26 家族
恒例の新人さん歓迎会は、とても和やかに進みました。
ゼシカさんはメリルさんも驚くほどの有能メイドっぷりを発揮。
その礼儀正しく洗練された振る舞いには、妻たちも惚れぼれ。
あのニエルですら、思わず敬語になっちゃったほど。
最初だけだったけど。
そして俺への態度は……良い。
とてもよろしくてよ、なのです。
アレなご主人さまにやむを得ず従わざるを得ない悔しさというか屈辱感がひしひしと伝わってきます。
俺、新たなる扉が、絶賛大開放中。
もちろん性癖の、ですよ。
アリシエラさんからはゼシカさんについて、いろいろと聞けました。
『ゼファー』シリーズ最高傑作として生み出されたゼシカさんは、それはもうプライドが高いそうです。
『ゼファー』ベースであるがゆえに"つくも神"として最強クラス。
もちろんメイドとしても超一流。
フルリの時は中途半端になってしまった各種教育は、時間を掛けてじっくり進められたそうです。
その際、自身の最強たる能力への理解が進むにつれ、まだ見ぬご主人さまへのこだわりは激しくも強固なものとなっていったとか。
それなのになんの因果か、ご主人さまは、俺。
ごめんね、ゼシカさん。
俺も頑張るから、長い眼で見守ってください。
えーと、俺がなぜゼシカさんの"さん付け"をやめないのかについては、まあ、ご想像通りかと。
フルリへの、あの崇拝するかのごとくの態度は、ゼシカさんの本心からのものだそうです。
それは"つくも神"と言う存在の、成り立ちに由来するとか。
本来"つくも神"は、天然・人造問わず、めったやたらと成れるものでは無いのだそうです。
確かにお手軽に成れるものだったら、いかに異世界とはいえ、この世は"つくも神"だらけだったでしょう。
フルリのようなごくごく普通の片手剣が"つくも神"に成れたのは、奇跡のような出来事なのだとか。
ゼシカさんのような特別な"魂"を持つ存在にとって、あり得ないほど尊いのだそうです。
俺的には、ゼシカさんのフルリへの態度の方が"尊い"のですが。
そんなこんなで、アラン家にまた新たな家族がひとり。
それは大変にめでたいことなのですが、
お屋敷増築問題、マジでどうしよう。




