眠れない夜①
私はスマホを見ていた。
帰ってすぐ自分の部屋のベッドの上にダイブしてスマホを開いてからかれこれ15分画面は変わっていないのだが私は気づいていなかった。
画面に映るのは先程スマホに登録したばかりの電話番号とメールアドレス。
つい顔がにやけてしまう。
初めての身内や使用人以外の異性の電話番号とメールアドレス。
まさかこんなに唐突に登録することになるとは。
思えば私、結構矛盾してるんだよね。
恋愛して結婚したい。
なのに、男子が苦手。
だけど、岩村先輩とは普通に話せた。
というか、楽しかった。
電話番号とメールアドレスを普通に交換出来た。
これも嬉しい。
あれ?もしかしなくても私が普通に話せる同年代の異性って岩村先輩だけだよね?
これって・・・
その時、持っていたスマホがバイブ音を鳴らした。
思わずビックリしてスマホを落としてしまった。
もう、誰だよ!驚かさないでよね〜、って
岩村先輩!?
心の準備が出来てないよ〜!!
まさかこんなに早く連絡してくるとは思わなかった。
「はい、桜木です。」
「岩村だ。明日について話しておこうと思ったんだが今時間は大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですよ。」
「桜木は部活とかは入ってなかったよな?帰りは迎えも来ていないみたいだし、明日はそのままうちに来るか?」
え?なんで知ってるの!?
確かに家でも勉強するよう言われているから部活は入っていない。
でもさすがに四六時中付き人という名の監視が付きまとうのは息が詰まるから、お父様に何度も交渉をして渋々だが帰りは帰る時に連絡することを条件に、付き人はなしにしてもらっていた。
だけどもちろん先輩にはそんなこと言ってない。
「あの、先輩どうしてそんなこと知ってるんですか?確かに合ってますけど。」
「いや、その・・・や、やっぱり噂になってたりするんだよ。朝は付き人に送って貰っているのに帰りは歩いて帰ってるって。」
なんでみんなはそんな細かい所に気づくんだろう?
私なんか見てたって何も面白くないのに。
「みんなよっぽど暇なんですかね?私のことをそんなに見てるなんて。何も面白くないだろうに。」
「いや、だから、それは桜木がかわ・・・、いやなんでもない。」
?
どうしたんだろう?
なんか言葉に詰まってるけど。
まあフォローも出来ないんだろう。
やっぱり先輩も、そう思ってるんだろうな。
「あ、それで明日は直接来るのか?」
あ、そうだった。
めちゃくちゃ脱線してたわ。
遅くならなければお父様も怒らないでしょう。
きっと。
「はい。そうします。先輩はそれでも大丈夫なんですか?」
「俺は大丈夫だ。じゃあ明日。」
「あ、待って!」
とっさに言葉が出ていた。
言ってしまってから青ざめる。
引き止めてしまった。
先輩が “じゃあ明日” って電話を切ろうとした時、
まだ話していたいって思ってしまった。
先輩も勉強とかしないといけないだろうに。
「どうかしたのか?」
しょうがないこうなったら正直に言おう。
「えっと、・・・・・・出来たらまだ話していたいなぁ〜なんて・・・」
「・・・」
口に出してから急に恥ずかしくなってきた。
何言ってんの、私!?
先輩も何も反応してこない。
きっと呆れられただろうな。
「すみません、迷惑ですよね。さっき私が言ったこと、全部忘れてください。じゃあまた明日!」
沈黙に耐えきれなくてまくし立てて言った。
だけどきっと先輩もほっとしてるんじゃないのかな。
やっぱりまだ話していたいけど、迷惑はかけられない。
じゃあ切るか。
たのしかっ「待って!」
え?