眠れない夜③
「私の父は26歳の時に自分で会社を立ち上げました。それが今の桜木カンパニーです。そして、私は将来この会社を継がなければいけません。」
「他の人が継ぐことはないのか?」
「私は1人っ子ですし、会社の規模が大きいので、私が継がないと後継ぎ争いになるんです。」
「でもだからって。」
「いいんです。勉強自体は嫌いじゃないですし、私が産まれた時からもう既にこうなることはほぼ決まってましたから。お父様とも仲は良いんですよ?普通に色々な話をしますし。ただ、少し過保護なので本当はお父様は私を高校には行かせずに家で家庭教師を雇うつもりだったらしいんですけど、私が高校には行かせてって言って渋々白川高校の特別コースならいいって許可をくれたんです。」
「そんなことがあったのか。」
「それぐらいお父様は過保護なんです。それで私彼氏がいた事がないし、恋をしたこともないんです。」
「・・・なんか話飛んでないか?」
「まあ、聞いてください。さっき、私は後を継がないといけない。その理由は後継ぎ争いを起こさないためって言いましたよね?」
「ああ。」
「つまり、私が後を継いでも私の子供がいなければまた後継ぎ争いがおこるんです。まあ、そうでなくとも周りは後を継ぐなら結婚しろとか言ってくるのは分かってるんですけど。」
「酷い親戚だな。」
「ですよね。それで今まで彼氏どころか恋をしたことがない私を過保護なお父様が心配して見合い話を持ってきたんです。」
「なるほどな。」
「で、その話を教えられたのが今日の朝だったんです。婚約者の方とそのご両親と1週間後に会う予定になってるから準備しとけって。多分日曜日に一緒に食事に行くつもりなんだと思います。」
「それはまた随分急じゃないか?」
「私も、そう思ったんです。私は、恋をして彼氏を作って普通に恋愛をして結婚したいと思っているんですけど、それはお父様も知っているのできっと私が婚約破棄しようとすると思って先に相手と話を進めたんじゃないかって親友が言ってました。」
「まあ普通は嫌がるよな。」
「はい。私ももっとはやく知っていれば婚約破棄してました。だけどもう相手と話が進んでいるのでここで今私が無理やり婚約破棄しようとすると桜木カンパニー自体に影響が出るかもしれないんです。」
「じゃあもう婚約破棄出来ないのか?」
「お父様は今回の話を私が結婚出来ないんじゃないかと心配して持ってきたんです。だから、彼氏を作ってお父様に紹介したら説得出来るかもしれないんですけど何せ私は恋愛経験ゼロですから1週間で彼氏なんか出来るわけがないんです。だからもう諦めるしか・・・」
「なるほどな。・・・要は彼氏を桜木のお父さんに紹介出来ればいいんだろ?」
「はい。」
「俺が彼氏のふりをするのはどうだ?」