01 家長
『リヴァイス 40 若旦那と危険な遊戯』の続きで、
『特使公爵』アランのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
どうも、特使公爵アランです。
最近いい感じに特使公爵活動が出来てるので、自信を持ってそう名乗っても良いかな、と。
つい先日も、リグラルト王国のヴェルクリに建てられた大型施設の開院記念式典で、立派にお勤めを果たして参りました。
盛大な式典でしたね。
式典の後のパーティーも素晴らしいものでした。
もちろん何より素晴らしかったのは、パーティーを取り仕切っていたメイドギルドのお姉さま方でしたよ。
ホント、素晴らしかったんだよな。
百花繚乱というか、一騎当千というか、空くじ無しの大当たり満載というか。
目移りするどころじゃなかったよ。
右を向いても左を見ても、目の保養というか目の毒というか。
ホント『異世界とっても良いところ』にも程があるだろって感じだったんだよ。
途中までは、な。
「せめてああいう場では空気を読んで欲しかったんだがな、アラン」
酷いよ、リリシア。
俺、ちゃんと特使公爵してたよな。
「そうですねっ、メイドギルドの方々全員に、すっごく念入りに特使公爵アプローチしてましたもんねっ」
酷いよ、マユリ。
きちんと挨拶するのは責任ある大人として立派な振る舞いじゃないか。
「各国の大使や御歴々の方々との絶妙な距離の空け方は、それは見事なものでした」
酷いよ、ユイ。
冒険者として脅威との間合いの取り方が上達した事を褒めて欲しいな。
「メイドさんたちの連絡先、何人分手に入れたのかしらっ」
酷いよ、ハルミスタ。
あのメイドギルドの皆さんが、俺なんか相手にするはずないって分かってるくせに。
「ご主人さま、奥さまを増員する前に、お屋敷の増築をやっちゃう方が先ですよぅ」
そうだな、ニエル。
奥さまマシマシ分だけじゃなくて、そろそろ子供部屋も準備しとかなくちゃな。
「……」
ごめんね、プリナさん。
この家のノリに馴染むのは大変だと思うけど、言いたいことがあったらズバッと言ってね。
俺がヘコまない程度に。
「リグラルト銘菓のお菓子詰め合わせ、とても美味しそうなお土産ですこと」
ありがとうございます、メリルさん。
ちゃんとマユリが拘束魔法を解除してくれたんで、どうにかお土産を買えましたよ。
おイタが過ぎてパーティー途中で拉致されて、お説教の後で拘束魔法までされちゃった俺、
気付いた頃にはとっくにパーティーは終了。
慌てて施設内の売店でお土産を購入。
特使公爵としてはそこそこイケてると思うけど、
家長って、こんなんで良いんだっけ。