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「ルミ君、本当に大丈夫かな……」
夜景が眠りの世界へ旅立った頃、一人の少女が自身の枕を胸に抱きながらベッドの上でぺたんと座って彼を想う。
「まさかルミお兄ちゃんに出会えるなんてっ」
また他の少女は荷解きの手を動かしながら偶然の再会を心から喜び、これからの学園生活に胸を高鳴らせ。
「んふふ。先輩、次はいつ会いに来てくれはるやろか」
最低限の光源に照らされた仄暗い部屋の中で、コーヒー豆を挽きながら愉しげな表情を浮かべる一人の少女。
「昨日休んでたから心配したけど、どうやら杞憂だったかもしれないね」
就寝前故に自身の縛めを解き放ち、色々と自由になった身体でストレッチをやりながら友人の事を考えて安堵の息を吐く。
「どうしよどうしよ! あれはやり過ぎたって絶対っ!」
彼の膝に乗るなどという積極的を越えて蛮行に近い事をやった少女は頬を紅く染めながらベッドで悶絶する。
「海鷹クンには悪い事をしたケド、引き受けて貰えて良かったデス」
明日の授業で使う資料の準備をしながら、思い返してみるとほぼ拒否権与えずに決めたのは申し訳なさがあったと独りごちる。
「相変わらず面白い奴だったな」
妹達を寝かしつけながら生徒会室でのやり取りを思い出してしまい、家族の前というのもあって小さな笑みを浮かべる。
「要注意人物? 学園で平穏に過ごすなら関わってはいけない人? なんスか、これ」
入学したばかりで情報収集に勤しむ少女は学園が運営している掲示板サイトで気になる項目を見つけ、好奇心のままに表題をタップする。
「ふふっ。楽しい一年になりそうね」
豪奢な模様の入ったティーカップを傾けて優雅に微笑む少女の見上げた先、天窓の果てで月が燦々と輝いていた。
これは死を避ける為に奔走する主人公とそれぞれの思惑や恋慕を抱いて行動する彼女達の物語。
これにてプロローグ完です




