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プロローグ〜始まりの日〜

初めての小説ですので、どうか暖かく見てやってください。

気が付いたら、知らない場所にいた。冷たい石造りの床に描かれた、幾何学な文字から溢れ出す光によって照らされた薄暗い部屋だ。


頭がぼーっとしてよく考えれない。ここは、いったいどこなんだろう?


「……この少年が――なのか」


男の低い声が部屋に響いた。

驚いて顔を上げてみれば、見知らぬ恰好した男と女がいた。


「…どうやらそのようね。ちゃんと紋章もあるし、間違いないでしょう」


いったいこの二人は何を話しているんだろう。紋章? まるで耳栓してる時みたいに聞き取りづらい。それに恰好だって変だ。男のほうは筋骨隆々でとにかくでかい。上半身裸でいるのはともかく、肌が人のそれとは違い、鱗のようなもので覆われているみたいだ。顔も爬虫類に近い。

女の人のほうは肌などは普通だし、顔だってものすごい美人だけど、なにやら尻尾らしきものが生えている。でも、何よりも印象的なのは、腰まで伸びた赤い髪の毛が、ほのかに輝いているところだろう。


しだいに視界が狭くなり、身体から力が抜けていく。


そこからは思い出せなかった。




改めて今自分の居る部屋を見渡してみた。

随分豪華な部屋だ。今乗ってるベッドだけでも僕の部屋くらいの広さがある。布団だって信じられないくらいふかふかだ。壁もあの石造りのものと違って、温かな色合いをしている。


「ここどこ…?」


言ってみて、随分ひさしぶりに自分の声を聞いた気がした。

しばらく考えてみたが、全く思い浮かばない。何もしないのも暇だから部屋を眺めることにした。


どれくらい、そうしていただろう。コンコン、と扉を叩く音がして、扉が開いた。


「……っ!」


入ってきた人物を見て、息が詰まった。その姿が酷く醜かったからだ。

潰れた鼻に、ボコボコの顔、髪の毛は殆ど生えてない。

身長は小さいみたいだけど、洋服から覗く腕や足はごつごつしていて、指は短く太い。


「おや、起きておいででしたカ」


「……」


僕が驚きで声が出ないのをよそに、その醜い人物(?)は台車を部屋に入れる。どうやら食べ物が乗ってるみたいだ。


「貴方は丸一日眠っておられたのでス。まずは食事をして体力を回復するといいでしょウ。消化によいものを用意しましタ」


そう説明すると、次々と料理を並べていく。

お粥のようなものに、スープと少量の野菜を添えたものだ。

料理の匂いで食欲がわく。体調はいいみたいだ。

食べたいけど、今はそれよりも大事なことがあった。


「…あ、あの!」


喉がカラカラで声が掠れた。

すっと差し出された水を受け取って一気に飲んだ。


「ありがとうございます。えっと、聞きたいんですけど、ここってどこですか?」


僕は一番の疑問を口にした。

でも、返ってきた返事には僕が聞きたかったことよりも、さらに重要な単語が含まれていた。


「ここは魔王城ですよ。『魔王』様」


心臓が、一瞬だけ強く脈動した。


魔王とは僕のことを言っているのだろうか。

あまり長くない人生だけど、十四年生きて一度もそんな名前で呼ばれたことはないはずだ。

じゃあなんで魔王って呼ばれてどきってしたんだろう。


「自己紹介が遅れましタ。ワタシの名前はブルドと申しまス。身の回りのお世話をさせていただきますので、気付いたことがあったらなんなりと申し付け下さイ」


なんだろう。自分に関係あるくせに、勝手に話が進んでいく。何を言えばいいかわからなかった。恐い。こいつはなにを言ってるんだ。胸がムカムカする。吐き気がする。背中に冷や汗が流れた。


「…母さんは?」


やっとのことで絞り出した声は震えていた。やっと出た言葉が『母さんは?』なんて情けないにもほどがあるけど、ただ無性に心細かった。なんだか自分がものすごく遠くに来た気がした。

早く帰りたい。一人でもいいから知ってる人に会いたい。ここは僕の居場所じゃない。考えれば考えるほど思考が空回りする。


世話ってナンダ? アンタなんか知らナイ。ココは何処? 魔王城なんかシラナイ。僕をカエセ。ボクのイバショへカエセ。


「お、落ち着いて下さイ、魔王様っ」


「うるさい! 僕にさわるな! 僕は魔王なんて名前じゃない!」


差し出された手を払いのける。ブルドが何やら僕の顔を見て驚愕している。


「…いっ!」


突如額に刺すような痛みが走る。痛くて押さえた右手を伝って血が流れてきた。


「なんだよ、これ…」


「これはいけなイ! 急いで医者ヲ――」


ブルドの言葉を無視して僕は部屋にある大きな鏡の前へ移動した。

心臓が早鐘を鳴らす。呼吸がしずらい。

自分の姿を見たら何かが決定的に壊れてしまう気がする。






――そして僕は見てしまった。






――鏡に映る自分の姿を。






――鏡に映る僕の額で、あるはずのない『第三の瞳』が血の涙を流していた。









有り得ない姿が鏡に映っている。灰色の髪、紅い瞳、そして――。


「これ…誰?」


鏡に右手を伸ばす。血の手形ができた。

顔は一緒なのに、様子が全く違う。髪は染めたのかもしれない。目はカラーコンタクトかもしれない。でも、この『第三の瞳』だけは僕の常識で説明できるものじゃなかった。


不意に、扉が乱暴に開かれた。


「どうしたの!?」


あの石造りの部屋にいた女の人が、慌てた様子で部屋に入ってくる。


「そ、それが急に『魔眼』が開きましテ……」


どうやらブルドが呼んだらしかった。


「『魔眼』が? まだ覚醒には早過ぎ――っ!」


鏡ごしに目があった。驚愕した顔。そうだ、三つも目があるなんて気持ち悪いよ。

鏡に映る額の瞳が、ぎょろぎょろと高速で動く。

気持ち悪い。気色悪い。こんなの僕じゃない。こんな、こんな――。


鏡に亀裂が入る。すでに血だらけだった右手から、さらに血が出た。


血は紅い――。鏡に映る僕の目と同じ色。視界が紅く染まっていく。世界が崩れていく――。


ふと、体が温かいもので包まれた。一気に視界が戻っていく。

僕は、あの女の人に抱きしめられていた。

後ろから包み込むような格好。鏡ごしに、また目があった。決して気持ち悪い物を見る目じゃない、優しい目。そしてなにより、僕と同じ紅い瞳。


何故か、自然と心が安らいでいった。

あたたかい。

感じられるぬくもりが、荒れた僕の心を落ち着けてくれる。


自然と涙が流れてきた。


それから僕は、しばらく泣き止むことが出来なかった。


いつの間にか眠っていた。










夢を見ていた。


いつもと変わらない日常。


朝起きて、ご飯たべて、学校の準備して、母さんに遅刻するぞと怒鳴られながら登校する僕。


友達と馬鹿なことで笑って、気になる女の子と話すたびにドキドキして、まっとうな中学生生活をしている僕。


いつの間にか、僕は僕を見下ろしていた。


黒髪黒眼で、中学生にしてはちょっと小さめの僕。


そんな僕を見下ろしている『僕』は、一体なんなんだろう。


いや、そんなのわかってる。


魂が理解している。


今の『僕』は、『人間』を辞めてるのだ。


父さん、母さん、ごめんなさい。僕、魔王になりました。

なんだかへんな文章。

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