戦闘と過去
今回は少し短いです。あと、少しシリアスです。
学術都市外。
エアは幾つかの小高い丘がある荒野に囲まれている。
道の整備はされてるけど、一歩外れれば砂や大量の石で足場に不安を覚える場所。
「ここら辺で出る敵は・・・」
──ピィーーーッ!
高い鳴き声が聞こえる。これは鷲とかの声かな。
空を見上げ、探そうとしたその時。
「ぐっ・・・!?」
ガシッと肩が何かで食い込むように掴まれ、足が地面から離れる。
メキメキと肩に食い込む何かは、鳥の脚。爪が肩の肉を突き破って、無理やり持ち上げてる様だ。
「はっ・・・《ツヴァイ》」
───《突撃鳶》
ツヴァイを呼び出し、翼で上にいるであろう鳥に向かって無理やりアーツを発動する。
頭上に突き出すように翼を折り曲げ肩を掴む足ごと巻き込み圧を加え、へし折ろうとする。
──ピャーッ!?
「逃がさないよっ!」
肩を離し、振りほどこうとする鳥・・・鷲、かな。
その鷲の脚を掴み、へし折りタイムは続行する。
──ピャッピャッ!!??
「あは。折れちゃえ、折れちゃえ!」
大木の枝くらい太めの脚。それがゆっくりと、ゆっくりとヒビが入り、折れていく。
痛みに鳴き声も煩くなり、飛行バランスが崩れてどんどん地面が近付いてくる。流石にこのまま地面に落とされたら、即死。
仕方なく、脚を離して空へと逃げる。
──ピィーーーッ!!
痛みが無くなったのをいい事に大きく鳴き、旋回して突撃してくる。やっぱりデカめ・・・というか馬より大きい鷲とか本当に化け物だよっ!
武器庫からダークブリンガーを取り出す。あぁ・・・ちゃんと装備するのは初めてかな。軽く手元で感触を確かめてから構えて敵を見据える。
「よっと・・・」
突撃を大きく避け、もっと上へと逃げる。
振り向いて位置を確認しながら、下から突撃してくる鷲を再び避ける。そしてそのまま翼を畳み重力に身を任せる。耳元を風が音を立て轟々と通り過ぎ、自ら地面へと落ちていく。
それを追いかける様に鷲も翼を畳み急降下してくる。
速さは風の抵抗を減らしてるあっちの方が上。・・・それが仇となる。
目の前まで迫る鷲。わたしはパラシュートでも開くかのように、翼を広げて風の抵抗を一気に高め落下速度を落とし、ダークブリンガーを突撃してくる鷲の軌道に置く。
「ふっ!」
擬音を当てるのであれば、ズパンッ! と言う風に綺麗に鷲の腹をかっさばき、赤黒い液体が撒き散らされ虚空へと消えていく。
鳴き声をあげる間もなく、飛ぶことすら出来なくなった鷲は地面に激突して、砕け散る。
「いぇい、勝利っ!」
《傷、治療しますね》
「うん、おねがい」
ユラが出てきて、肩の傷を治してもらう。
んー。ちょっとレベル高めだよね。もう少し弱い敵のSAとかあれば良いんだけど。
ダークブリンガーを武器庫に納めてその場で検索をかける。クーを助けなきゃ行けないんだから・・・その為なら別にゲームを楽しむ必要なんか今は無い。
「あった。・・・さっきの山だね」
SA【石山羊の祭壇】
ストーンゴートのSAだね。ここで倒した数はあのバフォメット召喚条件には入らないみたい。これは公式が決めたルール・・・SAはイベントのトリガーにはならないに則ってるから、らしい。
思う存分倒せるなら、そこに行こう。
ーーーー☆
VRグラスを外して時計を見上げる。
午後9時30分。キリのいい時間でログアウトをした。
「ふぅ・・・」
「どうしたのよ」
「雪華・・・何でもない。ゲームの事だから、気にするだけ無駄だよ」
ベッドから降りて、雪華の頭を撫でる。
「あっそ」
「雪華は何か用なの?」
「お風呂入らないのか聞きに来たのよ。入らないならさっさと片したいからね」
あ。帰ってきてご飯食べて・・・直ぐにゲームしたんだっけ。入らなきゃね。
「あぁ、入る入る」
「なら終わったら、片付けて貰っていい?」
「はーい」
着替えを取ってから、部屋の扉に手を掛けて・・・振り向く。
「ねぇ、雪華?」
「なによ?」
「雪華が大切な人を亡くしたとして・・・」
「?」
「それが雪華の為に動いた結果だったらどうする?」
「・・・分からないわね。そもそも私には大切な人と言える人はまだいないわ。勿論ご主人様・・・アスカの事もまだ私は大切だと言える存在だとは思ってない。だけど、まぁ・・・要は私の力不足で死ぬってことだし・・・悔しいし、悲しいって思うのかも」
「・・・そっか。ごめんね、変な事聞いて」
わたしの不注意、わたしの全ての動きがあの悲劇を起こした。みんながみんな、わたしは悪くないって言う。龍樹も、桜花さんも、爺ちゃんも・・・父さんも。
だけど、そう簡単には理解できない。子供だからとかじゃなくて・・・ただ、わたしが悪いから。寧ろ罵声を浴びせてもらった方が、気が楽だった。でもみんなわたしを許してくれる。
わたしは昔から人の心が動く所が見える、というか・・・なんだろう。見透かせるって程じゃないけど、感じ取る事が出来た。目や顔の筋肉などのちょっとした動き。声の抑揚。
会ったことのあるどんな人も大体こんな事を思ってるって分かる。その中で唯一、お母さんの事は何もわからなくて、それが何でなのか、お母さんに聞いた事がある。
『ねぇ、おかあさん』
『なに?』
『おかあさん、おかあさんは・・・だれ、なの?』
我ながら変な事を言ったと思う・・・。小さい時はそんな風にしか言えなかった。
『だれ・・・。うーん、お母さんは飛鳥のお母さんで名前は朝倉小夜。年は26歳で戌年、左利きで身長は158cm、体重は46kg。スリーサイズは上から89.59.84。バストサイズはFカップで・・・』
『えと・・・おかあさんは、えぇっと・・・ふぇ・・・』
『っ!? あ、飛鳥? な、泣かないで。何か怖いこと言っちゃった・・・?』
目線を合わせて、頭を撫でる手。
それだけで溢れる涙は止まって、泣かないで偉いって褒められる。
『・・・ちがうの。おとうさんはいつもおかあさんといっしょだとニコニコしてるの。たつくんもおうかおばさんといっしょだとニコニコしてるの。だけど、おかあさんは、わからないの・・・』
『んん・・・? あ。・・・心の事かな。お母さんはね、人に分からないように隠してるんだよ』
『かくれんぼ・・・?』
『そう。かくれんぼ。上手に隠れすぎて誰にも見つけられないだけだよ。・・・恥ずかしがり屋なのもあるけど』
『はずかしいの?』
『うん。でも、お母さんはお父さんも好きで、飛鳥も好きだからね? 飛鳥はわたしの事、好き?』
『うー、すき・・・。えへへ〜・・・おかあさん、ありがとー』
『どういたしまして』
結局あの時はなんでかは分からなかったけど、好きだから、別にいいやって思ったんだよね。
結局・・・今も理由は分からない。爺ちゃんも婆ちゃんも考えてる事はわかりやすいから血筋とかではなく、お母さんだけ。・・・だけどお母さんは死んでしまった。
全部・・・全部全部。わたしの・・・。
コトン、と音が風呂場に響き渡る。・・・いつの間にかお風呂に入ってた。考え事してても、いつもこんな風にやろうとした事はやってるから慣れたもの。手元から離れたシャワーを拾って、止める。
「はぁ・・・」
ため息をついて、目の前の壁を叩く。・・・もういいんだよ。気にしないで。忘れなければいい。あんな悲しい事を目の前で起きないようにすれば。・・・それでいい。
「・・・あぁもう、やめやめ! こんな辛気臭いの今のわたしには合わないよ」
・・・そういえば、あのお姉さんは大丈夫かな。骨折までは行かないかもしれないけど、確実に何かしらの怪我は負ってると思うんだよね。ちゃんと病院行くかな?
そんな事を考えながらもお風呂全体を熱湯で軽く流して、換気扇を回す。まぁ、これくらいでいいかな。
よし、後は身体を拭いて・・・。ドライヤーで髪を乾かして〜。髪を凛から貰ったシュシュでサイドポニーにする。んー。やっぱわたしって美少女だね!
手で目元を隠して、携帯を鏡に向けてわたしを撮る。
「んぁ・・・凄い如何わしい写真になった。孝亮と凛に送ってみよ」
薫には送らない。何故かと言うと・・・あの子はちょっとそっちの気があるっぽいから、ね。
勘違いかもしれないけどね!
さーてと? ・・・そろそろログインしようかな。
今回も楽しんで読んでいただければ幸い!




