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次の話が短いので二話分投げます


「マジじゃん」


 食事を終えて挨拶回りの続きに向かう二人を見送ってから、自室に引っ込んではスマホのネットニュースを検索する。

 そこには大体的に風花ちゃんの活動休止について書かれていた。

 その主な理由としては学業に専念したい為という当たり障りのない物。それが真実かどうかの判断なんて、俺には今の時点で分かる訳もないが。


「俺に会いに来た線は薄いか。たまたま選んだ学園に俺が居たという説のが、可能性としてはまだ高い」


 これが主人公補正。

 避けたくても向こう側からやってくる。しかも、軒並み好感度が高い。自業自得ではあるけど、こんな世界で一年間も平穏無事に過ごせるかと言われると答えに窮する。

 だって前世から童貞だもん。可愛い女の子によいしょされたらすぐ勘違いしちゃうし、それが勘違いじゃないときたもんだ。何のしがらみもなければ即座にWelcomeだわ。


「そう言えば……」


 ふと思いついて、風花ちゃんについて調べる。

 俺みたいな一般人ならまだしも、彼女程の知名度なら個人情報も電子の海で纏められているに違いない。

 果たして、俺は風花ちゃんについて書かれたページにすぐさま辿り着くと、その内容についてざっと流し見する。


「両親が居ないのか」


 そこには何歳から芸能活動を始めたとか、どうやってブレイクしたかとかが簡潔に載っていて。

 その中で俺の目を引いたのが、両親が不在という項目。だから、引っ越しの挨拶を兄妹でしていたのかと納得する。

 後は休止の本当の理由について憶測が飛び交っているくらいで、特段気になる様な物もなく。俺はスマホを放り投げるとベッドに仰向けに倒れ込んだ。


「とりあえず、今日得た情報を整理するか」


 始業式に休んだ俺だったが、登校してみると然程(さほど)目立ってはいなかった。

 去年一緒のクラスだったらしい生徒何人かに軽く挨拶されたくらいであり、俺と関係が深い同性は隼と聖しか居なかった。

 そして、肝心の異性だが、どうやら俺のモテモテハーレムにモブの子達は含まれていないみたいだ。

 挨拶をすれば返してくれるものの、それはあくまでもクラスメイトとしての物で。こう言っては自意識過剰みたいだが、昨日休んだ事への詳しさ求める言及もなければ俺の様子を伺ったりする子も居なくて。


 まあ、結局はゲームだからな。これがちゃんとした所から出た商業用の物であれば、取り留めのないモブとの会話だけで日常の1ページが埋まるなんて購入者の顰蹙(ひんしゅく)を買うだろうし。

 まどろっこしい事は抜きにしたいという俺の要望が叶っている時点で、俺へのアクションが全くないという要素でヒロインから弾いても構わないと思う。

 想いを隠している可能性も無きにしも非ずだが、そこまで考えるとキリがないので一旦置いておこう。


「そこから考えるに」


 このゲームのヒロインであると自信を持って言えるのが二人。

 順に武藤 水夏、文野 風花。

 ヒロインっぽいなって感じるのが更に二人。

 それが、曽根崎 砂良と愛園 杏樹。

 そして、ここからは推測だが、同学年二人と年下二人がヒロインと来るなら、年上も居るのではと。

 ただ、俺と接点のある年上は今のところ生徒会長と風紀委員長の二人くらいしか居ない。うーん。目を付けられているというのは分かるが、彼女たちから俺に矢印が向いているかと問われると自信が無い。

 他ヒロインとの話で壁となって立ちはだかるみたいな展開は想像出来るんだけど。

 後はまあ、学園外に手を広げれば心春さんも候補ではあるのだが……。


「秀秋さんがなあ」


 転生したばかりの時は親子丼ワンチャンとウキウキしていた気持ちなんて、とうの昔になくなった。

 そもそも、お世話になっている家庭を壊してまで得たい程の物でもない。そこまで性欲の権化という訳でもないしな。

 ……いやまあ。そりゃあ、モテたいと願いはした。願いはしたさ。

 ただ、家族として愛情を持って接してくれる二人は間違いなく俺の事が大好きで。これも他人からモテていると言い張るのはこじつけが過ぎるだろうか。


「だから」


 心春さんはヒロインと数えなくて良いだろう。水夏が既に居るし、その母親となるとどうしても影は薄くなる。

 何より、彼女がハーレムに参加するには秀秋さんの離脱が必須。その手段自体は様々あるがどれもこれも良くない展開になりがちなので、俺の精神衛生上の為にもそうならない様に祈る他ない。

 というか、心春さんを攻略出来るならヒロイン達の母親全員も対象になるかもしれないし、その点からもハーレム参加は常軌を逸していると言っていいか。

 うん。考えなくていいや。


「次に」


 ヒロイン達とどうやって距離を取るか。

 彼女達の好意を如何に無視して一年間乗り切るか。


「水夏はあまり心配しなくても良さそう……か?」


 帰り道で雲行きの怪しさを感じたものの、基本的に水夏は俺の意志を尊重する。

 好意はあっても今の関係に満足している様にも見える為、彼女から距離をグイグイ詰めてくる事はあまりないと思いたい。多分。

 それに部活の関係上、登下校の時間もズレる事が多く、家で共に過ごす時間は長くとも外で長時間一緒に居ることもない。

 極論だが、平日は夜遅くに帰宅して飯風呂就寝と刻み、休日は即刻外出すれば、水夏をとことん避ける事は出来る。さすがに不審すぎるからやらないが、最終手段として頭の片隅にでも残しておこう。

 本当ににっちもさっちも行かなくなった時、行き当たりばったりになるよりマシだ。


「風花ちゃんはどうだろうな……」


 幼い頃に出会って、何かしらがあって俺を好きになった子。

 そこら辺の記憶がないのがもどかしすぎる。家が隣なのも厄介すぎる。人気のある芸能人なのも面倒すぎる。

 メディアに露出していた時と違って、素の時はとても礼儀正しかったから心象が良い。秀秋さんや心春さん、水夏もそう感じただろう。

 となると、朝練で家を早く出る水夏の代わりに彼女が朝起こしに来る可能性がある。というか、来る。根拠はないけど。主人公的予測で。


 で、あの感じだと恐らく凄い速度で距離感を埋めてくる。元々の性格が明朗快活。それでいて大物司会者に魅せる演技を叩きつける豪胆な気概。離れていた期間を糧に実がつくまで育んだ一途な恋心。

 周囲の視線なんてお構い無しにアタックして来る様子が目に浮かぶ。

 ただまあ、引っ越しの荷解きとかその他諸々の手続きやらで、そうすぐに行動は出来ないと思う。思いたい。頼むからお願いしますよぉ!


「曽根崎は……分からん」


 好かれている理由も分からん。

 記憶を探る限り、出会いは去年だったと思うが、別段何かした覚えはない。

 ただ図書室によく居るから気付けば話す様になっていただけで……あれ? 聖まあち学園の図書室って一般開放されてたか?

 いやまあ、居たからには門扉は開いてたんだろう。それにしては他の一般客を見た事はないけど。……いやいやまさかね?


 ただまあ、関わらない様にするなら図書室に寄らないだけで良いだろうし、対策としては一番簡単である。

 それ以外は連絡先くらいしか知らない。寧ろ、なんで連絡先聞いてんだよ、去年の俺……。モテの弊害が強すぎる。

 だが、そんな物で知れる情報なんてたかが知れてるし、曽根崎もあまり気にしなくて良いな。うん。希望的観測? 知らないな。


「で、愛園さんと」


 正直、膝の上に座られた時はかなりビビった。愚息がお世話になりかけたし、仮になってたら絶対零度の視線を向けられていたに違いない。

 それはそれで興奮する……げふんげふん。


「しかしまあ」


 愛園さんに関してもマジで何も分からない。

 去年はクラスが違うし、家の方向も違う為に通学路で見かけることもない。

 ただ、隼から聞いた話によると素行はあまり宜しくないらしい。新入生の時はよく学園をサボっていたとか。それが何を考えてクラス委員になんか立候補したのやら。

 ……もしかしなくても、俺と居る為にか? え、本当にそうならいじらしい……。勝手に好感度上がっちゃう。


「困った事になったな」


 クラス委員という事は何か催し物がある度に駆り出される。そうなれば、二人きりで行動する時もあるだろう。

 そこに理由をつけて隼や聖を抱き込むにも、毎回では違和感がある。

 あれなら嫌われても良いという考えもあるとは言え、クラス委員同士が不仲だと業務に支障をきたす可能性がある。結果、それはそれとして純粋に学園生活を楽しみたいという目論見が違えるのは嫌だ。

 となれば、取れる手段は一つ。


「現状維持だ!」


 何もしない。

 避けられるヒロインは避けて、絡まなければいけないヒロインとは付かず離れずを意識して。


「なんだ。結構、余裕そうだな」


 煩雑な思考を口に出しながら紐解いてみれば、なんと簡単な事か。やっぱりこうやって纏めるのは大事だな。

 そうして大まかな指針さえ立ててしまえば、心にもゆとりが出来る。

 幸い、明日は土曜日で半日授業。隼や聖を誘って学園から離脱してしまえば、ヒロイン達と会うこともない。

 俺は乱雑に文章を打ち込んでいたスマホのメモ帳を閉じると転生してきて初の週末を前に、ワクワクした気持ちを抱えて床に就いた。

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