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ライオンのひみつ(冬童話2026)

作者: 空芯菜ぴえろ
掲載日:2025/12/11



あなたはなぜ、ライオンのオスが狩りをしないか知っていますか?


普通ならメスよりオスのほうが強いはずだから、オス狩りをしたほうがいいのになぁ、、

なんて思ったことがある人もたくさんいるでしょう。


実は私たちが産まれるずうっと前には、オスのライオンが狩りをしていたのです。

今日はライオンのメスが狩りをするようになったお話をしましょう。




むかしむかし、アフリカの森の奥の村に7匹のライオンの家族が暮らしていました。


お父さんライオン、お母さんライオン、そして3匹のきょうだいたち。

兄弟でいちばん歳上の、オスライオンのテリーは、とっても心の優しい子でした。いつも弟ライオンたちに子守唄を歌ってあげます。


テリーは5歳の誕生日の日に、お父さんライオンにこう言われました。


『テリー。お前はもう5歳になった。

明日からお父さんと一緒に狩りの練習に出かけるとしよう。』


次の日の朝早く、テリーはお父さんライオンに連れられて出かけました。

生まれてはじめてシマウマたちの暮らすオアシスにやってきたのです。


『まずはお前の力だけで何匹のシマウマを連れてこられるか見てやろう。

お昼の12時にこのリンゴの木で待ち合わせをしよう。』


お父さんライオンはガルルル、と勇ましい雄叫びを上げながらオアシスを進み、テリーを残したまま狩りをはじめました。



『どうしよう。

僕に狩りなんかできるかなぁ』


しばらくテリーはリンゴの木の下に立ち尽くしたまま考えていました。


すると、群れからはぐれた一頭のおばあさんシマウマが湖の真ん中で溺れているのが見えました。


『わぁ大変だ!

今すぐ助けにいきますから待っててねー』


テリーはおばあさんシマウマを急いで抱き上げて、湖のほとりに運びました。

そこに、シマウマの群れが戻ってきました。


『大変だ大変だー!

おばあちゃんがライオンにつかまってるよ!

この野郎、お年寄りを狙うなんてひきょうだ!』


20頭以上のシマウマたちがいっせいにテリーめがけて突進します。



『ち、違うんだよう。

僕はただおばあさんを助けようとして、、』

『わぁっ!痛い!痛いよう。

やめてってばー』


シマウマたちはテリーの体にかみつき、顔を引っ掻き、しっぽを引っ張ります。

立派なきばを持っていたテリーでしたが、自分より細くて小さなシマウマたちに噛みついて反撃するなんてことは思いつきもしません。


されるがままに攻撃されたテリーの体は傷だらけでぼろぼろになってしまいました。


テリーはよろめきながらも、なんとかお父さんライオンとの待ち合わせ場所のリンゴの木にたどりつきました。


『お父さん。痛いよう。痛いよう。』


血まみれのテリーの姿を見たお父さんライオンは、テリーを睨みつけて怒鳴りました。


『なんだ!その姿は。立派な5歳ライオンのくせにみっともない。

家に帰るまで、わしから離れてついてこい。こんな情けないのがわしの息子だと思われたら恥ずかしくてたまらん。』


お父さんライオンはあっという間にテリーから見えないところまで走り去ってしまいました。



初めて来たオアシスから家までの帰り道を、もちろんテリーは知りませんでした。

泣きながら必死でお父さんライオンを追いかけようとしましたが、途中ではっと足をとまて反対方向へととぼとぼ歩き始めました。


『もし家に帰れたとしても、ぼくはこんなに弱くてダメなオスライオンだ。

お父さんのこともあんなにがっかりさせてしまったし、もう僕には居場所がないよ。』


日がくれて、空にはお月さまが顔を出し始めます。

テリーはゆっくりゆっくり歩き続けました。


すっかりあたりが暗くなったころ、テリーは森の奥に洞窟をみつけました。

くたくたで体じゅう傷だらけのテリーは、力つきて穴の中にどかっと横たわりました。

洞窟の中は真っ暗でとってもさびしい場所でした。


怖さを紛らわせるために、テリーは小さな声で歌を歌います。

静かな森の中、テリーの歌声は洞窟の外まで響き渡りました。


『こんばんは。誰か歌っているの?』


洞窟の外からかわいい声が聞こえます。

月明かりに照らされた影はメスライオンのようです。


『こ、こんばんわ。

ごめんなさい。歌で起こしてしまったかな?』


『いいえ。大丈夫。

私、月がきれいな夜はいつもこっそり家を抜け出してお散歩するの。

そしたらとっても美しいメロディがこっちから聞こえてきたから。』


『あ、ありがとう。でも、僕はもう5歳のオスライオンのくせに勇ましい雄叫びをあげることもできないし、狩りだってできない弱虫さ。』



メスライオンはうふふ、と笑って洞窟の中に入ってきました。


『あら、あなたライオンだったの。

確かにそんな声で歌うオスライオンには生まれて初めて出会ったわ』


身体中の傷を見られたら恥ずかしいな、と思ったテリーは洞窟の奥のほうへと後ずさりしました。

そんなテリーの気持ちを知らないメスのライオンは、テリーのすぐ隣までやって来て腰を下ろします。


『でも、今まで私が出会ってきたオスのなかで一番素敵な歌声よ。


私に今まで結婚を申し込みにやって来たオスライオンたちはみんな“歌を聞いてください”なんて偉そうに言ったあとに、バカみたいにガルルル、って吠えるだけなんだから。

あんなの、ちっとも歌とは言えないわ。』


メスライオンがものまねをした“ガルルル”は、テリーのお父さんの雄叫びにそっくりで、テリーも思わず笑ってしまいました。


『私のパパは強いオスと結婚しなさいっていつも言うけど、私は歌が大好きだからあなたみたいに歌が上手なライオンと結婚したいわ。


そしたら私、毎日素敵な歌を聞けてとっても幸せよ。』


テリーは恥ずかしかったけど、とっても嬉しい気持ちになりました。

生まれてから一度も歌声を褒められたことがなかったからです。

弟ライオンたちにさえ、女みたいな歌を歌う弱虫テリーといつもバカにされていました。


メスライオンはさらにテリーに近づいてきます。


テリーの心臓はどきどきしました。

ーそれ以上近くで僕を見ないで。きっとこんなぼろぼろな身体を見ると、君まで僕のことを弱虫だって笑うだろうから。




きらきらきら。


そのとき、空からたくさんの流れ星が降って来ました。

その流れ星は洞窟の中にまで降り注ぎ、真っ暗な洞窟はまぶしいくらいに明るくなったのです。


『、、、まあ。』

メスライオンはテリーの身体を頭からしっぽまで見渡しました。


ーああ、見られてしまった。こんなに傷だらけでかっこ悪い姿をついに見られてしまった。


メスライオンはテリーの体をゆっくりと撫でながら言いました。


『この小さなひっかき傷の爪の形、それに細いあごの歯形はきっとシマウマね。』


『僕はお年寄りのシマウマを助けようとして。

そしたらお年寄りの家族たちが僕のことを襲って来たんだ。


違うんだよ、って言ったけどシマウマたちはきっと僕がおばあさんを食べようとしていると勘違いしたんだろうね。

僕は弱虫だから何もできなくて。』



『いいえ。あなたはそんなに大きなキバを持っているのにシマウマを傷つけずに必死で耐えたのね。』

『なんて優しい人なのかしら。だからあんなに素敵な歌が歌えるのね』


テリーはびっくりしましたが、たしかにメスライオンは自分のことを褒めてくれたのです。

そしてテリーのほっぺに優しく頬ずりをしました。


『私はメスのくせに狩りが大好きでいつも泥だらけになって走り回ってばかりで、パパとママに“おてんば娘”って叱られるの。

そんなんじゃお嫁にいけないぞ、ってね。

でも私、思うのよ。

メスはなぜ狩りをしてはいけないの?

オスはなぜ強くなければならないの?

誰もが自分の得意なことをして、みんなで助け合って生きていけばとっても幸せじゃない?』


テリーはその言葉が嬉しくて嬉しくて、涙が止まりません。

その大粒の涙がメスライオンの前足の指の上にぽとりと落ちました。


そして再び降ってきた流れ星がその涙の粒をダイヤモンドのようにきらきら輝かせました。


『素敵な結婚指輪をありがとう』


そしてテリーとそのメスライオンのナナはその大きな洞窟を住みかにして、仲良く暮らし始めました。


あっという間にたくさんの子供が産まれました。

メスの子供ライオンはナナに似て走るのが大好きで狩りが上手。

オスの子供ライオンはテリーに似て歌が上手で兄弟たちに子守唄を歌って面倒を見ました。


メスの子供ライオンたちはみんな5歳になる前に


『ママー、私も狩りに行ってみたいよぉ』


と口々におねだりします。


『そうね。じゃあまずは遠くからお母さんが狩りをする様子を見ててごらん。』


メスの子供ライオンたちは毎日ナナのあとをついて狩りの見学に出かけるようになりました。

そして、洞窟でテリーと一緒にお留守をするオスの子供ライオンたちは毎日子守唄の練習をします。


そんな日々をすごしているうちに、テリーとナナたちの噂を聞きつけた他の群れのライオンたちが変わるがわる洞窟を訪ねるようになったのです。



『俺、実は昔から狩りが苦手でさ。

テリーのように歌が上手になりたいんだ』


『うちの娘たちはみんなかけっこが大好きでね。

いくらお歌を教えてもちっとも上手くならないの。どうか狩りを教えてやってくれないかしら。』


驚くことに、狩りが苦手なオスライオンや歌が苦手なメスライオンがたくさんいたのです。

心優しいテリーは、お願いにきたライオンたちを次々に自分の洞窟に迎え入れました。

みるみるうちに、洞窟の中には100匹以上のライオンの群れが出来ていたのです。


そしてみんなはその洞窟を『ライオン王国』と名付けました。

ライオン王国の王様にはテリー、おきさきさまにはナナがなりました。


ライオン王国建国まつりの夜のあいさつで、テオは胸を張ってこう言いました。


『オスだからメスだからとそんなことより前に、私たちはみな同じように誇り高い命なのです。

この夜空に輝く星のように、ひとつひとつの命が誰かをやさしく照らせるような素敵なライオン王国を作りましょう。』


ライオン王国では色々な“しごと”が認められました。おしゃれが好きなライオンはさんぱつやさんを、甘いものが好きなライオンはお菓子屋さんを開きました。


みんなが笑顔でいっぱいのライオン王国はいつまでもみんなが自分らしさを大切にしながら、楽しく楽しく暮らしたのでした。


この作品をご覧いただきありがとうございます。


物語を書き始めてまだ2週間も経たない未熟者です。

読みづらい点や誤字・脱字など至らない点がございましたら、ぜひご指導よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
肉食獣で『命の尊さ』を説いても説得力が・・。 それと100匹のライオンが生きてゆくには年間1千200頭以上の大型動物の『肉』が必要なので、王国の行き着く先はシマウマの『家畜化』になっちゃいます。 そ…
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