ねぇ、神様。
毎日のようにルークの様子を天界から観察していると、彼の命がそろそろ危ういことが目に見えてわかった。もう自力では動くことが出来なくなっているらしい。
神である私にとってはルークが死んだら彼と天界でのんびり過ごせるのであまり悲観していない。死んだ人には干渉できるし、「ルークを現世まで迎えに行ってあげるか」というぐらいの感情なのだ。
しばらく観察していると、なんと彼の黒かった瞳が、神の加護が付いてることを表す、白の瞳に変わっていることに気づいた。
「え、マジか。」
思わず呟いてしますほど驚いた。ここ200年は驚いたことなかったのに。
今まで度々元から加護の付いた人を生まれさせていて、後天的な加護の付け方が分からなかったので少し驚いた。
その後も観察していると、ルークに今日も罰を与えようとやってきた人がそれに気づいたようで、急いで人を呼んでいたようだった。
彼の牢屋に最高位の神官らしき人がきて、ルークの瞳を神の加護と判定した。すると、人々が手のひらを180度返し、急に彼の手当てをはじめたり、敬語を使い出したりしていた。
でも、もうルークは助からない。
それに気づいたらしい人々は、なんと、彼をダシにして、私を呼び出そうとしていた。
愚かだなぁ。
私は世界に干渉できないし、人々の前に姿を現せないんだから。
そう思いつつ人々の動向を追っていると、人々は、本格的にルークをダシに使おうと、神殿に連れて行っていた。
そして、御神体とされている私の像の前に寝かせた。もうルークは虫の息なのだが、そんなことお構いなしにルークの体を移動させた。それも結構な距離を。酷いものだ。
「よし、ルークを迎えに行ってやるか。」
当の本人はほぼ死んでるような状態なので、私は迎えに行くことにした。勿論人々の前には姿を現さずに迎えに行く。
現世に降りて神殿に行き、ルークの体から彼の魂を解放してあげる。すると、ふわっと彼の霊が体から抜け出した。
ルークの霊は、瞑っていた目を開ける。
「神様…。」
「なぁに?」
ルークは自分の体を見ながら感情の読み取れない顔で問うてくる。
「僕死んだんですか?」
「そうだね。死んだよ。」
彼は少し安堵したように、「そうですか。」と言う。
「……やっと、解放された。」
聞き取れないぐらいの小さな声で、ルークはそう言った。でも私は神なので、バッチリ聞き取れてしまった。
「ねぇ、神様。」
彼が、意を決したように話しかけてきた。
「ん?なに?」