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第二話:魔法

重厚な造りのドアをノックする。


「ヤマトです」


「どうぞ」


返事はすぐに返ってきた。少々気が重いけど、ここは腹をくくるしかない。

失礼します。と言って部屋にはいった僕の視界に飛び込んできたのは、膨大な量の書物と、椅子に座って本を読むフレイアさんだった。


「呼び出してごめんなさいね。次期魔王であるあなたの場所に私が赴くのが本来なのに」


「いいえ、僕はまだ魔王になると決めたわけじゃないんですから、気を使わないでけっこうですよ。だから、僕のことは魔王とかじゃなくて、ヤマトと呼んで下さい」


「そう。わかったわ、ヤマト君」


上品に微笑むフレイアさんは、いつ見ても綺麗で大人な女性だ。この人に見つめられると、なんでもないのに恥ずかしくなってしまう。


「ところで、アギト将軍はどうしてここに?」


不思議そうに首を傾げるフレイアさん。そういえばアギトが居ることを忘れてた。先ほどまでなにやらぶつぶつ言っていたのに、部屋に入ってからは一言もしゃべらない。どうしたの・・・て、え!? 隣を見たら、アギトがゆでだこのように真っ赤になっている。


「や、やあフレイア。ごごご機嫌う、うるわしゅうどうかな?」


なんて不自然なんだ! 動きもなんだかぎこちないし、さっきまでの悪巧み顔が嘘のように緊張した顔に変わっている。僕はこんなあからさまな態度をする人は初めて見た。


「相変わらず変な人ですね。あの、用が無いのなら、少し席を外してもらえますか?」


少し困った顔でそう告げるフレイアさん。アギト、君はなんて可哀そうな男なんだ。でもね、フレイアさんがそう言ってんだから早く出てけ。僕はまだ肩の痛みを根に持ってんだぞ。


「……はい」


がっくしと肩を落として部屋を出て行くアギト。その後姿はどうしようもないほどの哀愁に満ちていた。


「さて、それではさっそくだけど、魔法を使ってみてくれる?」


アギトが出て行くのを確認すると、フレイアさんは僕に無理難題をけしかけてきた。魔法を使えって言っても、どうすればいいのか僕知りませんけど?


「僕魔法なんか使えませんよ?」


正直に言ってみたが、なにやらフレイアさんは難しい顔をしてしまった。


「おかしいわね。この本によるとそろそろ安定してくる頃のはずなんだけど・・・」


なんの話なのかさっぱり解らない。


「あの、どういうことなんですか?」


「実はね、この本には歴代の魔王について書かれているの」


そういって手に持ってる分厚い本をぱらぱらとめくる。


「魔方陣で召喚されて転生した者の魂、精神、肉体はとても不安定な状態になるの。現にヤマト君も錯乱状態に陥ったじゃない?」


そういえば、確かにあのときは凄く精神が不安定だった気がする。でもそれは、いきなり知らない場所に来ちゃって、しかも魔族を初めて見てびっくりしたからじゃないのかな。それに額の瞳だって…。


嫌なことを思い出して額を押さえると、額に当てた手をフレイアさんに優しくなでられた。そういえばあの時は抱きしめてもらったんだっけ。

思い出して恥ずかしくなった。

やっぱり錯乱してたからしょうがないってことにしておこう。

僕が額から手を放すと、フレイアさんは説明を再開した。


「そもそも魔法は精神力で生み出すもの、だから、転生した直後は無理でも、今頃は安定して来てるはずだから魔法を使ってもらって、確認しようと思ったのよ」


おかしいわね。と本を読み直してるフレイアさん。どうやら、互いの認識に相違があるようだ。


「あのー、一応確認したいんですけど、僕魔法なんて使ったこと一度もないですよ」


僕の言葉に、フレイアさんは一瞬きょとんとすると、え? て顔をした。


「でもあなた、魔王に選ばれる程の魂の持ち主なのよね?」


「そんなこと言われても、魂のことなんて僕はわからないし、使ったことが無いものは無いとしか言えないですよ」


「一度も無い…、それなら法術は?」


「その法術が何なのか知らないけど、とにかく魔法っぽいのは出来ませんよ」


どうやら衝撃的な事実だったらしく、フレイアさんは驚愕に目を見開いている。


どうしようかと悩んでるフレイアさんに、僕は提案をすることにした。


「とにかく、本来なら今頃は魔法が使えてるはずなんですよね? ならちょっとやってみるんで、どうすれば魔法が使えるか教えてもらえませんか?」


「教えるって言っても、私達は殆ど本能で魔法を使ってるから…。そうね、じゃあ今から私が魔法を使うから、何となくでいいから真似してちょうだい」


フレイアさんが手を広げると、そこから小さな光の玉が発生した。

簡単そうだけど、どうしたらそうなるのか全くわからない。まあ、何となくって言われてるし、どうせ魔法なんか使ったことがないんだ。なるようになる。

僕は目をつぶると、自分の掌から小さな玉が出るのを想像した。そして、その玉が輝き出すイメージ。


光れ、光れ、光れ。そう念じていると、不意に温かい光を感じた。恐る恐る目を開くと、そこには空中に浮かぶ小さな光。


「これが、魔法」


その光の玉に僕が触ろうとした瞬間――。


カッ!


不意に視界全体をおおう真っ白な光。突然肌に感じる熱。一瞬光が膨らんだと思ったら、爆発的に輝いたのだ。そしてすぐにその勢いを無くした光は、何も無かったかのように消えてしまった。


「い…今のは、成功したんですか?」


反射的に目を隠した手を下ろす。

なんか明らかに暴走したっぽいけど、これでいいのだろうか。

フレイアさんを見ると、やっぱり難しい顔をして考えこんでいる。


「判断しづらいわね…。あなたの場合、暴走した理由がまだ身体が安定してないからなのか、それとも初めて魔法を使ったからなのか、あとは、精神力が魔力に追いついていけないからなのか、様々な要因があるからわからないのよね。全部、ていう場合もあるでしょうし」


うーん、それは難しい問題だ。どうやら魔王に選ばれる人は、魔法が使えて当然って人ばかりだったようだ。僕のように魔法を全く知らないというのは稀なんだろう。

でも、そもそもなんでそんなことを調べるのだろうか。もし不安定だったとしても、そのうち勝手に安定してくるものらしいし、別に放っておけばいいのに。


「しょうがないわね、もう少し調べてみましょう。ちょうどアギト将軍もいることだし、続きは訓練場でさせてもらうといいわ」


僕の思いはよそに、フレイアさんはそう言うと部屋から出て行ってしまった。




小説を創作するというのは、すごく大変ですね。

自分の中でストーリーは出来てるのに、そこに肉付けをするというのがすごくまどろっこしく感じます。

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