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超短編と詩とか童話

赤ずきんと空腹のオオカミ

 昔々、あるところに一匹のオオカミがおりました。


 オオカミは森の中で他の仲間と一緒に暮らしていました。けれども、群れの中で一番弱いそのオオカミは、仲間たちからよくいじめられていたのです。仲間たちはそのオオカミに飛びかかり、上に乗っかります。やめてほしいと泣いても、どいてくれないのです。


 それに、エサを食べるのも仲間の中で一番あとなので、いつもお腹をすかせておりました。


 あるとき、オオカミは空腹に耐えられなくなり、群れから離れて一人でエサを取りに行くことにしました。


 森の中をしばらく進むと、赤ずきんをかぶった小さな女の子が一人で歩いているところを見つけました。


 オオカミは、これは幸運だとばかりに女の子に飛びかかります。赤ずきんはびっくりして転び、泣き出してしまいました。


 すると、オオカミは自分がいじめられているときのことを思い出しました。かわいそうになって、赤ずきんを食べるのをやめました。そして、彼女が泣き止むように自分の顔を彼女の顔にこすりつけたのです。


 赤ずきんは、オオカミの毛のやわらかい感触や肌の温かさを感じて、すっかり泣き止みました。そして、持っていたりんごをオオカミに差し出します。オオカミはそれまでりんごはあまり好きではありませんでしたが、このときのりんごはとてもおいしく感じました。


 赤ずきんはオオカミに「私の家で一緒に暮らしましょう」と言いました。オオカミは迷いましたが、彼女に着いて行くことにしました。群れの仲間の所にはもう戻りたくなかったのです。


 しかし、赤ずきんの家につくと彼女のおばあちゃんが大変な勢いで怒り始めました。オオカミと一緒に暮らすのは危ないというのです。


 赤ずきんは悲しくなって泣き出しました。オオカミはもう一度、自分の顔を女の子の顔にこすりつけました。赤ずきんは一度泣き止みましたが、すぐにオオカミの体を抱きしめてまた泣き出してしまいました。オオカミはそのままじっとしていました。


 やがて、赤ずきんが泣きつかれて寝てしまうと、オオカミは彼女の腕をそっと振りほどいて家を出ていきました。


 その後、赤ずきんは毎日、森の中へオオカミを探しに行くようになりました。オオカミはそんな赤ずきんの姿を遠くから見ていましたが、近寄ることはしませんでした。自分が近づくと彼女に迷惑がかかると知っていたからです。


 何年かの年月が過ぎました。赤ずきんの体も大きくなりました。オオカミはずっと一匹で暮らしていましたが、年老いてエサを取ることも満足にできなくなっていました。


 そんなある日、ついに赤ずきんは森の中でオオカミを見つけることが出来ました。オオカミは逃げようとしましたが、もうゆっくりと歩くだけで精一杯だったのです。


 赤ずきんは弱っているオオカミの体を抱きしめました。赤ずきんの腕の中で、オオカミはオンオンと泣き出しました。


 赤ずきんはオオカミを家に連れて帰りました。おばあちゃんは年老いて弱ったオオカミの様子を見て、赤ずきんと一緒に暮らすことを許してくれました。


 それからオオカミが亡くなるまでの間、赤ずきんとオオカミは、それはそれは幸せに暮らしました。


 おしまい

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― 新着の感想 ―
[良い点] うぅ……なんとも心の温まる話ですね。 矢張り、ハッピーエンドが一番良いのかもしれない、と思わせて頂ける作品でした。 ほっこり。 [一言] 先程はありがとうございました。 もし宜しかっ…
2019/02/04 00:36 退会済み
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