聖フラグ 1-3
微(?)エロ注意かも
「これ、あたしの所為だよね……? 責任取った方がいい?」
「う、くっ……!」
振り向いた水夏の瞳に宿る情欲。あ、これは不味い展開だなと思った矢先、控えめながらも大胆に彼女の腰が押し付けられる。
衣服越しとは言え、興奮している息子に刺激が伝わり、思わず声が漏れた。腰を引こうにも既に狭いロッカーの奥面に背中を預けている状態なので、どうしようも出来ない。
(詰んでるじゃねえか!)
幸いなことに水夏も水夏で腰を押し付けてきた後は何故か固まっている。ここからどうすれば良いのか分からず、悩んでいるのだろうか。
ただ、これは間違いなくチャンスだ。さっさとこの窮状を打破しなければ。
「──は?」
だが、出来なかった。
たまたま通気口から見えた外、正面にあるロッカーに陣取った聖が着替え出したから。
そのロッカーは俺から見て横向きに設置されている為、カッターシャツを脱いだ聖の身体のラインがよく見えた。
(は? え? は?)
学園指定のカッターシャツの下から現れた黒のインナー。それは良い。まだ普通だ。しかし、その肩口を通る紐はなんだ。いや、現物を見た事あるし、風花ちゃんが誘惑目的で敢えて見せてきた事もある。
だから、俺はそれが何かを知っている。そして、一部の変態を覗いて男が身に着ける物ではない事も知っている。
「ふぅ……」
(はああああああ!!??)
着替えると言っていた聖は、当然そこでは止まらない。インナーに手をかけるとそのまま躊躇いなく脱いで軽く折り畳む。
そうして、露になるのは淡い桃色のブラジャーとうっすらではあるが男性では有り得ない胸の膨らみ。
「わぁ、姫川君って女の子だったんだ。……あれ? じゃあ、姫川ちゃん?」
驚愕が滲んだ声。どうも、水夏も俺と同じ光景を見たから固まっていたらしい。
気持ちは分かる。俺達、聖とそこそこ一緒に過ごしていたのに全く気づかなかったからな。この事、隼は知っているのか?
だが、これで漸く聖が女子更衣室を訪れた理由は分かった。あいつ、水泳の授業だけは常に欠席していたし、これはつまり最低限の単位を取得する為の補習か何かだろう。
「……うん?」
待って欲しい。それだと会長が清掃の為に使用不可な事を伝えていない事がおかしいな?
補習とは言え、水泳部以外がプールを使う場合、まずは生徒会へ許諾書の提出が必要だった筈だが。予定の擦り合わせやらなんやらで。
だから、その時点で会長は聖に説明する義務がある訳で。現に補習を担当する教師が現れていないのは、教師にはきちんと報連相をしたんだろう。
「それなのに、なんで聖は……」
この場に居るのか。
そして、あの人は俺に清掃を命じている。そこから導かれる結論は──
「な、にぃ……!?」
後少しで何かを掴めた思考。
それに埋没するあまり、動かす必要のない視線を聖に固定していたのがまずかった。
彼……いや、彼女が身につけていたブラジャーを外した瞬間、今まで考えていた事の全てが吹き飛んだ。
「あんっ。ビクってしたぁ……」
少なくとも水夏や会長よりは小さい。それでも、まろびでた乳房はちゃんと存在感のある大きさをしていた。勿論、貧乳組とは比べるまでもない。や、誰とまでは言わないけどね?
というか、ブラジャーを外す前と後で明確に差があるんだが、あれがサイズダウンブラって奴ですか? 男装って言えばサラシの印象が強かったから、普通に可愛らしいデザインの下着が出て来てびっくりだよ。
思わず股間が反応しちゃったわ。
「る、ルミ君? これ、とっても辛そうだよ?」
よし。少し落ち着こうか。落ち着いて考えよう。
確かに予想外ではあったものの、同性の友人だと思っていた人物が、実は異性だったという話はフィクションだと割とよく見る手法だ。
こちらは同性として気軽に接しているのに、相手はその気安さにドギマギしているみたいなのがよくあるシチュエーションだな。
そして、大抵の場合、そんな特異なステータスがただのモブにつくことはない。つまり、癒しの友人枠であった聖すらも攻略対象である可能性が浮上してきたという事で。
となると、だ。こうして聖の弱みを否応無しに握り続けている現状はとてもじゃないが宜しくない。万が一にもバレたら面倒事に確定で巻き込まれる。
「このままだとヤバい」
「え? どうしたらいいの?」
「どうにかして外に……」
出るしかないのだが。
更衣室の静けさの中ではロッカーの開閉音は目立つ。そもそも、聖の姿が視認出来ている近さだ。俺達の間を隔てている扉が失われた場合、どう足掻いても見つかる。
「外に? 出したら良いのかな?」
「ただまあ、直に」
だが、俺の予想が正しければ着替え終わった聖はプールへ向かうだろう。補習を受ける為に。そして、来ない教師を暫く待ち続ける。
要はそれまで隠れ続けていたら良いだけだし、水夏の時と違って至近距離でもないから、聖の裸体に不躾な視線をぶつけた訳でもない。
それ故に、聖は俺達に気づくことなく黙々と着替えを続けている。
「直に? 触るの? うーん。出来なくはないと思うけど、体勢的にぎこちなくなりそうかな?」
これならば焦る事はない。聖の秘密を暴く気は更々ないので、プール清掃は諦めざるを得ないが、それは会長への文句として取っておこう。
うん。ロッカーに隠れるのが二度目という事もあって、冷静さを失う事はないな。
錯覚だろうけど、さっきからスースーしている股間が良いアクセントを引き出している。物理的に冷えるから頭も冷えるぜ。
「あっ。これならどうかな?」
「おっふ……!?!!?」
そのmy sonにむにゅっとした刺激がぁっ!?
待って待って待って。何が起きた!?
「み、水夏さん……!?」
「どう? 大丈夫かな?」
ほぼ密着しているとは言え、顎を引きつつ上体を軽く反らせば僅かな隙間は生じる。
混乱しながらも視線を下に落とすと全く預かり知れぬ所で露出した肉棒が水夏の肉厚な太腿に挟まれていた。
なんで!? 何がどうしてそうなった!?
「どうしてこの様な事を?」
「え? ルミ君がこのままだとヤバいって言ったんだよ?」
言ったのか? 言ったかもしれない。思考に気を取られすぎて、独り言を零した気がする。
だが、断じて性的な事を含ませた覚えはない。つーか、さっきの事から何も学べてないじゃないか。次に活かそうとは一体なんだったのか。
まあ、反省は後でで良い。今は水夏に誤解だと告げなければ!
「あの、水夏──」
「ルミ君は動かなくていいからね? あたしに任せて」
「話を、っぁ……!」
水夏が小さく前後に動くだけで、彼女を止めようとして開いた口から情けない声が漏れた。
健康的に肉付き良く成長した柔肌は俺の利かん坊を優しく包み込む。その感触たるや正に赤子をあやす慈母の如き。
「わっ、あたしの太腿の中でびくびくって。んふ、ルミ君? 動きにくいよ?」
だが、どんな聖母であっても実態は女だ。そして、彼女達がどれほど高尚な存在であっても、性欲というのは決してなくならない。
無論、解脱出来ていない俺の幼馴染も例外ではなく。悪戯気にこちらへと流し目を送る水夏はとても妖艶で、淫靡だった。
「やん。ダメだよ、ルミ君」
いつも見ていた水夏の雌の顔。醸し出された芳醇な色香が俺の意識を惑わせる。
こいつを無茶苦茶にしてやりたい。そんな気持ちが胸の底から溢れ出す。
だから、目の前の快楽を享受しようと水夏の腰を両手で掴み、本能のまま動こうとした所で、
「まだ外には姫川ちゃんが居るんだよ?」
「……っ!」
それは俺の薄れかけた理性を取り戻すのに絶大な一撃であり、
「だから、動かないでね? もっと気持ちよくしてあげるから」
この場においての主導権を水夏へ戻す致命的な一言だった。
不味い。何がどう不味いのかは俺も感覚でしか言い表せないのだが、端的に言えば退路がなくなった気がする。
「んー、れろぉ……。太腿だけでなく、あたしも手でしてあげるね?」
「ちょっ、まっ……んんっ!?」
目の前で左手の掌に唾液を落とし、それをそのまま俺の愚息に満遍なく塗りつける水夏。
美少女の潤滑油を纏った逸物は滑りがよくなり、先程とは違った快感を生み出す。しかも、太腿だけでなく水夏の手が亀頭や竿の部分を這い回る事で刺激が途絶える事も単調になる事もない。
正直言って、為す術なく高められている。こんな技術、どこで身につけたんだ……!
「んっ、気持ちいい? 気持ちいいかな、ルミ君? それなら、沢山お勉強した、甲斐が、んっ、あったよ……!」
与えられる快楽を懸命に耐えていると水夏の息が上がっている事に気づいた。多少の運動では呼吸を荒らげる事をしないあの水夏がである。
勉強したとは言え、実践は初めてだから身体の動かし方がまだ非効率なんだろう。それでも、水夏は健気に腰を動かす。
そこにどことなく強迫観念染みた物を感じた瞬間、
「ルミ君と、んぁ、最初にっ、ぁふっ、約束……したのは、あたしだからっ……! だから、ぁん、今だけ、はぁっ、あたしを、見て……!」
「っ!」
愕然とした。何が恵まれている事を自覚しているだ。何も分かっていないじゃないか。
水夏なら俺の不利益になる事はしない。水夏なら俺の意志を尊重する。水夏なら何も言わずとも理解してくれる。水夏なら水夏なら水夏なら……!
幼馴染という特権を振り回し、俺の都合だけ押し付けて水夏がどう感じていたのかという部分から目を逸らす。いや、全く気づいていなかった。
(どうして水夏なら大丈夫だと過信していたんだ、馬鹿野郎!)
はっきりとした好意を曖昧に濁し、他の女の子と親密になっていく男を見て不安にならない子が何処に居る……!
「クソがよ……!」
心臓が握り潰されるかの様な胸の痛み。これが今まで払って来なかった俺のツケか。本当に自分の不甲斐なさにむしゃくしゃする。
だが、目は覚めた。最高に最悪で最低な目覚ましではあったが、取り返しのつく段階だから良しとしよう。
「水夏!」
「や、だ、ダメだよっ! ぅん、ルミ君が動いたら……ふぁ、バレちゃう……んんっ!」
先程とは違い今度は間違いなく俺の意志で水夏の腰を掴む。
今回もそうだ。水夏の普段らしからぬ強引さに戸惑い、俺はどうにかして難を逃れようとばかり考えていた。ここに至るまで、またも自分の事しか眼中になかった。
そりゃ、こんな事で死にたくないという強い想いはある。当たり前だ。まだ志半ばどころか何も成し遂げてないのだから。
それでも、俺は俺自身の幸福の為に周囲を蔑ろにする生き方はしたくない。
「ごめん、水夏。俺はまだお前との約束を果たす事は出来ない」
肉奴隷は確かに魅力的な響きだが、それを叶えると俺は確実に死ぬ。手を出すのを我慢出来る気がしないし、水夏も積極的に奉仕をしてきそうだから。
「ぁはっ、い、いいよ、ぁん、あたしっ、ああんっ、の事はっ、ぅくっ、気に……しなく、んんっ、ても」
「ああ。これからも水夏には甘え続けると思う」
水夏の唾液や先走りによって濡れた逸物がぬちゃぬちゃと太腿の中で暴れ狂う。
ああ。本当に凄まじく気持ちいい。時折当たる水着のエナメル質の感触も良いアクセントだし、腰を突き出した際に先端が水夏の暖かい手に受け止められるのも幸せだ。
しかも、俺が自主的に動き出したからか、俺の胸に背を預ける水夏の口から時度嬌声が漏れている事も興奮に拍車をかける。
願わくばこんな時間が何時までも続けば良いと思うのだが、何事にも永遠なんてものは存在しない。
「だからこそ、この瞬間、この刹那だけは水夏の事しか考えない。そして、俺は今からの吐精に一つ誓おう」
お互いに高まってしまった感情。この場は射精なくては収まらない。それに、俺のケジメとしても代償は必要だ。
当然、大事な残機だ。七月下旬とは言え、あるとないとでは安心感が天と地の差があるのだが、それで水夏の不安を取り除けるのであれば安い物だ。
「俺は絶対、卒業までにお前を肉奴隷にする。これが俺の誓い……新しい約束だ」
「ほ、ほんとに?」
「ああ。だから、最後まで付き合ってくれるか? もう少しでイケそうなんだ」
「えへっ、えへへ。うん、いいよっ! あたしの身体、好きに使って?」
ふにゃりと相好を崩す水夏が甘える様に身体を委ねてくる。
最早、信用は回復していそうだが、ああ言った手前、俺もラストスパートに入る。そして、お互いの腰がぶつかり合う音が何度かロッカー内を反響し、俺の下半身を甘い痺れが駆け抜けた。
「水夏、出すぞ!」
「うん! 出して、出してっ! んあぁぁぁぁっ!」
最後の一突きは水着越しに水夏の敏感な所を擦ったのか、軽く仰け反った水夏は反射的に自身の腰を掴む俺の腕をとる。
「ちょっと! 公共のロッカーで何をやっているのさ!」
「「あっ」」
そこでまるで謀ったかの様に開け放たれるロッカーの扉。
すっかり第三者の存在を失念していた俺と水夏──いや、水夏は覚えていたけど俺との情事を優先したっぽいな?──から間が抜けた声が零れると同時、限界まで蓄積していた物が解き放たれる。
本来は水夏の掌で多少受け止められる筈だったそれは、水夏の手が移動したが故に遮られる事もなく、俺達の前面に向けて盛大にぶちまけられる。
「え? うわああぁぁぁっ!?」
その結果、学園指定の女子水着を身に纏った聖が瞬く間に白く染まっていった。