08 家族会議
慌てて『ゲートルーム』で来てくれたアリシエラさんからの説明で、
アラン家一同、まずはひと安心。
えーと、"つくも神"でしたよ、あの娘さんは。
つまりは俺の片手剣、の化身。
昨日生まれたてのほやほやで、
アリシエラさんのところで諸々教育中だったところを抜け出して、
深夜だったのでうるさくしないよう『ゲートルーム』をサイレントモードで作動させ、
爆睡していた俺の隣に潜り込んですやすや。
「お騒がせして申し訳ございませんでしたっ」
いえいえアリシエラさん、これくらいなら我が家では想定内の日常茶飯事。
だよな、みんな。
…………
えーと、みんなから向けられた眼差しは、思ったよりもアレですね。
何だよ、今がチームアランの絆の見せどころだろ。
ほら、娘さんがきょとんとしちゃってるぜ。
って、そういえば、この娘さんの名前を教えてください、アリシエラママさん。
「お名前は、皆さんで相談して決めてあげてくださいっ」
うほっ、人生初の名付け親体験だよ、俺。
でもまずは、朝食ですね。
健康な一日のためにはしっかりと朝ごはん。
そして食事中は食事に集中すべし。
それが我が家の掟。
娘さんが美味しそうに召し上がっている姿に、一同ほっこり。
もちろんアリシエラさんもほっこりですね。
そして食後のまったりシンキングタイム。
さあ、みんなで考えよう、お名前を。
なぜか少しだけ、緊張感を伴う会議となっております。
まあ、娘さんの将来にも関わる事ですからね。
アリシエラさんも、良かったらお願いしますね。
そして出そろった案、
『リリシナ』『マユミ』『ユニ』『ハルミスカ』『プリマ』『ニエヌ』『メリム』『アリシエータ』
うむ、どれが誰の案なのかがとても分かりやすいですけど、もうひと捻り欲しいかと。
「ご主人さまも早いとこ考えちゃってくださいよぅ」
そんなこと言われてもなあ、ニエル。
結構な重要ミッションだぞ、これ。
そしてじっと女の子を見つめていると、
思い出すのは先程の、
何とも言えない控えめな柔らかさ。
ぷるん、じゃ無いな。
むにゅん、でも無い。
あれはそう……
「ふるり」
女の子、満面の笑顔に。
「お気に入りみたいですわ」
おっと待った、それはまずいぞ、ユイ。
もしこれに決まったら、
名前を呼ぶたびにあの感触を思い出す事に。
「フルリちゃん、良い名だ」
ちょっと待て、リリシア。
急いては事を仕損じる、だろ。
ちゃんとみんなが考えた候補も検討しようぜ。
主に俺のために。
「こんなに喜んでいるのなら、もう決定でしょ」
ダメだ、ハルミスタ。
こればっかりは『モンスター』のプライドに懸けて阻止せねば。
「揉めてる時は多数決、ですよっ」
いかん、アリシエラさん。
我が家で多数決は危険すぎる。
……決定されちゃいましたよ。
命名『フルリ』
この娘が将来学校に通うようになって
名前の由来をご家族から教えてもらうって課題が出たら、
どう答えれば良いんだろう、俺。