第一章 古代エジプト 【神々の集い】
金や銀が装飾されたシングルベッドにクヌムの側近と手下たちはレイスを運んだ。レイスはピクリとも動くこともなく全身の力が抜けてしまいベッドにだらんと倒れこむ。彼の姿勢を側近や手下たちがそそくさと直しクヌムとレイスが向かい合える位置に椅子を置いていると、神殿内の女や雇人がぞろぞろと集まってきた。すると、クヌムはこう言う。
『彼らをここへ呼べ...神々をここへ集結させろ!早急に!』
さすがのクヌム神も焦ったのだろう。息子が民衆の目の前で意識を失い、さらに黒魔導師に逃げられてしまうのだから。
「は、はい!!」
側近たちはそれぞれの部屋や屋外へとクヌムから貰ったであろう翼で羽ばたいていく。クヌムは頭を抱え、神らしからぬ嘆きをつぶやく。女たちはクヌムの近くに寄り添っては慰めようと肩に手を当て、同乗したような声で語り掛ける。装飾によって煌びやかな部屋は、しんみりとしていた。
一方そのころ、各地へ飛び立った手下たちは緊急の連絡として神々と対談をしていた。クヌムの側近、ラミラスは冥界神アヌビスに伝える。
「アヌビス様!緊急のご連絡があり、参りました!」
ラミラスは先程までの事、レイスの事を話した。アヌビスは少し驚いたような顔をして神座を立ち上がり、頭のない手下を呼びつけた。
『そうか、あの小僧が...デュラハン、我の杖を。』
デュラハンは闇のゲートのようなものを通り、消えたと思えば一瞬で帰ってきた。しかし、デュラハンはフラフラっとよろめきながら巨大な杖を持ってくる。それもそのはず、神々は皆身長が高い。アヌビスもその一人で巨大な杖を片手でヒョイッと持っては、ラミラスを見下ろしている。
『クヌムの手下よ、我の準備は整った。行くぞ。』
翼も何も生えていない状態で身体が宙に浮き、レイスのもとへと急いだ。天高く登っていくとほかの神々とクヌムの手下たちがクヌム神殿へ急ぐ後姿が複数確認される。クヌムは心配が募るばかりであった。
『まだ来ぬか...』
そうつぶやいた途端、レイスや女たち、雇人、クヌムの目の前に神々が集結した。
『やっとか、待っていたぞ十二神よ!皆の者下がれ。女たちよ、ラミラスらに褒美を。』
レイスとクヌム以外は部屋の外に、クヌムの褒美として酒が与えられた。
『さぁ、古き友たちよ話を聞いてくれ...』
こうして神々の会談は始まったのだ。