魔人アギト(2)
前回の続きです。そのうち一つにまとめるかもしれないです。
「ふー。食った食った」
満足そうにお腹をさするアギト。食堂は食い散らかされた食べ物によって、悲惨なことになっていた。
皆、もっと綺麗に食べようよ。特にアギト。
「ヤマト様、そろそろフレイア様の所に行ったほうがいいんじゃないですか?」
ミーナが食器を片しながら言った。
「そうだね。そろそ」
「ちょっと待った!」
そろそろ行こうかな。と僕が言おうとしたのを拒んだのは、アギトだった。何やら真剣な表情だ。
「フレイアの、所に、行く、だと…?」
くっくっく。と急に笑いだすアギト。いったいどうしたのだろうか。ミーナが変人を見るような視線を送っているのを、気にもとめずに笑っている。
「そうだよ。アギトは訓練だったよね。じゃ、僕はもう行くよ」
僕は無視してさっさと行くことにした。変質者には近寄らないように、て小さい頃から育てられてきたからね。しかし、回れ右した瞬間物凄い力で肩が掴まれた。
「俺も行く」
「うわー」
今言ったのは僕じゃない。ミーナです。そんなことより、アギト威圧感やばいよ。いくらなんでも必死すぎるだろ。てか痛っ! 肩が痛いっ!
「わかったよ! ついてきていいからはなして!」
ぱっ。と肩を掴んでいた手が放された。あーあ、絶対赤くなってるよこれ。アギトを睨むが、まったく気にした様子はない。むしろ獲物を追い詰めたかのようににやにやしている。それすっごい悪そうな顔だからやめたほうがいいよアギト。
「いてて。でもアギトはこの後訓練じゃないの?」
「大丈夫。食後の休憩があるから」
ちくしょう。そんだけ元気あるなら休憩いらないだろ。なんだか、このままフレイアさんの所についてこさせたら、やっかいなことになりそうだ。それはアギトの邪悪な顔を見れば明らかだ。どうにかならないかと、ミーナに助けを求めようとするが、なぜかさっきまで居たはずなのに居なくなっている。逃げたな、裏切り者め! 僕一人に変人の相手を押し付けやがって!
「…はぁ」
僕はがっくりと肩を落とすと、諦めてフレイアさんの所に行くことにした。やっぱりこんな人にはなりたくないと思った。