ブツの処分は任せた…
元クソゲーハンターの血が騒いで書いてみました。ギャグと少し恋愛要素を入れたよくある設定のよくある異世界転生ものです。スチル差分の取りこぼしに泣いた&ゲーム内での恋愛イベント時期が過ぎてしまってイベントを起こせなくなって泣いた乙女の皆様、宜しくお願いします。
誤字修正しております。
今更ではございますがフィクションなので、実在する団体やその他諸々の実在する業界関係のアレコレとは一切関係はございません。素人の書いている創作ですので、そういうもんだ~適当だ~で流して下さると有難いです。
乙女向けゲームや女性向けゲームなどをご存じだろうか?
主に男女間の恋愛に主軸をおくゲームを総じてそう呼ぶらしい。これにも細かいジャンルがあるのだが、私が好きなのは恋愛対象は異性の男女のベタな恋愛ゲームだった。
兎に角そのジャンルの新作が出ると聞けば円盤を買い漁り、プレイし…コンプリートすればまた次のゲームを漁る…私は自分の事をハンターと呼んでいた。
しかもクソゲーハンターと。
何故だか、パッケージやあらすじ…キャスト(声優)を見て、いいな~と思って入手したものが5割…いや6割以上の確率で「クソゲー」あくまで私の主観にはなるが、いまいちだと…そういう判断をせざるを得ない作品を手に取ることが多いのだ。
「ちくしょ~やられた!」
と何回円盤をフリスビー(気持ち的には)したか気がしれない。クソゲーを嗅ぎ分ける嗅覚だけはあるようだ…いらない嗅覚だったけれど。
そんな私はコミケにも足繁く通っていた。女性向けゲームの二次創作の薄い本を手に入れる為だ。その日もそんなありふれた日曜日の午後だった。
背中に背負ったリュックには朝から並んで整理券をGETし、手に入れた好きなサークルさんの新刊がぎっしりと詰まっていた。
愛と萌えでリュックの重さが半端なかったけど、家に帰ってゆっくり読むんだ~と…浮かれていて周りを良くみていなかった私も悪かった。
信号が変わり…私は青になった瞬間に横断歩道に足を踏み出していた。
ものすごいクラクションに驚いて目をやった時には大型のトラックが視界いっぱいに見えていた。
ものすごい痛くて熱くて…何が起こったのか分からなかった。不思議な事に痛いくせに頭の中は冷静で…
ちょっと待てよ…今、私トラックにはねられたよね?え?もしかして死なないにしても…事故ったよね?
ヤバーー一?!ちょっとこのまま気を失う訳にはいかないよぉぉぉ…せめてリュックの中身をどこかに隠して…てかさっ!もしさ死んじゃったらさぁ警察から田舎の両親が呼び出されてさ
「これが娘さんの遺品です。」
「………。」
って警察官、両親の前でこのエロエロしい薄い本を白日の下に晒さなきゃならんのかぁ?!そんな恥ずかしめを何で私が受けなきゃならんのだ!いや…そもそもこんな薄い本買うなよ…ってことなんだけどっ!
おやちょっと待てよ?それよりこのまま死んでしまったら私のマンションの更にエロエロしい円盤や薄い本達が遺品整理に訪れた両親の目に触れるんじゃないかっ!しかもしかも
「もう面倒だし遺品整理の会社に頼んじゃおうか。」
とか母上が言い出しそうなので、もしかするとイケメンの遺品整理のプロが来て(妄想です)
「ププッー!なんだこれ、エロっ…この女こんな喪女丸出しのくせに笑える~死んでから皆に見られてやんの!」
とか、死んでからも赤っ恥かかされる羽目にならないとも限らないじゃないぃぃ!
せめてせめて、気絶とか即死は勘弁してもらって、スマホをいじる指だけ動いてくれれば、オタ友の真里ちゃんにメッセージして
「部屋のブツを速やかに処分してくれたまえ。」
とかお願い出来るようにしてから気絶させてぇぇぇ…!
…。
……。
……どうやら私の意識はそこで途切れたようだ。次に目覚めた時は赤ん坊だった。これはもしかすると私の好きな女性向けゲームに有りがちな異世界転生のようだとすぐに気が付いた。
そして赤ん坊として目覚めて真っ先に思ったことが
「円盤と薄い本が白日の下に晒されてしまった…。」
と心底げっそりしたことだった。
赤ん坊の時に色々げっそりはしたけれど、異世界での私は中々のスペックを持って生まれたようだ。
生まれ落ちた家は侯爵家。そこの次女で、ストロベリーブロンドの綺麗な髪を持ち、薔薇色の唇に大きな瞳の睫毛バサバサ、おまけに陶器のようなお肌。
「完璧…外見でもマウンティングの上層部だよ。」
若干3才の子供の言う台詞じゃないけれど…言いたくなるほどの美少女だった。
そして両親に可愛がられ、兄弟達とも仲良く過ごし私は12才で国立の魔術学園に入学した。
これまた良くお見かけするゲームのテンプレの魔法と学園モノ設定の学校だった。私は体内魔力量が高い事と家柄も加味されたのかSSクラス(最上位)に在籍することになった。
そうそう同じミラジェール魔術学園に、この国の王太子殿下、宰相の息子、公爵家の長男、大元帥の息子、おまけに他国の王太子…と本当によくある設定みたいなキラキラした男の子達も通っているようだ。
そう…あくまでようだ、だ。私には関係ない。もちろん侯爵家の家柄で誰かの許嫁になっていてもおかしくないけれど、何故だかそういう気配も無い。
これも乙女ゲーあるあるだが、このキラキラ男の子と何故だか接触する…ということも全くない。そりゃ王太子殿下は夜会でもお会いするし、「ごきげんよう、今日は暑いですね。」くらいの話はするがそれまでだ。
あ、そうそう唯一のキラキラした男子で赤ん坊の頃からの幼馴染はいるっちゃいるが、別に取り立ててすごい事でもない。だって私自身が侯爵家のご令嬢だもんね。
この学園生活で同性の友達もそこそこ出来た。私が身分関係なく誰とでも話すタイプなので、正に身分関係なく数人の仲良しグループが出来て、その子達と毎日楽しく学園生活を過ごしていた。乙女ゲーあるあるのヒエラルキーのトップに立って、庶民を苛める…も勿論、私はしないしバカバカしいと思っている。
そう言う訳で学園生活も順調だったが、個人的に私にはものすごく楽しみにしているものがある。
大人になるともう一回勉強したいなあ〜英語とかもっと真剣に勉強しとくんだったなぁ…とかありませんでしたか?
大人の習い事が盛んなのは…タラレバの後悔から取り戻そうとする気持ちがあるのかな…と思います。
今…正に、私はその状態である。
やばーい勉強楽しーい。これを元の世界の学生時代に声高に叫んでいたら、ヒエラルキーのトップから
「何あれ…一人で真面目ぶってキモい。」
とか言われて苛められてしまいそうだけど、生憎とここは異世界だ。
お陰さまで勉強も楽しく取り組めております。そんな勉強に関しては私と学年の成績の首位争いを競っている方がいる。
名前をレイファ=ヴィッツハンバー。同じクラスの男子生徒だ。先程も言っていた赤ん坊の頃からの幼馴染だ。元気で明るく同性の友達が多く、ヒエラルキーのトップに君臨するタイプのイケメンだった。
普通ならここいらで幼馴染属性キャラの他に『ツンデレ属性』も加味されて
「おいっお前今回の首位は譲ってやるが次は負けないからな!」
とか、怒りながら照れるという神業を見せてくれるところだが、生憎とレイファは普通の反応だった。
「ミルマイアお前、問5はなんて書いたの?」
「3にしたけど…。」
「え?マジで…じゃあさ…。」
とか普通に話しかけてきて、いつの間にやら試験前の勉強は一緒にするようになっていた。
これじゃあ図書館でバッタリ遭遇☆ツンデレイベントや、次の一位を取った者とデートが出来るご褒美イベントなどを起こす機会などは有りはしない。
いやそもそもゲームの攻略キャラっぽいけど、レイファは二次元のキャラじゃないしね。
あ、申し遅れました私ミルマイア=シュトローエンテと申します。只今16才です。
「ミルマイアは次の王家主催の夜会に出席するの?」
「あ、うん。これも侯爵家の令嬢の責務の一つだもんね。でも王家主催の夜会はビュッフェスイーツが美味しいもの。そこは楽しみ。」
「いいな…俺は夜会で楽しみ見出だせないわ〜。今度も一緒に行っていい?」
「良いわよ。」
そうそう、レイファは公爵家の長男なのよね。おまけに王太子殿下と従兄弟で王位継承権も第三位なのよ。本当は偉い方なんだけどね。そしていつも夜会ではグダッとした私達は一緒につるんでいることが多い。
パッと見、レイファも乙女ゲの攻略キャラっぽいけど、私とグダグタしてる感じじゃとてもモテキャラにはなれそうにない。まあ、ここはゲームの中じゃないしね。
「お前らはいいよな〜。」
と、言って教室の窓際でグダッとしていたら魔術師団団長の息子、サエバート=フッシュハシラスと私の女友達、シエナ=カンナベロが配布物が入った段ボールを持って教室に入ってきた。二人は今日の日直だ。
「それ、来月に行く林間学校のアンケートだって?」
レイファがそう言いながら、サエバートの抱えていた段ボールからプリントを一枚抜き取って手に取っている。
「お前らはいいよな…て、何かあったの?」
教卓の上にプリントの段ボールを置いたサエバートは、腕を回しながら口を尖らせた。
「母方の遠縁の女の子が、デビュタントで夜会に出るために田舎から出てくるんだってさ、暫く王都に滞在するからお世話するようにって言われちゃったんだ。会ったことのない年下の女の子なんて、なに話せばいいんだよ〜。」
「うっわ、それ面倒…。」
レイファが顔をしかめた。
「デビュタントって夜会でファーストダンスを踊るんだったよね?」
と、シエナが聞いてきた。そう、シエナのご実家は大衆食堂を営んでいる。シエナは魔力値が高く一般入試で入学してきた、才覚ありの庶民だ。という訳でシエナは夜会に参加したことはないはずだ。
「そうなのよね、例えば年の近い男兄弟でもいてくれたら楽だけど、相手がいないと回り回ってサエバートみたいに顔も知らない遠縁の貴族のご子息に役目がくるって訳ね。」
「因みにミルマイアの時は?」
「真ん中のハルヴェア兄様よ。兄弟がいて助かったわ。」
なるほど〜とシエナは笑っている。
「サエバートがさ、喋り辛い女の子だったら私とリヴィエラがいるから連れておいでよ。」
「そうだね、困ったらミルマイアとリヴィエラに頼んじゃえば?」
私とシエナが笑いながらサエバートに言うとサエバートは助かる〜と破顔した。サエバートも細身ながら中々のイケメンだ。
さて
リヴィエラとは隣国のムスタレント皇国の皇女殿下である。何度も言うが皇女殿下だ。本来なら敬称もつけてお呼びしなければいけない身分の方だし、シエナが親しげに話しかけてもいけない身分の方だ。
リヴィエラは入学式の当日、SSクラスでのクラスメートの自己紹介の時間に
「貴賤関係なく私とお友達になって下さい!宜しくお願いします!」
と顔を真っ赤にして叫んだ。当然SSクラスの8割は貴族のご子息ご令嬢ばかりだ。皆そんな自己紹介をしたリヴィエラに戸惑い、困惑していた。
リヴィエラは段々と泣きそうな顔になっていた。私はその時に意を決して立ち上がってリヴィエラの前に歩いて行ったのだ。
後で不敬だと言われるかもしれない…それならそれで侯爵家を出て一人暮らしをすればいい。
「初めましてミルマイア=シュトローエンテよ。仲良くしてね。」
私がそう言って手を差し出すとリヴィエラは満面の笑顔になって私の手を取った。
「シエナ=カンナベロです。宜しくね。」
手を繋ぐ私達の側にシエナがニコニコしながらやって来た。私はシエナとも握手した。シエナはリヴィエラとも握手した。
その日からリヴィエラとシエナと私、3人は親友だ。最初、クラスの皆は私達の周りに群がった。皇女殿下と侯爵家と言う権力にだ。
そして、皆で仲良くやっていると思っていたのだが…私達が本当に身分の垣根無く付き合っていると判ると、貴族のご子息ご令嬢が文句を言ってきたのだ。なぜ身分の違うものと一緒にいなければならないのだ…と。
すると、それを聞いたレイファが言い放った。
「何故他人に、友達の向き不向きを決められなきゃならないんだよ。少なくとも俺は自分の気の合う奴とつるむよ。」
喧しい令嬢や子息は一人二人…と離れて行った。そして今のメンバーに固定?されたのであった。
「ミルマイア、当日のドレス何色?」
「ラベンダー色かな?」
「タイの色合わせておくわ。」
レイファが何気にお揃いを強調してきた。最近レイファと夜会に出席する時にこういう事前打ち合わせが多いな…。
そして夜会当日
アメジストのタイピンを輝かせて、控えの間に居るレイファの所へ私は近づいて行った。
相変わらずレイファさんは格好いいね。レイファは紺碧色の瞳を私に向けた。
「よおっ、相変わらずここは人が多いな。」
「リヴィエラに会った?」
「ああ、今日は国の兄貴…皇太子殿下が来てるから一緒に来るんじゃね?」
「ミルマイア〜レイファ〜。」
と呼ばれて振り向くとリヴィエラとリヴィエラのお兄様のリスファンテ皇太子殿下の二人が同じ顔でニコニコしながら、歩いて来た。
「お久しぶりでございます、リスファンテ皇太子殿下。」
私とレイファは腰を落として皇太子殿下にご挨拶をした。
「二人共、元気そうだな。」
リスファンテ皇太子殿下も非常に気さくな皇太子殿下なのだ。
「そういえば、昨日シエナのお店にお兄様と夕食を食べに行った時に、シエナから聞いたのだけれど、サエバートが遠縁の令嬢のデビュタントのエスコートするんですってね?」
シエナの実家の大衆食堂に皇太子殿下と皇女殿下が夕食を食べに行った…すごい状況だけど、実はムスタレント兄妹はそのお忍びが大好きらしい。私とレイファも何度も同席をしている。
リヴィエラがそう言いながら周りをキョロキョロと見た。私もつられて一緒に見た。
「そうなのよ、どこにいるのかしらね…。」
その時、小柄な茶色の髪の令嬢と目が合った。その令嬢は目を見開くと大きな声で言った。
「ライバル令嬢だっ?!」
…………ん?
何だって?
女性向け恋愛シミュレーションゲームって実は「異世界転生」も「ざまぁ」も「婚約破棄」それと「悪役令嬢」が出てくるゲームってほとんど無い気がします。元クソゲーハンターなのでプレイ検証済みです(笑)が2020年代では発売されたりしているのでしょうか?