言うんなら無理にとは言わねぇよ」

 ふぅ・・・ようやく引き下がってくれたか。

 「チッ!これでまた信者が増えると思ってたのによぅ!」

 「もはや宗教だな・・・」

 熱烈なファンの行動とか見ると、あながち間違ってないのかも。

 「でも気が向いたらやってくれよ、真剣マジで」

 「あいよ。むいたらな」

 まあそんな日は来ないだろうけどさ。

 コイツも、そういう趣味を持った奴らなんていくらでもいるんだし、そういうやつらと話してればいいのに、と思う。

 前にそれを言ったら、

 『オレはお前と話をしたいんだよ』

 と、なんか悪寒を感じるセリフを言われた。

 俺にそっちのけはないぜ。

 「俺にそっちのけはないぜ」

 「え!お前、アンダーヘアー生えてねえの!?」

 「実は・・・ってこの歳でさすがにツルツルなわけねぇだろ」

 「だよねー」

 というか、前に学校で旅行行ったときに同じ風呂入っただろうに。

 って感じでしばらく話してから帰った。

 

 「少し遅くなっちまったかな・・・」

 話をしすぎてしまった。

 いそいで家に帰らねば。

 「ん・・・?」

 帰り道でいつも通る公園。

 夕日が差し込むそこに、それはいた。

 キィコ、キィコ、と、あのどこか懐かしいような音。

 ブランコを美少女が静かに漕いでいる。

 (一人で・・・ブランコ・・・?)

 ひとりポツンと誰もいない公園でブランコを漕ぐ少女。

 それを見て俺は・・・なんというか。

 その姿があまりにも___寂しそうに見えて。

 俺はなぜか、その子の元へと足がむかっていた。

 「・・・?」

 俺に気づいたその子がブランコを漕ぐのをやめる。

 そしてこっちを黙って見つめてきた。

 長い黒髪。とてもキレイだった。ウチの制服を着ているし同じ学校なのか・・・。

 それでいてキレイな瞳をしていた。

 吸い込まれそうな瞳、とかいうのはこういうのを言うのか・・・。

 一瞬、こんなにキレイだったら、モテるんだろうなー、と下世話なことを考えてしまった。

 などと、しばらくガン見してしまい。

 ふと、気まずくなって、とりあえず声を発さないと、と思い声をかけた。

 「君・・・一人なの?」

 俺が問いかけると彼女は煩わしそうに言った。

 「・・・そうよ」

 とてもキレイな声をしていた。

 透き通る声、とかいうのはこういうのをいうんだろうな。

 「なんでブランコ漕いでるんだ?」

 俺が問うと、

 「楽しいから」

 抑揚のない声でそう言う。

 「えっと・・・。ひとりで漕いで、楽しいか?」

 「ええ」

 即答。

 (やべぇ・・・なんかすごい子に話しかけちまったかも)

 いつもならこんなこと、しないのにな。知らない奴に声かけるなんてこと。

 そうでなくとも、人間関係には消極的な俺だというのに、ましてやそれが異性の知らないヤツと来た。自分でも驚きです。

 とはいえ・・・。

 それでもなぜか声をかけてしまった。

 いったん声をかけてしまったのだから、話を続けないと!という脅迫概念。

 とりあえず話題、話題。

 「君、何年生?」

 「さっきから馴れ馴れしいわね、チェリーボーイ」

 ・・・。

 むむ?

 「・・・えっと、聞き間違えかな?今、なんて」

 「馴れ馴れしいと言っているのよ、チェリーボーイ」

 ・・・へへへ。

 母さん、ボク、初対面の女の子に童貞だといわれました。

 事実なので否定できないのが悔しいです。あと、どうして童貞だと思われないようなイケメンに生んでくださらなかったのでしょうか。私は悔しいです。ていうか私はそんなに童貞顔なのでしょうか。一目見ただけで判断つくくらいに。

 「えっと・・・気分を悪くしたなら悪かった!ただ、一人でブランコ漕いでるのみて・・・その・・・さ、寂しそうに見えたから・・・けしてナンパとかじゃなく!」

 「私が・・・寂しい・・・?」

 やべ、触れちゃいけないとこだったんだろうか・・・。

 たしかに彼女の表情が変わるのが見えた。感情までは読めないが。

 人にはそれぞれトラウマとかあるし、気軽に言っていいことと悪いことがある。つか、一人が好きなだけなのかもしれないし。

 「寂しい・・・そう・・・そう見えたのね」

 またその子はどこか寂しそうな顔をした。

 気のせいかもしれない。俺のただの思い込みかも。だけど。

 それがなぜだか・・・放っておけない感じで。

 「お、俺が!」

 気づいたときには大声を出してしまっていた。

 ええい、ままよっ!

 


 「俺が、いっしょにブランコ漕いでやんよ!!」


 

 ・・・言った。

 言ってから後悔した。なに言ってんだ、俺。

 「・・・」

 あー、完全に無言だよ、ていうか当たり前だよね、うん。

 てか、やんよって。なんだよ、漕いでやんよって。

 やっちまったなぁ・・・初対面の女の子に。しかもクール美人に。

 普通、ないもん。初対面の女の子にブランコ漕いでやんよとか。ないもん。

 これは後々に語り継がれていくであろう俺の人生の汚点だ・・・。ほんと、なんでこんなことをしてしまったんだ・・・。

 「・・・ふふ」

 「え・・・?」

 彼女は、笑っていた。

 「はははは!!・・・あなた、おもしろいのね」

 「・・・」

 なんていうか。

 彼女の笑顔を見て。

 俺は・・・良かった、って思った。

 声かけてよかった。

 この公園を通りかかってよかった。

 帰宅部でよかった。

 本当によかった。

 ただただよかったなぁ、って気持ちでいっぱいになった。

 「ただのチェリーじゃないみたいね」

 「チェリーは余計だ!」

 まあ、何はともあれ。

 彼女が笑ってくれて、本当に良かったと思った。

 「ねぇ、あなた名前は?」

 「俺、森田もりたじゅん。昇竜の2年。お前は?」

 「私は霧崎きりさきまことよ。同じ2年生ね」

 「そうか・・・同じ学年だったとはな。俺、お前のところ知らなかった」

 「私もあなたのようなチェリー君知らなかったわよ。・・・というか、当然といえば当然なのだけども」

 こいつ、またチェリーって・・・。

 「当然って・・・なんでだ?」

 「だって私、学校いってないし」

 「・・・は?」

 「二度も言わせないで。一度で聞けないとか、本当に愚図なのね」

 「いやいやいやいや!そうじゃなくて!!・・・学校行ってないって・・・。なんで?」

 俺が聞くとケロッと

 「なんでって、行く必要性がないからよ」

 そう答えた。

 「・・・いや、まあ確かに義務教育じゃなし、行かなくてもそれは個人の自由だとは思うが・・・。お前、昇竜の生徒なんだろ?せっかく学校入ったんだから通わないとだめだろ」

 「初対面のあなたにとやかく言われる筋合いはないわよ」

 む・・・カチンときたぞ。

 「それでも行かなくちゃいけないもんだろ、学校は」

 「あんなつまらないところ、行く意味がないって言っているの。それにあなたには関係ないことでしょ?」

 むむむ。

 「確かに俺には関係ないかもしれないが・・・。ここで会っちまったってのも何かの縁なんだろうよ。俺はお前を学校に来させるぞ」

 なんか気づくと意地になっていた。

 自分でも自分の行動がよく分からない。なんたって俺は、いきなりこの子に話しかけ、あまつさえ学校へ行かせようなどと考えているのだろうか。

 「へぇ・・・。おもしろいわね。どうやって来させる気なのかしら?」

 誠はブランコから降りて俺の目の前に立った。正面から見るとますますキレイだなおい。

 

 「お前、俺たちの仲間にならないか?」

 

 そういって俺は手を差し出した。

 「・・・俺たち?・・・仲間?」

 「きっと、楽しいと思うぜ。というか、楽しくさせてみせる」

 なぜ、目の前のこの女を仲間に誘ったのか・・・。

 それは自分でも不思議なことだった。

 それでも・・・それでも、俺の仲間になったら楽しくさせてみせる。これは本当に心から言えることだった。

 「・・・ふふ、本当に変な人ね、あなた。・・・準、といったかしら?」

 「おうよ、誠」

 「名前で呼んでいいなんて許可した覚えはないわよ、チェリー」

 「俺が俺に許可した。だからOKだ」

 「・・・どんな理屈よ。・・・まあいいわ、好きに呼んでちょうだい」

 「ああ、そうさせてもらうぜ誠」

 俺は本来、こんなにも初対面の女相手に呼び捨てできるほどの肝は持ち合わせていない。

 だが、こいつの場合は、そんな遠慮とか以前に俺のことをチェリー呼ばわりだからな。なんだか緊張もくそもなかった。

 「いいわ」

 「ん?」

 「あなたの仲間になってあげると言っているの」

 そう言って、ようやく出しっぱなしにしてたので所在なさげだった手をとってくれた。

 ・・・と思ったら俺の横を通り過ぎ、公園の出口へとことこと歩いていってしまった。

 「それじゃ」

 「おい!・・・どこに行くんだ?」

 「どこって・・・家だけど?」

 そう言いながらも振り返りもしない誠。

 なんというか、本当にあれだな、この子・・・。

 「あ、明日!!」

 俺は咄嗟に声を張り上げた。

 すると誠はようやくこちらを振り向いてくれた。

 「明日、朝の8時にここで!ま、待ってるからな!」

 「・・・」

 一瞥すると誠はまた入り口の方へと歩いていってしまった。

 しかし、今度は

 「・・・わかったわ」

 そう、小さいながらもつぶやくのが聞き取れた。

 

 俺は家に帰ると、さっそく着替えて店番をする。

 この時間帯はまだ客数が少なく、俺でもちゃんと店番くらいはできていた。

 まあこんくらいの親孝行はしてやんないとね。

 すると、店の入り口からさっそくお客様が顔を出した。

 「へい、らっしゃい」

 「よーう・・・今日も未来の大先生が来てやったぞー」

 この人は頭取とうどり平八へいはち

 近所に住んでいて昔からちょっとした仲だったりする。

 そしてこの前めでたく二十歳を迎えてたまにウチで酒を飲んでいく。

 「はぁ・・・そろそろ俺も現実を見る頃なのかねー」

 「どうしたんです?大先生らしくもない・・・」

 おいおい、席に着くなりいきなりブルーだな・・・。

 「いやー、俺もさ、もう二十だろ?そろそろ夢とか追ってる場合じゃないのかなーって」

 平八さんは昔からの夢であった小説家を目指している。

 夢を追っていると言えば聞こえはいいが、用は無職なのだ。

 んで今はアルバイトでなんとか生計を保ってるらしい・・・。

 こんなでも、超エリート校の出身で、俺も昔は尊敬してたんだがなー・・・。

 どこで間違えたんだか、急に小説家なんてものを目指すようになって・・・。

 本来なら医大へ行っていたところを、みすみす棒に振って極貧生活である。

 「それでも、やっぱり夢を追ってるっての、カッコ良いとは思いますけどねー」

 「そうかぁ?・・・夢を追うなんて聞こえはいいが、ぶっちゃけガキのやることだぜ?いつまでも現実見ないなんてのは」

 「大先生ならそんな現実も打ち砕いてしまうことでしょう。応援してますよ、俺は」

 この人はいつまでも俺の憧れの人。

 その人が夢を追うってんなら全力で応援するまでさ。

 「・・・ふぅ。そうだな。ハタチで夢をあきらめるなんざ早すぎるよな・・・よし、お前のおかげで元気でたよ。おやっさんにもよろしく言っておいてくれ」

 「あいよ」

 おやっさんというのは、俺の親父のこと。

 今は腰を悪くしちまって奥の部屋で寝てる。んで俺が代わりに店番ってわけだ。

 「また飲みたくなったらウチに来てくださいね。俺にも愚痴聞くくらいはできますから」

 「はは・・・しっかりしてるなぁお前は。また来るよ、酔えない人生なんてつまらないもんなー」

 ついこの間に酒の味を覚えたばっかだってのに、もう達観したこと言ってらっしゃる。

 頑張れ、二十代!!

 「また平八くんかい?」

 奥から我が母上が出てきた。

 さっきまで店裏で倉庫の整理をしてらっしゃっていたようで、なんだか少し息があがっていた。

 「ああ、そうだよ」

 「・・・あの子もいろいろと大変だろうからねー。・・・それで、まゆちゃんとは仲良くしてるのかしら・・・」

 「さぁ・・・どうだろうなー」

 まゆちゃんとは平八さんの妹だ。

 歳は俺と同い年。

 平八さんとは・・・まあ色々とあったんだな、これが。

 その話はまたいずれってことで。

 

 「ただいまー」

 「ん、おかえり」

 しばらくすると妹の美羽みうが帰ってきた。

 美羽はテニス部に入っており、たまにこうして部活で遅れることがあるから、帰宅部で絶賛放課後暇を持て余し中の俺がこうして代わりに店番をすることがあるのだ。

 母は昼間、店を切り盛りしている代わりにこうやって、あいてる時間はなるべく俺たちが店を手伝うようにしている。

 なに、これも社会修行の一環さ。

 「ありがとう兄さん。今日は頭取さん来ました?」

 「ああ、さっき帰ってったよ。・・・あの人もいろいろと大変だなー」

 「ふふ・・・兄さん、頭取さんのところ好きでしたもんね」

 「おう。俺は夢を追う奴のことは基本的に好きだぜ。なんていうか、こう頑張ってる姿が俺に力をくれる」

 自分で自分がクズだと認識している俺には、あのひた向きさがまぶしかったりする。

 「兄さんは夢とかってないんですか?」

 「ん・・・俺の夢・・・かぁ」

 そんなもの考えたこともなかったなぁー・・・。

 でもまあ、高校二年生の秋。そろそろ考える季節なのかもな。

 「夢ぇ?そんなもん、どっかに落っことしてきちまったよ」

 「まじめに答えてください」

 ・・・むぅ。ちょっとしたユーモアのつもりだったんだけど。

 「うーん・・・今はない、かな。美羽はどうなんだよ」

 「私ですか?・・・私は・・・兄さんといっしょなら・・・」

 「ん?なんか言ったか?」

 最後の部分が聞き取れなかった。

 「いえ!その、看護士になろうかなって思ってます」

 「おお、やっぱり美羽はすごいなー。ちゃんと将来のことも考えてるんだなー」

 さすが俺の妹だ。

 こいつは俺と違って出来がいい。

 俺の自慢の妹だよ、ほんと。

 「それじゃ私、着替えてきますから。兄さんはもう上がっていいですよ」

 「そうか。んじゃ頼むわ」

 俺は美羽とバトンタッチして自分の部屋へ戻った。

 

 暇なので妹の部屋を覗く兄。

 「はいるぞー」ガチャッ

 「キャッ!い、いきなり部屋に入ってこないでください!」

 妹はとてもフランクな格好をしてらっしゃった。

 いつも学校ではキリッとしたクールキャラで通っている妹も家での部屋着はとてもなんだか・・・うん、油断しきってるというか、無防備だ。

 てか、ここ自宅だし、当たり前なんだけど。

 「いいだろ?兄妹なんだし」

 しかもナイスバディでポニーテールだぜ。やっぱりポニーテールは最高だぜ!

 「兄さんは・・・その、私にはドキドキしないんですか?」

 「うん、しない」

 即答である。たしかに可愛いと思うが、しょせん妹である。

 ・・・まあ、まったくドキドキしないっていったら嘘になるけども。それでも、やっぱり妹に欲情しちゃったらなんていうか・・・自分が情けなくない?

 「そうですか・・・」

 ちょっぴり悲しそうにする美羽。・・・くぅ、可愛いじゃねえか!

 「なにしてたんだ?」

 「えっと、リアルグレードのガンダムの仕上げに入ろうとしていたところです」

 「そ、そうか・・・」

 そこには確かにプラモデルと、いろいろな道具一式が広がっていた。

 ・・・何を隠そう、わが妹はガンプラ作りが趣味なのである。

 「私はやると決めたらとことんやる女ですから妥協はしないんです」

 そういって真剣な手つきで作業を開始した。

 ・・・その、床でしゃがみこんでこちらに尻を向けているのでとても魅力的だ。

 妹じゃなかったら襲い掛かってたかもネ。

 「兄さんは何か用事ですか?」

 作業をしながら聞いてくる美羽。

 「いや、暇だったから何してんのかなーって。忙しいんなら、いい」

 「すみません・・・。どうしても今日中に仕上げたいもので・・・。まだ積んであるガンプラもありますし」

 「ああ、邪魔したな」

 「いえ。・・・あ、兄さん、お風呂先にどうぞ」

 「いいのか?お前、部活あって汗かいたんじゃないのか?」

 「そうですけど・・・たぶんプラモに熱中してまた汗かきますので」

 「そうか。んじゃ遠慮なく」

 熱中しすぎだろ、汗かくとか。


 いつもよりも早い、朝の7時40分頃に家を出た俺はまっすぐ昨日の公園へと歩いていた。 

 すると、ヤツは昨日と変わらぬ様子でそこ__つまり誠はブランコを漕いでいた。

 「それ、楽しいのか?」

 「ええ。あなたと話すくらいには」

 誠はこちらにやや少し(本当にちょっぴり)顔を向けたと思うと、ブランコから降りてこちらへ歩いてきた。

 「そういえばブランコ漕ぐの楽しいって昨日言ってたもんな。ってことは何、誠、俺と話すの楽しいの!?まじで?やっほーい!!」

 「朝からテンションがウザいわ」

 へへへ、その毒舌も屈折した愛情表現だと思えばなんのその。

 それに、あの昨日の誠の寂しそうな姿を見て・・・少しでも俺が元気にしてやれたら、それってかなりハッピーじゃね?と思ったり。

 「しかし、それにしても・・・来てくれてよかったよ」

 「? ・・・あなたが言ったんじゃない、朝ここに来いって」

 「そうだけど・・・でも、ちゃんと来てくれた。それがうれしい」

 「・・・ふん。約束くらい、ちゃんと守るわよ。それともあなたは私が来ないとでも思ったの?あなたがここに来いって言ったくせに」

 「うーん、と。・・・5割くらい?」

 「半分じゃないの・・・あなたの私に対する信用はその程度なのね。まあ私があなたに対する信用度はその5分の1にも満たないけれど」

 あいかわらず毒しか吐かない誠。でも相変わらず顔は可愛いので文句も言えません。なにぶんチェリーなもので・・・。

 「まあ、これから信頼されたり、信頼してけばいいさ。・・・だろ?」

 「私があなたを信頼?・・・はっ」

 鼻で笑われた。

 でもなんだかんだ約束どおりに来てくれて、しかもこうして話をしてくれている時点でなんだかこの毒舌も可愛いものに思えてしまう。あれですよ、照れ隠し。

 「もうっ!照れ屋さんなんだからんっ♪」

 「キモい」

 そんなわけで俺たちはとりあえず学校まで行くことにした。

 

 「ところで・・・仲間になる、とは言ったけれど、私、これからどこへ連れて行かれるの?」

 「学校」

 俺たちは、俺が先頭を歩き、その後に誠がついてくる形で歩いていた。

 「それは方向を見れば分かるわ。そうじゃなくて『あなたの仲間』というのは一体、何を指しているのと聞いているの」

 「それはまあ・・・行けばわかる」

 ということで校門へ到達。そのまま校舎に入って上へ上へ。

 「・・・ここは、普段使われていない教室ばかり並んでいる・・・こんなところへ一体なんの・・・」

 「へぇー、普段来てなくとも、そのくらいのことは分かるんだな」

 よし、ついた。

 俺が立ち止まると、誠も立ち止まり、教室ごと廊下に掛けられているプレートを見た。

 「ここ・・・資料室?」

 「の、となり」

 「隣・・・ここって・・・」

 そこにあるのはプレートも何もかかっていない、この階の最奥にある教室だ。

 「本当は空き教室だったんだが、今は俺たちが使わせてもらってる。一応、先生に許可は取ってある」

 と言って、俺は教室のドアに手をかける。

 そして、そのまま教室の中へ入り・・・そこに、いつものようにそこらへんにあるイスに座った。

 教室の中は、使われていないイスや机が並んでいて、一応は黒板もあるから授業はできそうな感じ。

 だけど、この学校はそこまで生徒数も多くはないし、そのわりに教室の数は必要十分以上にあるので、こういった空き教室もいくつかある。

 「ようこそ、ここが俺たち、ゲリラ部である放送部の部室だ」

 俺は誠に向き直り。

 「今日から、お前にとっての良き居場所になるよう祈ってるよ」

 「・・・なにそれ。何かの漫画かなにかのセリフ?かっこいいとでも思ってるのかしら」

 ・・・ありゃ? 結構きまったと思ったんだけども。

 ちなみに今のセリフはこの前やったばかりのギャルゲーのセリフだったりする。

 「でも。本当にここがお前にとって、いい居場所になればって思ってるよ」

 それは本心だった。

 「・・・それで?放送部、といったかしら。いったいその部は具体的には何をする部なの?」

 「んー、基本的にはお昼の放送で音楽流したりとか。あと、たまに特番組んだり」

 「この学校には放送委員がなかったかしら?」

 「あれな、うーん・・・。まあ色々あってまともに活動できなくなってさ。それで俺たちが、正式な部でないにしろ代わりに放送委員の仕事をしてるっていうか・・・」

 実はその放送委員が活動できなくなった理由、というのに、ウチがけっこう関わってたりするのだけど・・・まあそんな話は今はいい。

 「そうなの。それで、この部には何人部員がいるの?」

 「五人。男が一人と、あと女四人」

 「・・・つまり部員は六人、と。 ・・・なぜ正式な部にしないの?確かこの学校では部員が5人以上なら正式な部として活動できたはずよ」

 そんなことまで詳細に知ってるんだなー・・・。不登校だからといって侮りすぎたかもしれない。

 「いや、できるにはできるんだけど・・・この部の部長が、『そのほうが色々と都合がいいし、便利だから』って理由で正式な部じゃないんだよ」

 いったい何がどう『都合がよくて』それでいて『便利』なのかは不明だけど。

 ・・・というか考えたくない。なんか悪意っぽいものしか浮かばないから。

 「あなたが部長というわけではないのね。まあ確かに、あなたには平がお似合いだわ」

 「いずれ出世してみせる!」

 夢はでっかく、だ。

 まあ夢なんてものはどっかに落っことしてきちゃったんだけどネ。

 「それで?その部長さん、というのは一体だれ?」

 「うーんと・・・3年の神堂しんどう 紅葉もみじっていうんだけど」

 あいつはこの時間にはまだ学校には来てないだろう・・・というかいつもお昼ごろになってから登校してくるからなぁ。

 「その人とはいったいどういう関係なの、あなた」

 「なんでそんなこと聞くんだよ」

 「あなた、その人の名前をいうとき、普段と少しだけ違った」

 ・・・。

 「へぇ、どんな風に?」

 「なんていうか・・・複雑な感じがしたわ。親しい間柄なのは間違いなさそうね、すくなくとも。でも、それでいて何か含みがある感じ」

 これは末恐ろしい。

 名前を言っただけで、そいつとの関係性をある程度把握できるとは。

 こいつ、刑事とか向いてるんじゃないだろうか。

 それとも、よっぽどわかりやすく顔に出てた、とか? 

 「まあ正解。仲は・・・良いよ。けど彼女ではない」

 「ふぅん。『では』、ってことはなにかしらあるのね」

 これは言っちゃっていいものだろうか。

 今後のこいつにとって、プラスになるようなことでもないし・・・下手したら気をつかわせてしまうかもしれないが・・・。

 でもまあ、なんとなく隠しておくのも気が引ける。ここは言ってしまおう。

 「うん、まあ・・・実は元カノ」

 「元カノって・・・!あ、あなた・・・恋愛経験あったの!?」

 そ、そんなに驚かなくても!

 普段おれのところをチェリー扱いしやがるところからも分かってはいたが・・・こいつ、完全に俺を男としてかなり格が下に見てやがる・・・。

 「まあ、あいつと俺の間にゃ色々あったのよ、色々・・・。その辺はさぐらないでくれ」

 本当に色々あったもんだから、色々めんどくさい。説明とか、まあ色々。

 俺としてもなんというか。いわゆる黒歴史みたいなものだからな。

 「ちなみに元生徒会長」

 「元生徒会長・・・?どこかで聞いた名前だと思っていたけれど・・・まさかあの神堂さんとはね」

 「さすがのお前でも生徒会長くらいは覚えてるのな」

 「ええ、その時はまだここにちゃんと通っていたもの。それにしても、あの神堂紅葉とあなたが交際してたなんて・・・世も末ね」

 「なんだとぉ」

 「だってそうでしょう?冴えないあなたと・・・まさか、成績は学年トップクラス、スポーツ万能で、しかも道場の一人娘とかで、ケンカも男より強い、そして容姿はパーフェクトで、人当たりも良い人気者。まさに文武両道・完全無欠な彼女が、仮にも男女の関係を築いていた時期があったなんて」

 ・・・何もいえない。

 本当に、その通りだったから。

 ほんと、俺にはもったいない女だったよ。今でも、夢だったんじゃないかと思ってるくらいだ。

 「にしても、お前、よくそこまで知ってたな。普通、生徒会長だからってそこまで知ってるもんか?成績トップとか」

 「・・・あなた、本気で言ってるの? 言い方は悪いけど、そんな化け物じみた完全人間が同じ学園にいたら、いやでも目に入るものでしょう?普通に生活してたって耳に入ってくるわ、彼女のことなんて」

 それは・・・そうか。

 確かに、普段からいっしょにいるものだから気にならないだけで、そういうものだろう。

 得てして人は、そういう周りとは違うものに目がいく。

 珍しいもの、受け入れられないものに。

 対象側からしたら、なんと孤独な図なのだろうか。恐怖、尊敬、畏怖・・・どんな風に見られていたとして、そこに対等な関係はまず、ない。

 そういう周りからのプレッシャー・・・少なくともあいつは感じていたのかな。

 「だったら、もっと気遣ってやればよかったな・・・」

 あいつは嫌がったかもしれないけど。

 「それで?ほかの部員は?」

 「ん、ああ。他は男は俺の友達で、高城甲次っていうヤツ。真性のヲタ」

 「あなたの友達、ね。なんだか嫌な予感しかしないわ」

 「そればかりは否定のしようがないな」

 なんていったって、クズの友達はクズと相場が決まっている。

 どのくらいヤツがクズなのかといえば、自分の肉親である妹に対して、「妹キャラは二次元しか認めない!妹は画面越しでのみ光るものぉ!」とかなんとか言って妹を最終的に泣かせてしまうまでに至った男だ。

 俺にも妹がいるが、兄のくせに妹泣かせるとかマジないわー。

 「他の部員は・・・まあ追々ってことで」

 「そう・・・それで、朝は誰もいないのかしら?」

 「ああ、まあやることっていったらお昼の放送くらいなもんだし、基本的には朝に活動はないよ」

 部長がなんせ、朝に学校に来ないもんだからな。

 生徒会長だったころはきちんと来ていたんだけどなー。

 「今日はお昼まで、ちゃんと学校で授業受けてくのか?」

 「・・・嫌」

 ノーセンキュー、らしい。

 「お昼に活動するのでしょう?ならお昼にまた来るわ。どうも学校の空気、というものが嫌いなの、わたし」

 まあ確かに、あまり得意そうではないが・・・人付き合いとか。

 というか、いままで不登校だったのだし、突然学校に来て普通に授業を受けるというのは難しいだろう。

 こうやって、ちゃんと学校まで来てくれたことだけでも十分立派だと思う。

 一度、学校にこなくなってしまうと、それは時が経つにつれ、どんどん、どんどんと行きづらくなっていく。日を増すごとに。

 そういう想いは・・・まあ少なくとも俺にはわかる。

 「そうか・・・でも、いつか、ちゃんと学校、通えるといいな」

 「なっ・・・別にわたしが学校に通おうが、そうでなかろうが関係ないじゃない。クラスだって違うでしょうに」

 「そうでもないだろ。だって俺たち、もう仲間じゃん?」

 我ながら臭いセリフだ・・・。友情ごっこはごめん、みたいなこと言ってたのになー俺。

 なぜだか、こいつといると俺は妙に人間臭くなるようだ。

 「あ、あなた・・・恥ずかしい人ね」

 顔をそむける誠。どうやら照れてる模様。俺も少し、恥ずかしかったのでちょうどよかった。

 「それじゃあ、お昼に来るわ・・・」

 そういって、誠は去っていった。

 さて、少ししたら皆が登校しはじめる時間帯だが・・・とりあえずそれまで何してよっかなー。

 

  お昼。約束通りに部室へと向かう俺に、甲次が厚かましくもとなりに引っ付いて聞いてきた。

 「今日、またしても女の部員が増えるってマジかよ!べつに三次元の女に未練があるわけじゃあないが、またしても美人というのは本当か!!」

 「うん、まあ美人だわな」

 性格抜きで考えれば。

 いや、あれはあれでキャラもたってるし、慣れれば可愛さの要素のひとつともなりえるのかもしれん。キツい言動も、ぜーんぶ、ぜーんぶテレ隠しってことで。

 ガチャッ

 扉を開けるとそこには先客が。

 誠が先に来ていたようだった。

 「よう誠、紹介するよ、こいつが甲次」

 「ちぃーっす!俺、高城甲次っていいます!ところで失礼ながらお聞きしますけどっ、す、スリーサイズ教えてもらっていい?ああ、あと趣味とか!!」

 ・・・さっそく情報集めか。しかも向こうはまだ名前すら言ってないというのに。

 「・・・チェリーの友達、というからどんなものかと思っていたけれど・・・本当に予想を裏切らないものがでてきたわね」

 反論の余地なし。

 「スリーサイズは峰OO子と一緒、趣味は天井のシミの数を数えること」

 「ぜってぇ嘘だろぉ!そんなデカくねえだろっ!」

 「・・・」

 「あ・・・」

 しまった、つい・・・。だ、だけど、ふぅじこちゃぁん並みとか、いくらなんでも・・・。

 「うむ、俺の見立てではCくらいだと見・・・ぐほぇっ!」

 会ってそうそうマッハナックル・コンマゼロを食らう甲次だった。


  「へぇ、誠ちゃんは学校に来てなかったのかー・・・どうりで見かけたことない顔だったと思ったよ。じゃなけりゃこの俺がその顔を忘れるはずないし」

 「さすが美少女ハンター甲次だな」

 「よせよ・・・その名は好きじゃあない」

 逆に好きだったらどうなんだろうとも思う。

 ちなみにこの名は割かし有名で、ちょっとでもキレイなやつを見ると、こうやって根掘り葉掘り聞こうとすることから端を発している。

 三次元の女は~どうたらこうたら~、って言う割には意味もなく女の情報集めたりと、本当によく分からないやつだ。

 一緒にいる俺がいうんだ、本当によくわかんないやつってことで合ってるんだろう。

 「にしても、ここにきて部員増員かーっ!こりゃ、そろそろ物語も中盤に差し掛かってきてマンネリを防ごうと作者必死になってるな!」

 なんの話やねん。

 「結構あるよなー、新キャラ出してなんとか場を持たせようとするの。あとは、安易にバトルへ走ろうとする少年漫画とか」

 「試行錯誤の末の結果にケチをつけるんじゃあない」

 「彼らも彼らなりに必死なのよ」

 誠はどうしてこうも上から目線なのかが気になるところだ。

 「でも結果的にはバトルに方向性変えてから売れたりとかもあるんだよなー。やっぱ少年誌はバトル一強いっきょうかねー」

 「ギャグ漫画でしぶとく連載続いてたりすると応援したくなってくるよな」

 などと、どうでもいい会話をしていると(普通に誠も馴染んでしまったのは、ひとえに甲次のキャラによるものも大きいといえよう)部室に新たな来訪者が。

 「どうもー、今日はクッキー焼いてきたんで、よかったらみんなで食べましょう」

 そう言って入ってきたのは頭取とうどりまゆ。平八さんの妹にして、我らが放送部の部員のひとりでもある。

 「まゆちゃんのクッキー!?ラノベお約束の実はとても食えたものじゃないーとか、そんなオチはないよな!?」

 にしてもこの男、ハイテンションである。

 女の部員が増えてうれしいのはわかるけど・・・はしゃぎすぎだろ。

 「だいじょうぶ・・・だと思いますけど・・・」

 苦笑いするまゆ。とりあえず誠が隣から早く私を紹介しなさいオーラ出してきてるのでそうすることにする。

 「まゆ、紹介するよ。これ、ウチの新しい部員の」

 「霧崎 誠。よろしくお願いします」

 敬語でそう言う誠。ちょっと壁を感じるな・・・。

 そんなことはどこ吹く風、まゆはにっこり笑って手を差し出した。

 「わあ!新しいお仲間さんですね!!どうも、丁寧にありがとうございます。私、2年F組の頭取まゆと申します。仲良く出来たらいいですね!よろしくお願いしますね」

 言うひとによっちゃ、なんだかうさんくさく感じるこの自己紹介も、彼女がいえば自然体だ。

 というのも、敬語がデフォルトなまゆにとっちゃ、あんまり敬語だろうがそうでなかろうが関係ない。

 「・・・? あの、これは・・・?」

 差し出された手を見て首をかしげる誠。

 「握手です。まずはそこから、ね?」

 にこっ、と笑うまゆ。

 「え、ええ・・・」

 なんだかすっかり毒気の抜かれている誠。いい感じに向こうのペースである。

 というか、俺と甲次がアレだっただけかもしれないが、もしかして普通に接してくれば普通の反応してくれるのか、誠って。

 誰に対しても毒々しいわけじゃないのか・・・。

 「や、やりにくいわ・・・彼女」

 ぼそっと言うのが聞こえた。

 ガチャッ

 「兄さん、今日も部活が・・・って、その人は・・・?」

 またまた新たな来訪者。それも我が妹。

 「ああ、紹介する。新しい部員、おい誠」

 「霧崎 誠。よろしくお願いするわ」

 今度はかたっくるしい敬語じゃなく、誠っぽい「~だわ」口調。

 「どうも、森田 準の妹の森田 美羽みうです。その・・・兄さんとはどういった関係で・・・?」

 なんだかちょっとピリピリしてる感じの美羽。機嫌でも悪いのか・・・?

 「おいおい我が妹よ、いきなりそのケンカ腰はいかんよ」

 「兄さんは黙っててください」

 「Oh・・・」

 「ははは、準は馬鹿だなぁ」

 「馬鹿に馬鹿いわれたくないわ」

 ・・・それにしても。

 な、なんですかこの空気・・・。

 「どういう関係も何も・・・別に? ただこの男に勧誘されたから。入ってみただけなのだけど」

 「そうですか・・・ふーん、兄さんが・・・」

 ジト目で見る我が妹。

 え、なに、新入部員歓迎って空気じゃないよ、これ?

 「兄さんとは、いつお知り合いになられたので?」

 「昨日よ」

 「昨日・・・ってことはそれまで赤の他人だったわけですよね?なのにいきなり勧誘を・・・?」

 「ええ、わたしが公園で一人たそがれていたら、この男が話しかけてきて・・・最初はあしらったのだけれど、どうにもしつこかったから折れてあげて部に入ったの」

 お、おい、その言い方じゃ・・・まあ、間違ってないけど、でもこれじゃあまるで俺あれじゃん。

 「兄さん。昨日、新入部員が入るなんて、言いませんでしたよね?」

 ギクッ。

 な、なぜだろう。悪いことなんてしてないはずなのに、この問答無用で俺が謝らなきゃいけなくなりそうな空気。

 「そ、その、昨日の状態じゃまだ本当に来てくれるかもわからなかったし・・・言う必要もないかなーって」

 というかぶっちゃけ単純に言い忘れただけだったりするんだが。

 「まあまあ、とりあえずクッキー食べましょう?作ってきたんです」

 いいところでまゆの助け舟が。ナイスだ!

 「・・・ふぅ。まあいいでしょう。どうやら兄さんとは何にもないようですし?これからも同じ部の仲間、あくまでただの『仲間』として、よろしくお願いしますね?」

 ・・・なんとかなった・・・のか?

 にしても刺々しいな、我が妹よ。

 「ええ、よろしくね?美羽さん?」

 なんだか二人の間に火花散ってる様子。これあれか、なんか俗に言う犬猿の仲ってやつか。

 「いつもはこんなんじゃないんだよ、美羽のやつ、今日は機嫌が悪いみたいでさ」

 俺が小声で誠にそう言うと、

 「それだけじゃなさそうだけどね・・・」

 と、なんだかなぜ美羽がお怒りくんなのかなんとなくで分かってるかのような口ぶりだった。

 「あ、おいしい」

 「本当ですか!よかったぁ~」

 「ほんとだ、うめぇ!おい、誠ちゃんも、ついでに準も食ってみろって!まじうめぇから」

 すでに向こうではまゆの焼いたクッキーを食してる模様。しかも好評だ。

 てっきり俺もまずいオチが待ってるのかと思ったんだけどな。

 「わ、私・・・甘いものは・・・」

 「だいじょうぶですよ、甘さは抑えてあるので」

 「そ、そう、ならいただくわ・・・あむ・・・」

 もしゃもしゃとクッキー食べてる誠もなんか可愛かった。

 「お前、だまって何か食ってるだけならすっげえ可愛いのにな」ゲシ

 「うぐっみぞ入った・・・」

 容赦ない攻撃をかわせる仲になった俺たち。これも距離が縮まったと解釈していいんだよな?

 「か、可愛い・・・兄さんが、女の子に可愛いだなんて・・・!」

 「ああ!美羽ちゃん落ち着いて!こんなことろでユニバースしたらあかん!おい準、なんとかしろ!」

 「最近じゃ私にだって、可愛いなんて言ってくれないのに・・・うぅぅぅ!!誠さん、あなただけはこの身に変えても私がっ!!」

 軽く別世界に飛んじゃってる我が妹。ふ、普段はとっても良い子なんだよ!?

 「お、落ち着け、美羽っ!お前も可愛い!かわいいから!」

 「離してください兄さん、死なばもろともだぁ!」

 どうにもまだお兄ちゃん離れしきれてない感じがするなぁー美羽は。たぶん、いきなり現れた女にわたしのお兄ちゃんがとられた!的心境なのだろう。

 「ほれ、いい子いい子~」

 俺が頭をなでなでしてあげると、どうやらおさまったようで、なんとか思い直してくれたようだった。

 「ふん・・・命拾いしましたね、誠さん」

 「なぜ私はクッキーを食べただけで命を狙われなくちゃいけないのかしら・・・?」

 妹はわりと学校ではクールなキャラで固めてはいるが、部のなかじゃ結構はっちゃけている。それでも他人が新しく入ってきたってのに、最初っからフルスロットルなのはなんだかんだで既に誠がこの場になじんでいるという証拠なのかもしれない。

 「ああ、あと兄さん、今日はあずみちゃんは修行だそうです」

 「修行!?ってどこで!」

 「ギアナ高地らしいですけども・・・なんか、明鏡止水の心がなんたらって言ってましたよ」

 「ヤツはモビルファイターにでもなるつもりだというのか・・・?」

 ちなみにあずみというのはもう一人の部員である。

 「そのあずみさん、というのが最後の部員なのね。どういった人なのかしら?」

 誠がそう言うので、返答にこまった俺だが・・・。

 「うん、まあおもしろいやつだよ。良いやつなのは間違いないんだけど・・・思い込み激しいやら色々と困ったやつでもある・・・」

 「そう。また変なの、なのね」

 だいたいあってる。

 「そして、この私こそ、この放送部の部長である神堂 紅葉その人よ!!」

 バンッ!と勢いよくとびらを開け放って登場したのは我らが部長。

 「まさかとは思うが・・・ずっとトビラの前に?」

 「ええ、そうよ!やっぱ初対面の人に与える印象はできるかぎりインパクトのあるものにしたいじゃない?」

 「ちなみにどの辺りからいたんすか、紅葉先輩」甲次が聞くと、

 「ん~っと、準と甲次がくる前くらいかな?」

 「最初っからじゃねえか!!なんで早く出てこねぇんだよ!」

 というか、俺らがここへ来たときにはどこへ隠れていたのだろうか・・・。そして隠れていた必要あるか?

 「真打は最後って決まってるでしょ。いきなりラスボス出てきたらやっぱだめっしょ?だから出てくるタイミングを計ってたのよ」

 「なんだか聞いていた人物像とは少し、いや、結構違くてびっくりだわ・・・」

 誠がぼそっとまたしても言う。癖みたいなものなのだろうか。

 ともあれ、誠はどうやらもっと気品あふれる感じをイメージしてたに違いない。

 ・・・そりゃそうだろう。なんせ普段は猫かぶってらっしゃるしな。

 髪はロング、頭にリボン。整った顔立ちに、ピンッとした背筋。どこか自信に満ちた表情。

 初対面の人は少なからず気後れするくらいには威圧感、というかオーラがある。

 女子からは煙たがられるのも分からなくもない。

 「君が新入部員の誠さんね?私は神堂 紅葉。昇竜高校三年生にしてこのゲリラ部、放送部の部長よ。よろしくね♪ 私たち放送部はあなたを歓迎します」

 まゆと同じように手を差し伸べる紅葉。

 さすがに二度目とあってか、ちゃんと握手する誠。

 「なんといっても私の準の連れてきた子だからね!い~っぱい可愛がっちゃうよん!」

 「私の、て。お前のじゃねえし」

 「なによぅ・・・冷たいわね。昨日はあんなにも熱い夜を過ごしたというのに・・・」

 「何だと!!おい準、お前は二次専じゃなかったのか・・・!?」

 「いつ言ったよ、んなこと。三次元もばりばりだっちゅーに。てか紅葉、昨日は俺たち会ってねえだろ、一回も!」

 「あれぇ?そうだっけ?」

 とぼける紅葉。

 たまーに学校来ない日とかもあるので、会わない日もちょくちょくある。

 「今日はその分、準と話したいなーって思ってきたの。少しは嬉しがりなさいよ」

 「昨日、明日もしかしたら新入部員くるかもーってメールしたからだろ、今日来たのって」

 妹には言い忘れてしまったが、仮にも部長には話を通しておこうとおもい、昨日家に帰るなりメールだけしておいたのだ。

 「ん?どうした、誠」

 きょとん、とする誠に俺が聞くと、

 「なんか・・・元カノと聞いていたものだから・・・てっきりギクシャクした感じなのかと・・・」

 そう、遠慮がちに言ってきた。

 ・・・うん、まあそうだけど。

 「いや、そういうの気にしなくていいよ。お互い、そういうのすっぽり忘れて元通り仲良くやってるからさ」

 「私は今でも準のとこ、好きだけどねー?」

 ・・・せっかくまとまりかけてたところを。

 「・・・なんだか、珍しい関係ね、あなたたち」

 「ま、まあな・・・」

 「てへっ」

 こらベロ出すんじゃない。

 「まあこの二人のことは気をつかわなくてもいいと思うぜ、誠ちゃん。なんていったらいいか、この二人、デキてそうでデキてないけどでもその一歩手前、みたいなビミョーな感じだから」

 「余計気になるわ、それ」

 「紅葉さんも。はい、クッキーです♪」

 「ああ、ありがと、まゆ」

 なんといいますか・・・。

 「・・・来てよかった」

 小言でそう言う誠を見て、俺も、よかったよかったと思いましたとさ。

 思うにその独り言いうクセ、わざとなんじゃないか?とも少し思うが

 それでも、こうして嬉しがってる姿を見れて・・・良かったなぁ

 こうして、新入部員お披露目会! は無事終了した。



  そのあと、さっさと誠は休み時間が終わると帰ってしまった。

 家で何してるんだろうなー、あいつ。

 などと考えつつも店番をしていると、またしても平八さんがやってきた。

 「トラックの免許取ろうかなとか思った」

 「・・・またどうしてです、平八さん」

 唐突だわ。

 「いやー、なんというか・・・今の俺に足りないもの、それは経験だぁ!って思って。それで考えたらさー。トラックの運転手っていろんなとこいけるだろ?だから良い経験になるかなーって」

 「どうでしょうかねー・・・でもトラックの運転手ってあれ眠れないんですよね。しかも何時間も道走ってないといけないから、決して楽というわけではなさそうですし」

 「そうだよなー・・・あーどっかにいろんな経験積めて、それでいて割と簡単な仕事見つかんないかなー。給料はそんなにいらないからさー」

 世の中、そんな甘くはない。

 

 

  次の日も、次の日も、きちんと誠は昼休みに学校へ来て、部活に参加していた。

 とはいえ、基本的に当番のヤツが曲流せば終わるから、けっきょくのところは普通に駄弁っておわりな感じなのだけれども。

 それだけのために、きちんと誠は毎日学校へ来てくれていた。

 たまに放課後にも部活をしたりと、誠が来てからというものの一段と騒がしくなってきたと思う。2年の秋。そう考えればあまり、もう学生生活も長くはないだろう。

 この限られた時間の中・・・。そう、__つまり紅葉の卒業まで。

 そこまでが、俺たちのタイムリミット。

 あと数ヶ月・・・数十日しかないんだ。

 大事に大事に1日1日、みんなと過ごさないと。

 決して多くはない、唯一の「友達」と呼べるヤツらとの生活を。



  皆さんは、「ツンデレ」という言葉をご存知だろうか?

 ・・・ならば、その亜種ともいえる存在、「ヤンデレ」、「クーデレ」なるものはご存知だろうか?

 それは、普段はツンツンしてたり、クールで人を寄せ付けないように見えたりしているが、ふと好きな異性と二人きりになると、いわゆる「デレ」というものを見せてくる、そんなギャップがすさましい破壊力を生むといわれる、一部の好事家たちが日夜あこがれる存在である。

 だが、仮に。

 もしも、そのツンデレやらクーデレやらヤンデレから、「デレ」そのものが無くなったら?と仮定してみよう。

 するとどうだろうか。

 それはもう、ただの「近寄りがたい人」になる。

 それが、ツンツンしてて人を寄せつかせない感じの、しかも若干ゆがんでる感じだったら。

 そう、それが霧崎きりさきまことこと、ツンヤンクーだ。

 ツンツンしてて病んでてクール。

 略してツンヤンクー。

 我ながら良いセンスだと思う。

 なぜこんなことを言い出すのかといえばだ。

 俺は、学校が終わり、いつもの帰宅路を通り、「あぁ・・・早く帰って風呂でも浴びて寝ちまいたい」と思ってた時。

 例の公園で、またしてもあの外見だけはパーフェクトな美人を見つけたから声をかけ・・・ようとして踏みとどまった。

 「・・・何してんだ?」

 恐る恐る声をかける俺。

 なぜなら、奴はなにやら地面に向かって足を親の敵かのようにこれでもかと踏みつけていたからだ。

 「・・・アリを踏み殺していたのよ」

 こちらへ振り向き、その整った顔立ちの顔の表情を一切崩すことなく言う。

 「そうか・・・っておい!」

 人の趣味とかに他人がクチを出すものじゃないということは重々承知だ。

 だが、これは人としておおいに間違っていると声を大にして言えるんじゃね?

 「アリだって一生懸命にだな、汗水たらして働いてんだぞ、それをお前」

 「あら?じゃあ女王アリは殺してもかまわないのね?」

 「いやいやいや、そういう問題じゃない!アイツにだって出産が控えてるからね!」

 ・・・というか、今の季節にアリなんかいるのか?

 もうすっかり世間は秋模様だというのに。

 「ところであなたは、働きアリと女王アリ、どっちがいい?」

 またコイツは変な質問をしやがる・・・。

 「どっちがいいって・・・」

 「私は女王アリね。あんな風に他人からつくされたいわ。求められたい。必要とされたい。私は女王アリがうらやましい」

 ・・・コイツのことだ。

 どうせ、働かずにメシが食える!とか、そんな感じの理由だと思ったんだが・・・。

 なにやら意味深なことを言いやがった。

 「そうか・・・。お前にとっての働きアリが、どっかにいるさきっと」

 「あら?ここは、『俺がお前の働きアリになってやる』くらい言わないと。それだからチェリーのままなのよ」

 「へいへい、どうせ俺はチェリーですよー」

 それにしても。

 女王アリがうらやましい・・・か。

 誠は、どうやら人の愛情に飢えてるらしい。

 しかもそれを無意識に、俺に求めてきているようにも思える。

 その穴を、俺が少しでも埋めてあげることができるなら、それってステキだなーと。

 力になってやりたい、そう思った。



  「美羽ちゃんって、リアル妹としちゃ合格点だよな」

 「な、なんだよ、とつぜん・・・お前に妹はやらんぞ!」

 ちょっとお父さんにでもなった気分で。

 「甲次さん?・・・え、嫌・・・」

 「その嫌がり方は傷つくよ、みうちゃぁん!!」

 「まあ、当然の反応ね」

 今日も今日とて部活。

 例のごとくまゆの持ってきたお菓子をみんなで食いつつも雑談。

 あの日以来、毎度まゆがお菓子を持ってくるようになってしまった。

 なんかもう、趣味になっちゃったっぽい、お菓子作り。

 「でもさぁ、家事もできて、見た目可愛いし成績も優秀、運動もできて非の打ち所ないじゃん。実際」

 「紅葉さんが言うと嫌味に聞こえますね」と、まゆがすかさず言う。

 「たしかに紅葉先輩も似たようなもんだけど・・・でも美羽ちゃんってば、そこに『妹』っていう属性持ちだぜ?これポイント高いっしょ。嫁だわもう、俺の嫁認定。俺が準だったら間違いなく間違いおこしてるレベル」

 うむ。

 確かに、美羽は家事全般こなせ、しっかりしてるし、見た目はマジ天使で成績は日々の努力の賜物といった感じ。

 運動は正式な部であるテニス部でも優秀な成績を残している。おまけにガOダムオタクだ。 

 ・・・最後のはちょっと違うか?

 とにかく。嫁にするとしたら最高級な物件であるとはいえよう。なんたって俺の妹だし。

 だがしょせん妹である!

 どこの世界にリアル妹に欲情する兄がいるというんだ。

 俺は兄や姉・弟が欲しかった。たしかに妹はかけがえがないほど大事だ。

 それは心から言えることである。が、それとこれとはまったくまったく別問題。

 人間、ないものねだりしたがるのは仕方ないことだ。

 思いっきり甘えられる姉や兄、そして思わず俺が守ってやりたくなるような弟!

 うん、妹がしっかりものすぎるんだよ。

 俺が守ってやらずとも。一人でなんとかやっちゃいそうだし。

 「き、気持ち悪い・・・」

 「おお、妹よ!だいじょうぶか!病原菌を今退治してくるからな!」そういってとりあえず甲次に塩まいておいた。

 俺はいつでも塩を持ちあるくようにしている。

 ・・・いや、理由は聞かないで。

 「おい、目にはいったら痛いだろ!やめろ、ばかっ塩ぶつけんな、おいこらっ」

 「悪霊退散悪霊退散」

 甲次いじりに飽きてきたら中断。

 「兄さんすごい!私のために、わざわざ変態撃退用の塩持ち歩いてるなんて!この兄さんすごいよぉ!さすがターンエーのお兄さんっ!」

 「いつから俺はシャイニングフィンガー撃てるようになったんだ・・・」

 まあ確かに俺の妹はお髭さん並みのスペックだが。

 「本当に仲が良いですね~二人は」

 まゆはニコニコしながらそう言った。

 「私たち兄妹も、このくらい仲が良ければいいんですけどもねー・・・」

 さらりと言ったそのセリフは、確かに俺の耳に入った。

 ・・・。

 なるほど、まゆは別に平八さんのところを嫌いになってるわけではないらしいな。

 これは良い収穫だと思った。



 「誠ちゃんのこと、ずいぶんとお気に入りのようねー準」

 「・・・そんなんじゃねえよ。ただ、アイツ、なんだかほっとけないんだ」

 「あら~、惚気ちゃって~!お姉さん妬いちゃうぞー」

 「バァカ、言ってろ」

 お昼、今日は部活がなく、紅葉も珍しく学校に来ていたので一緒にお昼を食べていた。

 「ぶー、ひどーい。たまには彼女に優しくしてくれてもバチは当たらないんじゃないの?」

 「誰が彼女だ、誰が」

 「え?私」

 さも当然かのように答える紅葉。いっそすがすがしい。

 「悪いが俺はお前とは別れたんだ。お前は過去の女なんだ。付き合ってたのは過去形だ」

 「突きあうだなんて・・・準くんえっちぃー」

 「もういい・・・」

 「・・・でも。あんたがそう思ってなくても、他人がどう思うかまではわからないじゃないの」

 急にまじめな顔になる

 「どういう意味だ?」

 「こうして、ときどきでもお昼を一緒に食べてて、仲が良さそ~に話してる男女を見て、普通はまだ付き合ってるって認識にならない?」

 「む」

 それは一理あるかも、と思った。

 俺たちだってもう子供じゃない。

 異性が必要以上に仲良くしているという事実、それが指し示す周囲の認識。それはおのずと導かれる。

 「っていうか準は、こぉ~んなに可愛い子と付き合ってる!って思われて、何にも感じないの?」

 確かに見た目は可愛いし、おまけに成績優秀、しかも喧嘩も強いとまさに言うところ無しだろう。料理の腕前は普通だが・・・。

 「だが、そもそも本当に付き合ってるわけでもなし。第一、俺たちはもうただの友達だろ」

 「ただの・・・ねぇ。実際、異性においてのただの友達、なんて関係は本当に少ないと思うわよ。他人の観点からみて、仲の良さそうな男女二人が、ただの友達だぁーって言われて信じられるわけないし」

 「お前はさっきから何が言いたいんだ?」

 「べっつにー。たださぁ、私たちって周りからみてどう映るのかなーって思って」

 どうしたというのだろう。今日はなんだかいつもと様子が変だ。

 いつもなら、俺の食いつきのよくない話題はすぐに話題転換してくれるくらいの気をきかせてくれるのだが。

 「周りがどう思おうが関係ないだろう」

 「そーんなカッコつけたセリフ言っちゃってまあ。べつにいいんだけどねー。準はもう私のこと、どうしても女として見られないみたいだしぃ」

 「別にそうは言ってないだろう・・・」

 「じゃあなんで?女として見られてるんだとしたら、なんで手を出してこないの?密室で二人きりだったとしても、そんな素振りすら見せないじゃない」

 「それは・・・」

 そんなの決まってる。今の関係を壊したくないから。

 一歩、踏み込むことによってそれは簡単に崩れてしまう。

 そんな危ないバランスの上で、人間関係ってのは成り立ってる。

 「それに・・・俺には、その『付き合う』っていう概念がいまいちよく分からないんだよ・・・結婚だとか、付き合うだとか、そういうのって所詮はただの言葉の鎖と言いますか、ぶっちゃけ付き合う前と何がどう違うのかが分からないんだよ」

 「ふむ、続けて?」


 「要するに、付き合うってのはあれだろ?なんかこう、えろいことするために付き合うんだろ?」


 「・・・」

 「あれ?なんか俺、間違ったこと言った?」

 「う~ん・・・まあ、あながち間違ってもいないというか・・・なんと言うかねー・・・あれだ、準は本当に人を好きになったことがないんだよ、きっと。だから『付き合う』っていうのがいまいち理解できない」

 「そうなのか・・・?俺も人を好きになれば、自然と『付き合う』ってことの重要さに気づく?」

 「かもね。・・・それとも、今、ここで・・・」

 そう言って、こちらへ身を摺り寄せてくる

 ほのかなシャンプーの香りが漂ってくる。普段、異性として意識しない幼馴染がなんだか急に大人びて見えて・・・不覚にも、その、ドキッとしました、はい。

 「・・・く・・・くふふ・・・」

 「くふふ?」

 「はははははは!!!引っかかった引っかかった!やーいやーい!だまされてやんのー!」

 「おまっ!珍しくシリアスだと思ったら!!」

 「そういうことは、ちゃんと好きな人とすること!いいかい、ごみと理性のポイ捨てはよくないことだよ?準」

 今日のこいつは本当にどこか変だ。

 ・・・あれか、やっぱ未練たらたらなのか、お前は。

 「俺は・・・お前が思っているほどたいしたやつじゃないんだ・・・」

 「準・・・」

 俺は人に好かれるような、好きになってもらえるような人間じゃあない。

 それこそ、周りに劣等感ばかり抱くような小さい男だ。

 そんな俺を、こんなデキた女が好きになるなんて・・・ほんとうにうれしい限りだけど。

 「それでも俺は・・・」

 「・・・は~い!シリアス終わりっ!」

 紅葉はそう、わざと大きな声をだして、無理やりこの場の空気を変えようとした。

 「準がそんなに悩む必要はないよ。私のせいでそんなに悩むってんなら・・・うん。私、準と会うの、やめるよ。そうすることで準が苦しまないってんならさ」

 「紅葉・・・俺は、お前のことは好きだよ」

 「うん、知ってる」

 即答する紅葉。

 「でもそれは友達としての好きであって異性への好きではないーって、そんな感じのこと言うつもりでしょ?」

 「・・・だいたいあってる」

 何でもお見通しといいますか。

 まあ今のはさすがに使いまわされた言葉すぎたかもしれないけど。

 「俺たちってさ、無駄に付き合ったりなんかして距離縮めちゃったから」

 「ん」

 だまって俺の言うことに耳を傾ける紅葉。俺は言葉をつづけた。

 「友達・・・って言っても、やっぱり、それなりに距離は必要っていうか。それこそ俺たちは男女なんだし、関係を維持するには壁・・・とは違うけど、なにかしらそういうものが必要なんだ。ただただ、ちょっと急ぎすぎたばっかりにこんなことになっただけで」

 思うに、人間関係っていうのはすごーく面倒くさいもので。

 だけど、その面倒くさいものを、人は大事にしなくちゃ生きていけない生き物だから。

 だからこんなに悩んだり、苦しみ必要が出てくるんだと。

 孤独に耐えられるような人間に、誰も彼もがなれるわけじゃないのよさ。

 


  学校にて。時は休み時間。

 この場所で見かけるのは珍しい奴と遭遇した。というか実際初めてだ。

 そう__そこには、階段の下、ちょうど階段側からは死角になり、向こうからはこちらを視認できないが、逆にこちらからは上の階段が覗ける、一部ではウチの『絶景スポット』と呼ばれている場所に、奴はいた。

 「・・・こんなところで上ガン見して・・・何やってんだ?誠」

 「あら、チェリーじゃない」

 「すっかり定着しちゃってるのその呼び名!せめてオブラートに包んで『さくらん坊』とかだな・・・」

 「どうでもいい」

 「さいですか」

 どうでもいいことらしい。まあどうでもいいけどさ!せめて名前で呼んでほしい。というかツッコんでほしいところだった。せっかくボケたのに・・・。

 「んで?何やってんの、こんなとこで」

 俺が聞くとやつはすまし顔(ドヤ顔ともいう)で言った。

 「なにって・・・決まってるでしょ?パンツのぞいてるのよ」

 ・・・。

 「なんでそんなに誇らしげというか自慢げに!?てか、ええ!!なんで!?なぜ覗く!」

 「・・・はぁ。会ってそうそううるさい男ね。これだからDTは・・・」

 「うるさくさせてるのはお前だ!つうかDTて」

 「DTっていうのはどうて・・・」

 「言わなくてよろしい」

 それにしても、そんなに破廉恥な言葉連発して恥ずかしいと思わないんだろうか。

 どうも最近の女子って下ネタ平気で言うよな。いや、それとも最近の女子に限らないのか?

 「で、なんでそんなことしてるんだ?お前は」

 「・・・べ、べつにどうだっていいでしょう?私がパンツのぞいていたからといってあなたに何の関係があるというの?」

 「いや、そりゃそうだけどよ・・・一応、同じ部の身内としてだな、そのへんた・・・変人行為を抑制しようと」

 「今、あなた変態って言おうとしたわね・・・心外。あなたにだけは言われたくなかったのに」

 「ちゃんと言い直しただろ、変人って」

 どっちも大差ないような気がするけど。

 とはいえ変人、のほうがまだ少しマシな気がする。そのへんはさじ加減だな。

 「いいから教えろよ。女のお前が、女のスカートのぞく理由を」

 「・・・わ、笑わない?」

 「お、おう、笑わないぞ」

 な、なんだ?

 なにこれぇー

 急にもじもじとし始めた誠に・・・ちょっと胸キュンしたじゃねえかこのやろう。

 「わ、私・・・普段学校に行ってなかったものだから・・・その、どんなパンツはけばいいのかわからなくて・・・」

 「え、じゃあ今のーぱ」デュクシッ

 「痛っ!!ちょ、シャレになんないってこれ!いてぇぇぇ」

 思いっきりあごをグーパンされた。

 「せ、セクハラっ!」

 「ええ!?いまさら何なの!お前だっていつも出会い頭にいつもセクハラ発言を」

 「女が男に対していうのと、男が女の子に対して言うのとではぜんぜん違うわ」

 「・・・で?ぶっちゃけ今はいてない?」

 「はいてるわよ!!人を痴女みたいにいわないでちょうだい!」

 「ああわかったからグーパンはやめろ。あれは世界を狙えるこぶしやで」

 女だとは思えないこぶしの速さだった・・・。次にくらったら立っていられる自信はない。

 「あれでも一応、加減はしたのだけれどね・・・まあいいわ。なにを隠そう、わたしは今日クマさんパンツをはいてきたの」

 「ギャップ萌えっ!」

 というか唐突にそんなことカミングアウトされてもな。

 ・・・え、てか本当に?

 「まじで?」

 「まじまじっ」

 某エロゲのOPっぽく返された。

 「・・・でも、なんていうか意外だな」

 「何がかしら?」

 「いや、誠もそんなことで悩んだりするんだなーってさ。すこし親近感というか・・・まあ、さすがの俺でもはいてくパンツなんかで悩んだりはしないけ・・・げふっ」

 音速を超えるマッハナックル・コンマゼロが飛んできた。

 「い、いいじゃないの、別に私がパンツのことで悩んでも!あなたに迷惑がかかるわけじゃなし、放っておいてちょうだい」

 「そ、それで・・・?」

 「それでって・・・?」

 「いや、みんなどんなパンツはいてるのかなーっと」

 「知りたいの?」

 「おうともよ」

 こいつの前では性欲を隠す必要がないだろうと思い、率直に聞いた。

 だって気になるじゃねえか。

 「クマさんパンツはいてたわ」

 「流行ってるの、クマさん!!」

 


  「ていうか、ちゃんと学校来てるんなら授業にも出てけばいいだろうに」

 「嫌よ、あんな退屈なもの。わたし、自慢じゃないけど、授業中はずっと学校のトイレに隠れたりしてやり過ごしてるのよ」

 ほんと何の自慢にもならねぇ。

 「でも」

 「ん?」

 「最近は、学校も悪くないかも・・・って思ってきてはいるわ。・・・部活あるし」

 「・・・そうか」

 あの部活が、誠にとっての良き居場所なりえたのか。

 それは、毎日ほんのすこしの時間だけのことだけど、でも。

 それでも、この子の心の支えに少しでもなってあげることができたんなら、万々歳。

 幸せと青春と居場所の作り方。

 俺でもわからないもの、でもそれをあいつに与えてやれば。

 俺にだって、それが見えてくるんじゃないか。

 検索結果、153,000件

 だけど、たぶん、ぜんぶ見たってわからない。

 そんなものを、探しに行こう。



 1話 完

 

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