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陽キャVSインドア女

一番酷いバグだと記憶しているのは、立ち絵が消えずに場面転換しても、スチルの上に被ったまま立ち絵画像が残っている、まさに残像がこびりついて残ってたあのゲーム。

私はハンターの嗅覚で嗅ぎ分けて、なんとか直接被害には遭わなかったが、あれを買ってしまってキャラの美麗スチルの真ん中に立ち絵が残り、まるでモザイク処理のような仕事をする残像に大笑い(大泣き)した乙女の皆様…宜しくお願いします。

全ての言動が怪しすぎるリーナ=ピュリーサ男爵令嬢はカッフェベルガ王太子殿下の指示のもと、一旦牢獄に入れられた。


容疑は私とリヴィエラとカッフェ殿下への傷害致死罪とスパイ容疑だ。当然親であるピュリーサ男爵も呼び出されて取り調べを受けることになった。


正直、ピュリーサ男爵が可哀相だな~と思う。リーナの話していることの大半はゲームに関することばかりで、私から見るとイベントを起こそうと躍起になっているだけに見えるが、周りからの見た目はまた違う。


妄言を吐いたり、不敬な発言ばかりし奇行を繰り返すおかしな令嬢だ。


結局の所、リーナは「精神状態に異常あり」と医術医に診断されてしまって精神病院に入れられることになってしまった。そりゃリーナも悪いと思うわ。いつまでたっても「私ヒロインよ」ばっかり言っているんだもの。いい加減自分の発言はマズイと気がついて、口を噤むか別の人生を歩む努力をしなくちゃいけなかったのだと思う。


ただ救いなのはリーナは病状が回復次第、退院出来るようになったそうだ。それならばリーナにだって救いはある。この世界を現実だと受け止め、頑張ればいくらでもやり直せると思う。


そんなヒロインリーナは思わぬところでヒロインの威力を発揮していたようだ。


吊り橋効果ならぬ、崖下効果でカッフェベルガ王太子殿下とリヴィエラ皇女殿下はあれから、順調にお付き合いを重ねている。学園にほとんど出て来ていなかったカッフェ殿下が暇さえあれば登校してきて、リヴィエラと教室の隅でイチャイチャしている。


おまけにシエナとサエバートまで良い雰囲気なのだ。本当にリーナのお陰で皆にそれぞれ恋人が出来たようだ。流石ヒロイン。周りを幸せに導くハッピーエンドの魔法でも奮ってくれたらしい。


そして私の恋人はと言うと只今中庭で…


「あ~ん。ホラ口開けろ」


「ず、ズルいよっ。レイファ…の家のシェフのモルアレロさんの作る苺タルト、私がものすごく好きなの分かってて、あ~んしてるでしょう?!そうだよね?」


「ホラあ~ん」


私の唇に触れるか触れないかの絶妙な位置にフォークで切り取ったタルトを近付けてくる。鼻孔からタルトのバターと甘酸っぱい苺の香りが匂ってくる。


た、たまら~ん。ええぃ!


私はフォークにかぶりついた。甘〜い苺とバターの芳香、口の中でホロホロとタルトが溶けるように口内に味が広がる。


「おっ美味しいぃぃ〜!やっぱり美味しいわ。モルアレロさん素敵っ!」


私がヴィッツハンバー家のシェフを誉めちぎっていると、レイファが私の耳元で囁いた。


「公爵家では食べ放題だぞ〜早くうちに来い。そうだ、明日から住むか?」


私は口いっぱいにタルトを頬張りながらレイファを睨んだ。


「もーっ結婚したら一緒に住むじゃないの〜。卒業までは…そうだな〜こんな風にレイファが持って来てくれたモルアレロさんのスイーツを学園で食べる楽しみがあるからこれもいいじゃない?」


レイファはニヤニヤした後、私の頬にキスをした。


「そうだな…こうやって嬉しそうに食べるミルマイアも可愛いしな」


「も…ダメだっ…舌はやっ…も、あ…」


そう言いながら、今度は口にキスをしてくる。舌で舐めるな!…と言いながらも私もレイファと触れあうのは大好きだ。


幸せな気持ちになる。


レイファとイチャイチャしている間に昼休み終了のチャイムが聞こえたので、慌てて片付けて教室に戻った。


因みに今日はカッフェ殿下とリヴィエラは揃って欠席だ。


というのもそろそろ2人を正式に婚約させては…と両国(両親)が盛り上がっており今日は『両家顔合わせ』の会食…つまりは結婚を前提に親族のご挨拶をおこなっているのだ。


そして私達は明日、国内の貴族位が招待された御披露目の夜会に出席予定だ。


というわけで、明日は臨時休校だ。8割は貴族の子女が通うミラジェール学園ではたまにある公的な休みなのだが…。


「あ〜ヴィッツハンバー君、シュトローエンテさん」


教室に入ろうとして担任の先生に呼び止められた。担任の後ろに見たことのない女の子がいる。


ミルクティー色の髪にピンク色の瞳…顔は可愛い。その女の子は頬を染めてレイファを見ている。


まあ見とれるのは分かるよ。レイファは薄めのラベンダー色の髪に紺碧色の瞳で細マッチョの神様(キャラデザ)の作った最高傑作だからね。


「編入生のマリン=ステージアだ。何かあったら委員長か副委員長に言いなさい」


「マリンよ、ヨロシクね!」


手を差し出されて戸惑っているレイファを不思議そうな顔して見ているマリン=ステージア、嫌な予感がした。


貴族の令嬢ならまずはレイファに対して淑女の礼をするだろう。手を差し出すなんて…この世界の庶民でもまずしない。何故ならこの学園に在学している生徒はほぼ貴族の子女だと知っているからだ。


気難しい貴族の子息なら、不敬だと叱責して学園の理事会に言いつけたりする可能性もあるからだ。


「仲良くしましょう、レイファ!」


SS組の教室から皆、廊下を覗いて私達を見ている。


マリンは小首を傾げてレイファを見て微笑んでいるが…何故彼女がレイファの名前を知っているうえに呼び捨てにするのか…益々嫌な予感がした。


「ミルマイアも仲良くしてね!」


ニコッと笑いながら私にも手を差し出してきた、マリン…。嘘でしょう?この子やっぱり…。


「マリン=ステージア…公子に不敬に値するぞ。さあ授業を始める、中に入れ」


流石に担任が固い声でマリン=ステージアを制した。


マリンは不思議そうな顔をして、ムスッとした表情のレイファの顔を見詰めている。


そして教室に入り、担任がマリン=ステージアを紹介した後、一応授業が始まった。


そして授業が終わり、シエナとサエバートに先程のマリンの話をしようとシエナに近付いた。


「シエナ、あのねさっきのね…」


シエナと話しているとサエバートとレイファも近付いてきた。その時…


「ねえ今日の放課後、この町を案内してくれない?私初めてで色々教えてちょうだい、ね?」


急に私達の前にやってきたマリンはそう言ったが、その言葉を聞いて教室内が静まり返っている。


ね?じゃないよ、どうしてわざわざ私達に言って来るのだろうか?小首を傾げたまま私とレイファに微笑みかけてくるマリン=ステージア。


この子には初対面だから遠慮しなきゃ!という気持ちはないのだろうか…。それにもっと根本的な問題がある。


「君は…どうして俺とミルマイアの名前を知っていた?」


レイファが私を庇うように前に立ち塞がった。レイファは淡々と聞いているが、彼から感じる魔力が震えている。


この魔力と声の感じ…レイファ怒ってるな。確かにマリン=ステージアの積極性には驚いてしまうね。


「そんなこと…どうでもいいじゃない?ん~とそうだ、明日の放課後、皆でクレープ食べに行こうよ!」


もう何からツッコんだらいいのか分からない…皆ってメンバーは誰だ?その皆に言いだしっぺの初対面のマリンも入っているのか?それにだね、何故あなたがいきなり仕切るんだ?こういうタイプの人…陽キャっていうんだっけ?


無意識なのか何なのか、グイグイくるし自分のペースに持って行こうと強引な感じだ。


しかしうちにはSS組委員長のレイファがいた。冷ややかなレイファボイスが教室内に響き渡る。


「明日は王家主催の夜会に出席する。君の言う『皆』が誰かは知らないがこの学園の大方の生徒はその夜会に出席する。因みにうちの生徒はその夜会の準備で今日も忙しい。それに…」


レイファは一旦言葉を止めてからチラリとシエナに目を向けた。


「シエナは実家の手伝いがあるから彼女も忙しい。他の組の生徒達も大なり小なり忙しいはずだ、国を挙げての式典になる。自国民なら配慮しろ」


流石使えるヤンデレ、シエナの事もしっかりとフォローを入れてくれた。思わずシエナと手を握り合ってしまった。シエナは小声で助かった…と呟いている。


するとマリン=ステージアは目を見開いた後、レイファの事を上目遣いで見上げた。あ、あざとい!


「え~とじゃあ、王家主催の夜会…私も行っていい?」


「はぁぁ?」


私とレイファどころか教室中の生徒、皆がそんな声を上げていた。どうしてそうなる?どうしてそれを思い付く?そうだ…そもそもマリン=ステージアはどこの出身なんだろう?


「お…お聞きしますがマリン=ステージア様のご実家は爵位はお持ちで?」


情けないことに私の声はひっくり返っていた。驚きもするわ…。咳払いをして喉の調子を整えた。


私に聞かれても尚、マリン=ステージアは笑顔を浮かべている。


「爵位?ないよ~私、ソレイ村の出身なの。魔力量が膨大で国に認められた『癒し』の持ち主なの」


教室内がざわついた。癒しの術師…世界でも数少ない癒しの魔法が使える人。確かに国は癒しの術師を優遇するし、このミラジェール学園に途中編入してくることも可能だろう。


だが貴族位も持たない庶民が…レイファ=ヴィッツハンバー公爵子息にこの口の利き方は無い。シエナだって最初からレイファにタメ口を聞いていた訳ではないし、彼女はプライベートと公で言葉遣いを変えてくる気配りの持ち主だ。


シエナと比べなくてもこの、マリン=ステージアはおかしい。


「爵位が無い人は…夜会に入れないよ」


サエバートがオドオドしながら陽キャのマリン=ステージアに声をかけた。サエバートもっと腹から声出せよ!陽キャに推し負けてんじゃないよ。


するとマリン=ステージアは首を捻った後、キャッキャと声をあげて笑った。


「だったらレイファとミルマイアが一緒なら大丈夫じゃない?私ね、お城の舞踏会見てみたかったのよねぇ~あ、カッフェ様もいるのよね?ダンス踊ってもらえるかな?」


顎が外れそうだった…。私以外のレイファもサエバートもポカンとしていた。間抜けな顔をしているのを見たことのなかったシエナでさえ、大口を開けてポカンとした顔でマリン=ステージアを見ている。


今、カッフェ様って言ったか?あのカッフェベルガ王太子殿下を勝手にカッフェ様呼びにしたのか?おまけにダンスを踊りたいと言ったか?社交ダンスだよ?盆踊りじゃないんだよ?


異世界に来て…初めて宇宙人を見てしまった。言葉が通じないってこのことを言うのかな?何だか反撃する気力を根こそぎ奪われてしまったみたいだ。


すると私の恋人で真の陽キャ…+ヤンデレイファがユラリ…とマリン=ステージアの前に立った。


「初対面の俺達が、何・故・見ず知らずのあんたを夜会に連れて行かなきゃいけないんだ?招待状も無い人間を王城に連れ入ったら向こう、半年は俺達が社交場に出入り禁止だ。あんたそれ分かってて言ってんのか?それにだな俺のミルマイアを馴れ馴れしく名前で呼ぶな。手を差し出すな。ミルマイアに触れていいのは俺だけだ」


前半部分は格好良かったのに、後半部分でヤンデレを差し込んでくるなっ!シエナとサエバートが声を殺して笑っているのが視界の端に見える。


マリン=ステージアは私を見てレイファ見て、首を捻っている。


「おかしいなぁ…続編だと友情ENDも追加されてたのになぁ」


え?ええ?今いっぱい不穏なワードが語られたよね?私がマリン=ステージアに一歩近づこうとした時に教室の入口に懐かしい声が響いた。


「あんた続編のヒロインのマリン=ステージアァァ?!」


私の疑問の答えは急に現れたリーナ=ピュリーサ男爵令嬢によって解明された。


続編のヒロイン?!ということは前作ヒロインVS続編ヒロインの対決か?


次回風雲急を告げる展開がっっ!(嘘です)


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[良い点] 続編ヒロインとヒロインの対決が気になりますね
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