25 加減
褐色です、
長身です、
スレンダーです。
ケムリの中から現れたのは、
セシエリアさんと見紛うほどの、
クールで眼鏡で超イケてる、すっげぇ素敵な褐色お姉さん。
「ゼシカです」
「以後、お見知りおきを」
どうも、アランです。
あー、やってくれましたね、アリシエラさん。
なんだよもう、
最高かよ。
最高の武器と最高のお姉さんが、
いっぺんにそろっちゃったよ。
って、どうしよう。
我が家の増築計画、まだ全然形になって無いんだけど。
とりあえずみんなには、新しいメイドさんが来ちゃったよって紹介する方向で。
だって、いい感じにアレンジ効いてるメイド服着てるし。
「御用が無いようでしたら、スピアモードに戻りますね」
おっとすみません、
出来ればもう少し、自己紹介的なお話しでも、
「結構です」
うほっ、すっげぇクールだよ。
俺を見据える冷めた眼差しも、
程よくかすれたハスキーボイスも、
身にまとう突き放すような雰囲気も、
全部が全部、圧倒的なクールっぷりだよ。
俺、マジで、タマランッ!
「ご主人さまの言うこと聞かなきゃダメッ、なのですっ」
おっと、フルリ。
気持ちは嬉しいけどちょっと待って。
お父さんは、いま大事な局面を迎えているのですよ。
家長として、新しいメイドさんと白黒つけねばならんのです。
もちろん、負けて下僕になるのも、それはそれで大変によろしいかと。
いや、むしろそっちの方向で。
「お姉さまの仰せのままに」
おっと、ゼシカさんがフルリにひざまずいて恭順の姿勢を。
やるなフルリ、さすがは先輩メイドさん。
それではお嬢さん、エスコートいたしましょう。
我が家で歓迎会的な宴を催しますので、
どうぞこちらへ。
「……」
くっ、これってなんという鋭さの上から目線、
略して"くっこれ"
さすがの俺でも心が折れちゃいそうになるほどの、
射るように高圧的な眼差しですわ。
「ちゃんと言うこと聞かないと、奥さまたちからお仕置きされるのですよ、ゼッちゃん」
ほほう、ゼッちゃんですか。
やりますな、フルリお姉さま。
このクールビューティーを難なく従えるさま、
まさに先輩メイドの面目躍如ですね。
そして自分の立ち位置に思いを巡らす、俺。
家庭内ヒエラルキー最底辺の座は、未だ覆らず。
もしもし、アリシエラさん。
クーリングオフとまでは言いませんが、
もう少し、加減ってもんがあったんじゃね?