俺はヒロイン!〜俺の人生
最後の物語です。
俺は佐伯竜太。またの名を、生島由香子。わけあって女装中、それと同時進行で関口と付き合っている。
最近、声変わりしてきた気がするのだ。…高いほうに。
それに、色々と体に変化が生まれてきたのだ。
幸い今は親とは別居していて、独り暮らしだ。親には会わない限りばれない。
俺自体が悪いことをしているわけではないが、なんとなく罪悪感。
ほら、頼まれたとはいえ女装もしたし。…今もしてるし。
相変わらず、関口は気づいていない。俺が正真正銘の男であるということに。
さて。今日は、関口とデートだ。
かわいい店の店員さんに、服を選んでもらった。
関口のことが好きなわけではないけど、一応…おしゃれだ。
「…やっべー。絶対関口怒ってるわ。あいつ、他人の遅刻にはうるせぇんだよなー…」
慣れないヒールを履いて、必死に走る俺。
時々ぐねってこけかけるが、なんとかバランスをとってこけることを阻止した。
待ち合わせ場所につくと、関口はアイポッド片手に壁に寄りかかっていた。
こうしてみると、結構関口はかっこいい。男の俺からみてもそうだ。
その点、俺はそんなにかっこよくはなかった。自分で言うのもなんだが。
「…関口君!ごめんね、待ったよね…。怒ってる?」
俺の声に気づいた関口が、こちらに体を向けた。
しかし、関口からは怒りのオーラがみられなかった。
(大丈夫そうだ)
ほっとしていると、関口がこっちに寄ってきた。
「全然!てか、由香子ちゃん超かわいい!…手、繋いでもいいかな?」
「えっ…。」
「…あ、そっか…駄目だよね、うん。ごめん…。」
関口は、子犬のようにしゅんとした。
…だから、俺はその表情に弱いんだって。
「え、ち、違うよ!いいよ!繋ごう!」
「ほんと!?んじゃ、繋ごうぜ」
今のはなんだったんだ。演技か?
まぁ、とにかく手を繋いだ。
今日のデートコースは…遊園地。
夜、ご飯をホテルで食べるらしい…。かなりおいしいから、と説得され、しぶしぶ了解したのだ。
「…あ、もう6時半だ。そろそろお腹すかない?」
「うん!じゃあ、関口君…連れてってくれる?ソコ。」
「オッケー!んじゃ、いこぉぜ」
関口の笑顔に、ときめく俺。
…絶対やばい。何だよ、これー!!!
俺は…まさか、アブナイ人か?
「由香子ちゃん…ここなんだけど。」
「…はぁ?」
なんだここ。やけにピンク気むんむんな…
…まさか…?
「関口君…これって…」
「だって…もう、俺たち付き合って5ヶ月だよ?そろそろ、いーじゃん…。」
「…あ。用事を思い出した。」
「棒読みだよ、由香子ちゃん。」
「…だ、だって…」
「…ダメ?」
またまた、俺の弱点・子犬のような寂しげな表情をみせる関口。
…しかし、今回ばかりはダメだ。俺には、絶対女についていてはならないものがついているのだから。
…待てよ?けど、これって…いいチャンスなんじゃないのか?
ホテル入る→服脱ぐ→関口、あれを発見→結果、関口は俺の正体が分かり幻滅→別れる
「…実はね?あたしも…興味あって…」
って、んなの俺変態みたいじゃん!いや、そうなんだけど。実際。
「ほんとに!?…んじゃ、いこ?」
「…うん。」
――――ごめん、関口。
「…おいで。」
ベッドに座っている関口に、手招きされる。俺は頷き、ゆっくりと関口に向かっていった。
さすがに、緊張する。
「…あ、あの…」
「黙って」
お互い、服を着たままだ。
…こんなとき、どうするんだっけ。アッチ系の本を読んだことはある。けど、こんなとき女子ならどうするのか…分からない。
「…シャワー。」
「え?」
「シャ、シャワー浴びようよ!」
必死になる俺。
関口は、やっぱりかっこいい。女子にモテるの、分かるな―――。
「…やめた。」
「えっ!?」
関口は、そう言うとベッドから立った。
「何?してほしかったの?」
Sっぽく微笑む関口。
「ちが…」
「分かってるよ。とりあえず、ご飯食べよ?」
ああ…なんだろ…。俺、ダメってわかってるんだけど…。
好きになるかも。
「関口君…好きだよ。」
そっと、小さな声で言った。
けど、その声は関口にしっかりと届いていたみたいで。
振り返った時のアイツの顔は、真っ赤な熟れたリンゴのように真っ赤だった。
「俺、由香子ちゃんから初めて好きって言葉聞いた。」
すごく、嬉しそうにそう言った。
10年後…
あたしは自分のことを関口に話した。
自分が、男であったことも。そして、何故女装していたか…それも、全部。
けど、関口は…
「正直信じられない。けど、今は女なんだから問題なくねぇ?ってか、それなら名前どうすんの?関口由香子でいい?でも、由香子ちゃんの両親悲しむか…」
あたしに、プロポーズというものをさりげなくした。
「…え?関口由香子…?」
「…由香子ちゃんと結婚したい。」
元クラスメイト。もと男友達。
けど、今は…?
「あたしも…。」
ありえないと思うかもしれない。けど、あたしには体の変化が起こってしまった。
男から女へ…奇跡の、変化。
普通は落ち込むけど…関口と結婚したい。
だから、その望みがかなえられる体になって、本当によかった―――――。
あたしの名前は、関口由香子。元男だけど、あることをきっかけに女装し、関口と付き合う。そして、謎の体の変化。関口が好きだ、って気持ちが生まれて。今、二人で幸せに新婚生活を送っています…。
はぁー…ありえない、コメディーだ(苦笑)
とにかく、終わりました!読んでくださってありがとうございましたm(__)m