3.運命は過酷だった
「こちらはオートロックス侯爵家か?」
家のここまで入り込んで言う事か?違ったらどうするんだ?
「貴方はスイッチ王太子殿下!このようなところに何の用で?」
クレッシェ……。我が家をこのようなところとか言わないでよ~。でもまぁ、王太子がいきなり来るようなところじゃないわね、うん。
「貴女はクレッシェ嬢。貴女も至急登城してください!それから、この侯爵家のお嬢さんとそのお子さんも」
なんで私まで?クレッシェはわかるけど?私はなんで?
王城で肖像画を見た。
私好みのオジサマは国王陛下だった。どこかで見たような気がする。ってそりゃあ、デビュタントの時に会ってるし、貨幣にバッチリ顔が写ってる。なんだか敗北感…。
「その親父が亡くなった。これからは俺がこの国の国王になるわけだが……」
「まさか?ミシェルが皇后??私の義母?」
「さすがクレッシェ嬢、話が早いな。ついでにその三つ子の子は父上の子だから、俺の弟妹だな。身分としては王弟・王妹というやつだ」
こんな時、健康体の自分が恨めしい。気絶の一つもかましたい。クレッシェの方が気絶しそうだ。
「クレッシェ、大丈夫?」
「大丈夫だと思いたいけど…」
私が第2王子に睨まれる~。怖いよ~。
「というのが、事実というわけだが……。ミシェル嬢には王妃として公務にあたってもらいたい。さらに、ミシェルの子供の三つ子だが俺とミシェル嬢の間に生まれたというように箝口令を引こうと思う」
ちょっと待ってよ!私はクレッシェと違って、王子妃教育とか何にも受けてない、ただの侯爵令嬢よ?
「ただの侯爵令嬢と思っているかもしれないが、行動力は人一倍あるな」
「あ、それは保証しますわ」
クレッシェ~~!!
「親父が亡くなった今、妃なき国王として、俺が国を統治するというのは、国民を不安にさせかねないし、他国には弱みを見せているように映るだろう。そこでだ!俺を助けると思ってミッシェル嬢に王妃になってほしい」
「それは夜伽も含むんですか?」
その場の王家の人間が赤面してしまった。王家はなんて打たれ弱いの?クレッシェは平気だったのに。
「あ~…、ミシェル嬢が俺のことを好きになってくれればな」
クレッシェが王家に私のオジサマ好きを話しているの?遠くでクレッシェが首を横に振りまくってるけど。あんまり振ると、気持ち悪くなるわよ(体験談)?
正直に言うと、この王太子なぁ、あと20年後くらいがいい感じになってると思うんだよなぁ。今は世間で『世紀の貴公子』とか言われてるみたいだけど、まだまだ青いわね。
「親父の葬儀、明日には俺の妻として出席してほしい」
あのオジサマが亡くなっちゃたのかぁ。残念だなぁ。
「わかったわよ。こっちからの条件は、うちの子達を三人とも立派な紳士・淑女に育て上げる事。当然私も努力するけど、私は外交だの社交だので忙しいんでしょ?」
「契約成立だな。書面でもきちんと書いておこう。そういうわけで、そのように皆の者、周知するように!」
「「「「はっ!」」」」
「はぁ、女子会してたはずなのになぁ。ミシェルがお義姉様になるの?」
「クレッシェの義姉になれるように頑張ります!」
「違うでしょ?この国の恥にならないように外交とか社交とか頑張るのよ~。気が重いわ」
「そぉ?私はクレッシェと一緒だと思うとなんか楽しいわ♪」
「ミシェルはなんか楽しそうでいいわね?この後が地獄よ?頑張ってね」
「あー、クレッシェに捨てられたぁ」
「はははっ、女の子は女の子同士で楽しそうだなぁ?」
「楽しくないわよ!もうっ、婚約の状態でもう甥が2人、姪が1人もいるのよ?」
「そう言えばそうだな。俺にも甥と姪かぁ……。どんな子?」
「可愛い子達よ。お義父様に似てるとミシェルが喜ぶわね」
ミシェルが義母になるわけじゃなくてよかった。でも義姉……。大丈夫かなぁ?
ミシェルちゃんは能天気なのに、けっこう周りに流されるタイプなのかなぁ?