表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

城下へいこう!(3)

「ねえ、あれは何の店?」


僕は気になる店を発見したので、ミーナに質問してみた。


「あそこは武器屋ですよ。入ってみますか?」

「うんっ」


これでもかといわんばかりに即答すると、僕はミーナを引っ張って店に入っていった。

店内は大量の武器で溢れかえっている。そして、そのほとんどが剣のようだった。最近剣術を覚えたものとしては、これほど興味をそそられる物は無いだろう。何を見ようかと店内を見回していると、入り口からアギトが入って来た。他の隊員は入り口前で待機してる。


「ようお二人さん、今日はデートかい?」


ニヤニヤとむかつく顔して、白々しく言う。自分だってフレイアさんの前では、びっくりするくらい顔を赤くするくせに。


「…覚えてろよ」


僕は復讐を心に誓った。


「…それにしても、なんでアギト達はもっと近寄ってこないのさ。僕の護衛で来てるんでしょ?」

「そんなもん、少し離れてたほうが護衛しやすいからに決まってんだろ。お前にはミーナが付いてるんだし、俺たちが近くに居たってやりづらいだけだ」


近くある適当な剣を見ながら、アギトは当たり前のことのように答えた。

そんなもんなのか、と僕は納得することにした。そんなことよりも今は剣を見なくては。


「ヤマト様は、武器に興味がおありなんですか?」


訓練に使っている木剣を、そのまま金属に変えただけのようなシンプルな剣を見ていると、ミーナが横から覗いてきた。


「うん。ほら、アギトとか他の隊員の人達は、皆自分の剣を持ってるでしょ? だから、僕も自分専用の剣がほしいなーってね」


腰にある、なんのへんてつもない剣を叩きながら言う。これはブルドが持ってきた、由緒ある『訓練生専用』の剣らしい。なんでも、何代か前の魔王にすごい剣豪の人が居たらしく、その人が弟子に渡した物らしい。

ぶっちゃけ、有難くもなんともない。だって刃こぼれしてるし。


「うーん。確かにヤマト様の剣よりも、あたしの包丁の方が強そうですね」


確かに。ミーナは腰の後ろの方に、包丁をいくつか取り付けているのだが、なんだか二刀流みたいでかっこいい上によく切れそうだ。


「…二刀流もいいかも」


そんなことをぼやいていたら、アギトに後ろ頭を叩かれた。


「やめとけ、お前には無理だ。それより、剣が欲しいんだったらこれがいいんじゃねーか?」


そう言ってアギトが持ってきたのは、なにやら呪われてそうな、髑髏の装飾がされた剣。あまりの禍々しさに、触るのもはばかれるそれは、柄の部分が骨製だ。

これはふざけてるのだろうか。まあ、顔を見る限り、これはふざけてるね。


「もしアギトの剣と交換してくれるなら、それでもいいよ」


アギトは露骨に顔をしかめた。アギトの剣は、魔界でも珍しい魔剣らしい。雷帝剣フィビト、それが魔剣の名前であり、アギトの相棒だ。

しぶしぶと不気味な剣を元の場所に戻すアギト。

僕は結局、はじめに持っていた剣を買った。手に馴染むし、なによりも安かった。弘法筆を選ばずとかっこよく言えたらいいけど、実際は僕の剣の腕だったら、この程度が妥当だろうといったところだ。

人魔族の店主にお金を渡して店をでる。

初めて使う初任給のお金。そして魔界での初めての買い物。僕は今、魔界を満喫しております。




その後も、様々なものを見て回った。魔力で水を操る幻想的な噴水や、様々な小型の魔獣を売ってるペットショップ、中でも占い師がいたのには驚いた。もちろん占ってもらった。恋愛で僕とミーナの相性を占ったら、まあまあと言われた。……まあまあねぇ。


全てが新鮮だった。たくさんの人が話しかけてきて、いろんな魔族を知った。僕の胸は、ずっと高鳴りっぱなしだった。

これが、魔界に住む住人の生活。もっと知りたい、もっともっと発見していきたい。


「こんな楽しそうなヤマト様、初めて見ました」


不意にミーナが言った。うれしそうに笑う彼女。今の僕には、彼女のしぐさの一つ一つも新鮮に見える。いや、そもそも、こんなにはっきりと見るのは初めてかもしれない。

なんて表現したらいいかわからないけど、そう、まるで目の前に下ろされていたフィルターが剥がされたかのように、世界が色鮮やかに見えるのだ。


「うん、僕もこんなに楽しいのは初めてだよ」


繋ぐ手に少し力を籠めて、僕は笑った。この世界に来て、初めて心の底から笑ったきがする。なんともすがすがしい気分だ。



見上げれば、視界に入る紅い月。さっきよりも色鮮やかに輝くその月を、僕は少しだけ好きになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「魔王な少年」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ