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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

壊死

作者: 梅暦

 あるときには更新されないTwitterのタイムラインを下に向けて引っ張り続け,あるときには意味も無くYouTubeのホームをリロードし,そういう無意味ですがるような動作をくりかえしているうちに,今日も一日が終わろうとしていた。布団に入って枕に頭を寝かせたとき,ふと頂点に違和感を覚えて手を伸ばしてみると,妙にぬめりとした感触がした。


 「コンディショナー,きちんと流し切れていなかったのかな」


 そんな風に考えて,しかし今さらお風呂に入り直すのもたいへん面倒であるから,そのままにして寝入ってしまった。ずっとパソコンの画面に向かっていたから,意識を手放すまでに時間がかかって不快だった。


 翌朝,平生に比べて敷き布団から上半身が軽々と持ち上がった。これは非常に良い一日が始まる兆しだと感じた。寝癖を確かめるために髪に手をやると,そこに髪の毛の感触はなかった。ぬめりとした気持ちの悪い手触りと,すこし力を入れれば手が沈んでいく柔らかさに背筋が震え,慌てて手を引っ込めた。手は赤黒い液体でぎとぎとし,輝いている。本棚のガラスで確かめた自分の姿は,頭の左半分が溶けたアイスクリームのようだった。はっとして目を向けた枕に,溶けた自分の骨の残骸があった。


 痛みはなかった。痛覚を司る神経が逝ってしまったのかもしれない。たいていの場合,怪我はそうと認識したあとに痛覚がやってくるものだが,脳が溶けると認識してもうまく機能しないらしい。そもそも脳が4分の1だか2分の1だか溶解していてなお認知機能が問題なく働いていることの方が不気味だった。ふと思い立って発話をしようとしたが,これがうまくいかなかった。ブローカ野はやられてしまったらしい。


 こんな状態で外に出られるはずがなかった。パソコンを立ち上げる気にもならなかった。ぬちょぬちょざらざらした枕に頭を押しつけて毛布を被り,目を閉じた。そうしているうちにも脳がただれていくのを感じた。どうすることもできなかった。5分ほどして,目の前が真っ暗になった。しばらくしてプツリと切れた。


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