16 約束
ヴェルクリはとても大きな街なのです。
『読み聞かせおじさん』として本屋さん巡りを続けてきたのですが、服屋さん巡りではまた違った発見がありますね。
主に素敵な店員さん発見的な意味で。
もちろんグルメツアーとしても楽しんでおります。
様々なリグラルト料理を堪能出来るようにと、みんなが被らないように注文するので必然的に毎食豪勢な感じに。
旅先でも笑顔の食卓、実に幸せ。
まさに慰安旅行バンザイ、ですね。
「何やらアランが上機嫌だな、しかもなぜか大人しすぎる」
「いつもの企みごとってこと?」
「きっとセシエラさんに会いたくて、やんちゃを控えているのですわ」
「さすがはユイ、鋭い考察ね」
「……メリルさんも早くセシエラさんにお会いしたいのでは」
「そうですね、先方のご迷惑とならないよう、早めにご連絡しておきましょうか」
「……」
うむ、理解ある家族に恵まれて、俺、幸せ。
待っててください、セシエラさん。
特使公爵アラン、もうすぐ参上ですよ。
それにしても、旅行中フルリが大人し過ぎるのが、少々気に掛かるかと。
移動中はずっと手を繋ぎっぱなしなのですが、
もしかして人見知りさんなのかな。
「ご主人さまと一緒なら、フルリはいつでもどこでも幸せなのです」
それは嬉しいんだけど、せっかくだからみんなとの旅行を楽しんで欲しいな。
「前向きに善処するのです」
うん、そうしてね。
アラン家の家訓は『無理せず焦らずマイペースで助け合おう』だからね。
ぴたり
フルリがくっついてきました。
疲れたらおんぶするので、早めに言ってね。
「お姫様抱っこの方が良いのです」
えーと、街中でそれはいろいろとアレなので、
おんぶで勘弁してね。
お姫様抱っこは特別な機会にってことで。
「お楽しみに、なのです……」
うん、俺もとっても楽しみです。