表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第18色

 ここまで強引に引き止められると、シェリーが頑なに動かない性格であることは、リッチでさえ百も承知のうえだった。急な展開で困惑しているエレンを見かねた彼は、「これは大役を任されてしまいましたね…」と眉を下げながら、観念して席につく。ポットの中では鮮やかな蒼が踊り、香りに華を添えている。まだまだ終わりそうにない女子会が幕を開けた。


 そんななんて事のない日常に戻り、特に大きな事件も起きることなく数日が経った。庭園の秘密部屋では、アールが一人長椅子に深く座り、項垂れて考え込んでいた。エレンにちゃんと話すと約束した以上、どこから話すべきか、と未だにかなり悩んでいた。


『まだ悩まれているのですか?』

「……アンジュ。急に思念(テレパス)で話しかけてくるのはやめてくれないか……」

『そう言われましても……眷属とはいえ、私は大樹(そちら)に入れないんですよ。それに、私が普段から庭園(ここ)で過ごしているのはご存知でしょう? 庭園に足を踏み入れた主の存在くらい、嫌でも感知できます』

「わかった、わかったから……随分嫌味を言うようになったな……」


 彼女の歌うような柔らかい声で、悩んでいたこともすっかり飛んでしまい、軽く溜め息を吐く。思念での会話は、二人の特別な関係故に為し得る事だ。声に反して、彼女の言葉の端々に棘があることに不服そうにするも、アールはすぐに表情を戻す。


「……本当なら、『守人』が揃った時点で伝えようと考えてはいたんだ。グラッツのおかげで前倒しにされたが……」

『そのタイミングでもだいぶ遅いのでは……? いつか気付かれるのはわかっていらっしゃるはずなのに、そこまでして隠さなければならないことですか?』

「それは……」


 言い淀んでふと、とある女性の顔と言葉が浮かぶ。エレンと同じ緩やかな淡い金髪の女性が、申し訳なさそうに話しかけてくる。


『エレンを、お願いね……あなたにしか頼めなくて、押し付けるようになってしまうけど……()()()()()なら、きっと大丈夫』


 どこか寂しさを浮かべた笑顔で、アールにエレンを託した彼女。娘の幸せを誰よりも願っている、母としての表情(かお)。彼女こそ、エレンとセーラの母親その人だった。

 彼女の顔を思い出しながら、アンジュからの問いにぽつりと応えた。


「エレンの母親……シャンベリーさんから頼まれてるんだ。できる限り、写し子のことは隠して欲しい……知らない方が、同じことを繰り返すタイミングを遅らせることができるはず、と」

『……シャンベリー様からの言伝でしたか……申し訳ありません、そうとも知らず、出過ぎた発言を……』

「いや、皆に知らせてやれなかったこちらの落ち度だ。気にしないでくれ」

『……』


 その後、しばらく待っても言葉が飛んでくることは無かった。アンジュはそのまま口をつぐみ、思念を切ったようだった。再びアールは一人、思い悩む時間に浸った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ