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イベント不発

攻略対象キャラが5人+隠し1人のゲームを攻略中…三人目攻略中に気が付いた。

これ…シナリオ全部一緒じゃないか?声とスチルが違うだけ…究極の金太郎飴シナリオだと気が付いたが、フルコンプするまでは~と意地と根性でプレイして隠しキャラ(しかも好みでないキャラ)だけが唯一ボリューミーなシナリオでフルコンプ後、泣けて仕方なかった乙女の皆様、宜しくお願いします。


誤字修正しています。誤字のご報告もありがとうございます。

夕食の後片付けを終えて、食器を洗っているとカッフェベルガ王太子殿下の側に護衛のお兄様が、ソッと近づいて来られた。


「殿下、ご報告まで」


「何だ、申してみよ」


「先程釣りを楽しまれていた川辺で殿下方が帰られた後、溺れている女性を救出しました。」


殿下も驚いていたが私もレイファも皆も驚いて固まっていた。


「何と!で…その女性に大事はなかったのか?」


カッフェ殿下がそう聞くと、護衛のお兄様は綺麗な顔を曇らせた。


「それがどうにも奇妙な女性でして…お助けして川からお連れしたら、その…何と申しましょうか…『お前じゃないよ!』と怒鳴られまして…」


「はぁ?」


「え?」


「ひぇ…」


分かった…分かったよ、さっきの大きな水音の犯人は…リーナ=ピュリーサ男爵令嬢っお前だぁぁ!


「リーナだね」


「やっぱりそうか?」


私とレイファは頷き合った。


もう薄っすらとどういう状況か分かってきたよ。恐らく水辺で溺れたフリでもして、レイファもしくはカッフェ殿下のどちらかに助けてもらおうと思ったんだろう。


ところがカッフェ殿下と私達はすぐに転移魔法で帰ってしまった…という訳だ。


イベント不発…そりゃ好感度MAXのクソゲーなら絶対上手くいくイベントだったろうね。ところが、レイファの好感度は今や地の底。カッフェベルガ王太子殿下の好感度も先程の修羅場イベントのせいでだだ下がり。


リーナはこの2人を狙うのは諦めた方がいいんじゃないかな?え~と確か近衛の団長も攻略対象だったような?団長は普段は国王陛下の護衛をされている渋いお兄様で、狙うには中々お近づきになれそうにないが…そこは主人公特権で頑張って欲しいな。


それに後、何人か攻略対象キャラがいたような気がするが…サエバートやリヴィエラのお兄様のリスファンテ皇太子殿下も狙われそうなので…ここから先は考えないようにしよう。


あ、因みにリスファンテ殿下は魔術学園の大学院の一年生です。しかし危ないね…皇太子殿下や王太子殿下は護衛のお兄様方がいるから守りはばっちりなんだよね。


つまりはこのメンバー内で一番危険なのは……


「サエバートお前だぁぁぁ!」


「えっ?!なになにぃ?」


焚き火の火を、手持ちランプに移していたサエバートは、私に大声と共に指差されて慄いていた。


「サエバートあんた死相が出ているよ…」


「怖い事言うなよっ明日肝試しだっていうのにっ!」


あ、そうだった!明日はこのキャンプ場から国立公園内の宿泊施設に移動…その後、昼間はトレッキングで汗を流し、夕食後は本日のメインイベント、肝試し大会というスケジュールだ。


「こりゃ…肝試しで狙われるかな…」


「ちょっと待って?!何に?何に狙われるの?ミルマイア知ってるの?レイファー!レイファァ!お前の嫁が怖いこと言うよぉ!」


何だよ~どうした~と言いながらレイファとカッフェベルガ王太子殿下の2人がテントから出て来た。


私はさも今気が付いたかのように、レイファとカッフェベルガ王太子殿下…そして身支度を終えて、お茶を飲んでいたリヴィエラとシエラ…怯えるサエバートの前で力説した。


「転校初日からリーナ=ピュリーサ男爵令嬢はレイファに付き纏っていましたよね?そして今日、川に飛び込んだと思われるリーナ様は近衛の方に助けられた時に、助けた方に向かってお前じゃない!と言われた…この言葉により導き出される答えは……。」


「答えは?」


皆が私の言葉を待つ。いつの間にか近衛のお兄様3名も側に来て、私の言葉に耳を傾けていた。


「溺れた所をレイファもしくは、カッフェベルガ王太子殿下に助けてもらおうという算段をしていた!このことから鑑みるにSSクラス美形男子を狙っていると見ています!つまり今回は失敗したので…次はぁぁぁ?」


皆の視線が、細身だが中々の男前なサエバートに向かった。見られたサエバートは顔面蒼白だ。


「おっおれぇ?」


サエバート…声が裏返ってしまっているよ。そんなサエバートの背中をシエナがさすっている。


「大丈夫よ?サエバート…怖いなら私が防御障壁張ってあげるから…」


「そうだな、シエナに守ってもらえよ」


何だか男女立場が逆なような気もするが、シエナは防御魔法が得意だ。それに魔力量もかなり多い。賛成したレイファに続いてリヴィエラもそして私も賛同した。


「そうね、シエナはこの学園一の護り手だもの」


「障壁の中ならリーナにお触りされたりする危険はないでしょう?」


「もうぅ!ミルマイアはいちいち怖い言い方するなよ!」


そう言って私を睨んでいるサエバートを見ていると不安になる。


これまた男女逆転な立ち位置だけど、明日は問題の肝試し大会がある。おそらくだが、会場は墓場とか古い洋館とか廃病院とか…つまりは


人気の無い場所の可能性が高い。


「サエバート、更に脅かすようで申し訳ないけれど明日の肝試しでは二人一組でコースを散策…となっているわよ?もしリーナ様に暗がりとか建物の陰に連れ込まれてみなさいよ、貞操の危機よ?」


「きゃっ!」


「ええっ?!」


「そうか…!」


皆のそれぞれの悲鳴?が上がった。そしてサエバートはシエナの両手を握り締めた。


「シエナァァァ…助けてぇぇ…」


泣きながら縋るサエバート怖っ!と思ったのは私だけではないはずだ。シエナも若干顔を引きつらせながら何とか了承しているようだ。


「お前達、誰かサエバートの護衛に回ってくれ。私は大丈夫だ」


同じく若干引き気味のカッフェベルガ王太子殿下はそう言って護衛のお兄様に声をかけている。先程ご報告に来ていたお兄様が、私が参ります。と言ってからサエバートとシエナに向かって


「お2人共お守りしますからね」


とイケメンスマイルを浮かべていた。さて…ここで明日の肝試し大会のペアが薄っすらと決定してしまったようだ。


シエナとサエバート。私とレイファ。(最早固定)残るは必然的にリヴィエラとカッフェベルガ王太子殿下だ。皇女殿下と王太子殿下というある意味一番狙われやすいお二方がペアになってしまったが、リヴィエラにも実は隻眼の護衛のフォーさん(本名不明)がついているのだ。


「フォーも明日お願いね」


リヴィエラは姿の見えないフォーさんに向かって声をかけた。


「御意」


割と近い位置から低音の美声の返事が聞こえる。魔術を使っているのだろうか。実はフォーさんは一度しかお会いしたことがない。いつもは隠れて護衛している…らしい。謎の人だ。


という訳で男女別に別れたテントの中で眠りにつくことになった。リヴィエラは初テントの中で大興奮だった。


「外でこんな風に眠るなんて…ワクワクするわっ!」


「リヴィエラ…これとはまた趣が違うけど、テントを自分の家の庭に張って、自宅に居ながら野営体験をするのも楽しいわよ?」


「!」


リヴィエラはハッとして頬を染めた。シエラがすぐに笑顔で合いの手を入れてくれた。


「それいいわね!さっきみたいに、野外でカレー作ったり、星空見たり焚き火の中でお芋を焼いたり…自宅でキャンプも楽しいわね」


「わ、私またキャンプに行きたいわっ」


リヴィエラは顔を真っ赤にして喜んでいる。ウフフ可愛い。シエナも慈愛の籠った目でリヴィエラを見詰めている。


「明日も早いしもう寝ようか~」


「おやすみなさい」


「おやすみ」


シエナの合図に私達は寝袋にくるまった、これはこれで楽しい。インドア女だったけど、キャンプって楽しいね。


…。


……。


林間学校二日目です!天気は快晴、絶好のトレッキング日和です。移動は原則として各クラスで団体行動だ。ここでもリヴィエラと私が脱落一歩手前まで追い込まれていた。


「っひぃ…くっ」


「ミル…マイア、私もうダメ…ここに置いて行って…」


「リヴィエラッ?!諦めないでっ…後もう少しよっ!」


私が必死にリヴィエラに声かけしていると、レイファとサエバートの冷たい言葉が聞こえてきた。


「何言ってるんだよ…。まだ始まって15分だよ?」


「置いていくも何も…疲れたなら戻りなよ?結構脱落している人いるよ?ほら」


確かに、この学園は貴族のご子息ご令嬢が多いので体力勝負なこのトレッキングは、すでに諦めて帰って行く生徒も多い。


でもね、リヴィエラには悪いけれど私は這いつくばってでも、このトレッキングを続けたい訳があるんだ。


「目的地の高原牧場で生ソフトクリームと生シュークリームを食べる為には、死んでも登りきるわよっ!負けないからっ!」


私がギリッとレイファを睨み上げると、レイファは歩く速度を落として私の横に並んでくれた。


「分かったよ…。ガンバレ」


そう言って手を握って引っ張ってくれた。ふあああっ!ヤンデレイファなんて茶化したりしてごめんよっ!


そして息も絶え絶えなリヴィエラの側にはカッフェベルガ王太子殿下がしっかりついている。


そうなると必然的にシエナもサエバートも私達と歩調を合わせてくれた。


「ミルマイア…」


「ふぁい…ひぃ…」


暫く雑談をしながら山道を登っていると、レイファが私の耳元に囁いた。


「後ろを向くなよ?リーナが後ろを付いて来ている」


ひえぇ…トレッキングしながらでもストーカーしてるの?!


レイファは私の腰を引き寄せると更に声を落として囁いた。


「ミルマイアが言ったみたいに、山道の繁みの中にでも連れ込むつもりかな?」


こらー!レイファ昼間っからやめいぃ。夜でも絶対ダメだけど!


でもよく考えたら、『リーナの寒いポエムを聞くゲーム(仮)』は全年齢向けだったと思う。自分で煽ってて言うのもおかしいが、山道とか暗がりに引き込まれたりは…恐らくリーナもしないと思う。


え?ヤンデレイファのねっちょりはどういう事だって?あれはゲーム外でのシナリオだと思うんだけど…自信が無い。


何せクソゲーハンターはこのゲームはクソゲーだと一度認識したら、ゲームプレイの記憶を心の奥深くに仕舞い込むのだ。そしてたまに外に出してきては、クソゲーを酒のつまみにけちょんけちょんに貶して笑いに昇華しているのだ。


失ったゲーム購入金額とプレイに費やした時間の無駄の悔しさを何かにぶつけなければやっていられないのだ。


今回のようにあまり奥に仕舞い込み過ぎてゲーム内容をほぼ忘れてしまったのは大誤算だが…。


「ふう…」


「リヴィエラ殿下少し休まれますか?」


私とレイファの背後でそんな声が聞こえたので、足を止めて後ろを見た。


山道の横の岩に腰かけて、リヴィエラが休んでいる。その横で水筒の飲み物を差し出しているカッフェベルガ王太子殿下の爽やかな笑顔が見える。


殿下、汗一つかいてないんじゃない?あ、レイファもだわ…あれ?私とリヴィエラがおかしいのか?


「ご迷惑お掛けして申し訳御座いません、カッフェ殿下」


「山歩きは体力を使いますからね。下り坂を降りる時に膝を痛めやすいですし…無理に速度を上げたりせずに一定の間隔で歩かないといけませんよ?」


カッフェ殿下はリヴィエラが腰掛けた岩の横に膝を突いて目線を合わせて話をされている。


和やかだ…付き合いたてのカップルのような甘酸っぱい雰囲気が流れている。


「いやだ、お待たせして申し訳ございません。」


そう言ってリヴィエラが岩に手を付いて立ち上がろうとした時に、リヴィエラの足元の岩が崩れ落ちた。


「きゃああ!」


「リヴィエラ?!」


リヴィエラが崩れ落ちる岩と一緒に落ちて行くのを、カッフェ殿下が引っ張り…そして2人は一緒に崖下に落ちて行った。


「殿下ぁ?!」


「リヴィエラ?!」


私達は崩れ落ちた崖に走り寄った。


「皆様っ崖に近付いてはいけません!」


「下がって!」


護衛のお兄様達に崖に近付くのを制された。すると、私達の横を黒い影が横切った。あの細身の忍者みたいな方は…!


「フォーさん!」


「お任せを」


リヴィエラの護衛、フォーさん(本名不明)がそう言ってヒラリと崖から飛び降りた。忍者だ!やっぱり忍者だ!


「あの方に任せましょう。大丈夫ですよ…こう言っては何ですがリヴィエラ殿下が御1人で落ちなくてよかったです」


「本当にそうですね、カッフェ殿下がご一緒なら問題はありませんよ」


護衛のお兄様方の発言にシエナが食って掛かってきた。


「どういう事ですか?!リヴィエラは落ちたのに問題ないってっ…」


「本当に大丈夫です、カッフェ殿下がご一緒なら安全です。カッフェ殿下はかなりお強いので、無傷で戻られますのでご心配いりません」


護衛のお兄様がそう言い切っちゃうほどカッフェ殿下は強いのかな?不安になってレイファを見上げた。


「ああ、本当に大丈夫だと思う。カッフェ殿下は剣技も魔力も凄いから。あの人、並みの身体能力じゃないからさ」


「へぇぇ…」


それは知らなかった…というより忘れていたのかも?そういう設定あったんだね。


「……」


ん?シエナとサエバートの後ろに見ると、いつの間にかストーカーリーナが立っていた。私がギョッとして見たからレイファもシエナもサエバートも振り向いて驚いていた。


「それ……」


「え?」


シエナが何か言ったリーナに聞き返した。リーナは崩れ落ちた崖の方を見詰めたまま絶叫した。


「崖に落ちるのは私のはずでしょう?!どうなってるのよぉ?!」


私以外の皆はポカンとしていた。その叫びを聞いて、理由を知っている私でも一瞬、ポカンとしてしまった。


主人公(リーナ)はこのトレッキングでカッフェベルガ王太子殿下と一緒に崖下に落ちて助けられて…恋愛イベントが起こるはずだったんだ。


そのイベントを主人公ではなくリヴィエラが起こしてしまった…これはどういうことなの?


「おいっ…何だって?」


レイファがリーナに近付こうとすると、リーナは駆け出して山道の向こうに消えてしまった。


「あの女…もしかして崖から落ちるのを知っていたのか?」


「えぇ?」


サエバートの言葉とシエナの叫び声に護衛のお兄様達の中に緊張が走った。


「すぐにご報告して参ります」


護衛のお兄様の1人が転移魔法で消えた。すると…目の前にフォーさんとカッフェベルガ王太子殿下とリヴィエラが転移魔法で現れた。


「リヴィエラ?!」


「怪我は無い?!」


リヴィエラはカッフェベルガ王太子殿下に腰を抱かれたままの体勢だが、私達を見ると顔を赤くして涙ぐみながら


「うん、うん大丈夫…皆心配かけてごめんなさい」


と泣き出してしまった。シエナも私もリヴィエラを抱き締めて泣いた。良かったよ…。


え~とそれからね、もうすぐ高原だから私達はそのまま山頂を目指したんだけど、カッフェベルガ王太子殿下が、リヴィエラをお姫様抱っこしたまま(本物の姫だけど)目的地まで抱き上げて連れて行っちゃったのよね。


当然、高原牧場に到着していた学園の生徒達はソレを目撃した訳で…物凄い悲鳴と歓声の嵐だった。


顔を真っ赤にしたリヴィエラとそのリヴィエラを優しく見詰めるカッフェベルガ王太子殿下…誰がどう見てもお似合いのカップルじゃないかな。


これはやっぱり、いつの間にかリーナの代わりにリヴィエラが恋愛イベントを進めているとみて間違いないよね?


昔流行った(今も中の人達で人気?)ゲームで画面の目押しが指が吊って早く動けなくて、恋愛イベントよりコマンド入力に心血を注いだのは懐かしい記憶です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がイベント打ち明けたのでこれからどうなりますかね?楽しみです
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