運命の出会い?②
凄・・・
誰が弾いてるんだろう?
私は今音楽室の前で聞き耳を立てている。
いや、決して悪いことをしようというわけではないよ?
高野先生に渡された本を返すために来たんだけど、
ピアノの音が聞こえてきた。
それがすっごく上手くて綺麗な音だったからついね・・・聞き入ってしまった。
でも、ほんとに上手いな。
この学校にこんなにピアノが上手い人がいるなんて聞いたことないけど。
コンクールとか出たら結構いい賞とか狙えそう。
あ、そうだ。本返さないと。
「ガタッ。」
まずい。ドアにあたってしまった。
「誰かいるのか!?」
バレちゃった。
「すみません。あまりにも綺麗な音だったのでつい聞き入ってしまって・・・。」
「その服は特別コースの服か。」
「はい。あなたは一般コースなんですね。」
白川高校は特別コースと一般コースで制服の色が違う。
使われている地の色が特別コースは白なのに対して、一般コースはグレーになっている。
だから、人目見てどちらのコースがわかる。
だけどこの人、どこかで見たことあるような・・・
でもこんなに顔が整っている人私の知り合いにはいないはず。
どこであったんだろう?
私が余程不思議そうな顔をしていたのかその人が教えてくれた。
「俺は岩村貴斗この学校の生徒会長を務めている。」
あー、なるほどね。行事とかで挨拶してるのを見たことあったから何となく覚えてたんだ。
だとしたら思い出せない私って結構やばい?
いやいや、
近くで見たことも話したこともなかったしな〜。
まあ、大丈夫だろう。大丈夫だと信じたい。
というか先輩じゃん!やばいなこれ。
今の私、めっちゃ失礼なやつじゃん。
「おい、普通自己紹介されたら自分も返すものなんじゃないのか?まあ知ってるけどな。桜木花奈、で合ってるだろ?」
「すみません!ええと、さくらぎ・・・って、ええ!?なんで私の名前知ってるんですか?まさかどっかで話したことあります?忘れててすみません!」
いよいよやばい。こんな美形と話したこと忘れてるのか、私。
じゃなくて、失礼にも程がある。
私、記憶力はいい方だと思ってたんだけどな。
「いや、直接話したことはない。」
あ、そうなの?なら良かった。
いや、良くないぞ?なんで先輩は私の事知ってるんだ?
「どうかしたか?」
「あのー、それならどうして私の名前を知ってるんですか?」
「あ、いや・・・えっと・・・」
どうしたんだろう?なんかめっちゃしどろもどろになってるし見るからに慌てて顔も赤くなってる。
「大丈夫ですか?顔赤いですよ?体調悪いなら保健室行きます?」
「え?ああ、大丈夫だから気にすんな。で、なんで桜木のことを知っているのか、だったな。」
「はい。」
「桜木、いつも高そうな車でスーツ着た付き人らしき人に送って貰ってるだろ?特別コースでもそういう奴あんまりいないから生徒の中で有名なんだよ。」
「そうなんですか?」
そんなこと知らなかった。
道理で朝、視線を感じるわけだ。
でも私だってしたくてしてるわけじゃないのよねー。
お父様の命令だもの。
別に普通に歩いて行けるのに。
「あと・・・桜木は勉強出来るし、その・・・可愛いから。みんな知ってるんだよ。特に男子は。」
「まさか(笑)でも、お世辞でも嬉しいです!ありがとうございます!」
勉強は確かに将来のため頑張っている。というか、
やらされている。お父様に。
だけど私が可愛いなんてあるわけがない。
可愛いのならとっくに恋愛してるはずだもの。
私は、告白されたことなんてないしね。
「本気なんだけどな、まあいい。それでどうして桜木はここに居るんだ?」
「高野先生に頼まれて本を返しに来たんです。そうしたらピアノが聞こえてきて、本当にすみませんでした。でもとても素敵でした。先輩がピアノ弾けるなんて知りませんでした!」
そう言ったら、岩村先輩の顔が曇った。
もしかして触れられたくなかったの?